しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2021年7月31日(土)

きょうの潮流

 いったい自分が本当に好きなものは何なのか。それをふらふらしながら探すことの楽しさ、大切さについて、一緒に考えてみよう(『「フラフラ」のすすめ』)▼ノーベル賞物理学者の益川敏英(としひで)さんが、熱中できる対象を発見するためのヒントを若い人にむけて語ったことがあります。おもしろいことにしか興味を示さなかった少年時代。中学の卒業文集のテーマは「星の進化」でした▼高校のとき、後に師となる坂田昌一(しょういち)・名古屋大教授の研究を知って物理学の世界へ。物質の元となる素粒子クォークについての理論でノーベル賞に至るまでの道のりは、知る楽しみの連続だったといいます。「学ぶということは自由を獲得していく過程である」▼人間がもとめる自由の範囲をひろげてくれる科学。それを前に進めることともう一つ、益川さんには信念がありました。5歳のとき空襲にあい、家に落ちた焼夷(しょうい)弾がたまたま不発で助かった命。その戦争体験が生き方の根底に▼「科学者である前に人間たれ」という師の教えも受け継ぎ、物理の研究と平和運動の“二足のわらじ”を履きつづけました。科学の軍事利用や改憲の動きには声高に異を唱え、戦争法強行の反対デモの際に志位さんと腕を組んで歩いたことも▼若い科学者には、こもらず外に出て社会や市民とふれあう大切さを呼びかけました。それが研究にも生きてくると。探究とともに、つねに心にとめてきた生活者としての視点。ふらふらの先にあったのは芯の通ったぶれない人生でした。


pageup