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2021年8月4日(水)

きょうの潮流

 前日は大雨。式は中止になると思い込み深酒をしたが、目が覚めると雲一つない青空だった―。1964年10月10日、航空自衛隊の曲技飛行チーム「ブルーインパルス」元隊員の述懐です▼国内初の五輪開会式が開かれる東京・国立競技場の上空で、5色の煙で五輪マークを描く大役を任されていましたが、本番まで一度も成功していませんでした。「イチかバチかだ」。5機の戦闘機が右旋回をすると完璧な輪が青空に。「東京五輪成功」の象徴として、人々の記憶に刻まれました▼64年大会の“成功体験”は戦後日本の「高度成長」と重ね合わされ、「古き良き記憶」として拡大再生産されます。他方、メダル至上主義が選手の心身を蝕(むしば)み、会場建設に伴う巨大開発、テレビ中継の都合で競技日程や種目を決定する商業主義の支配など、五輪の負の側面が拡大していきました▼しかし、6月の党首討論で五輪の意義を問われた菅義偉首相が、64年大会で「東洋の魔女」と呼ばれた女子バレーボール代表の活躍を延々と語る姿を見て愕然(がくぜん)としました。この色あせた“成功体験”が、新型コロナウイルスの感染爆発下で五輪を強行する動機なのか、と▼ブルーインパルスは1998年の長野五輪に続き、今回の東京五輪開会式で3回目の飛行に挑みましたが、五輪マークを描く段階で積雲が発達。風も強く、完全な円にならず、一部は雲に吸収されました▼その一部始終が、負の側面が膨らむ五輪の未来を暗示していると感じたのは筆者だけでしょうか。


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