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2021年6月17日(木)

きょうの潮流

 神話から平安・鎌倉時代の寺や神社、戦国の古戦場、近代や現代まで…。沿線には先人たちの遺産が点在し、過去に舞い戻ったような世界がひろがります▼信州上田の塩田平を走る上田電鉄・別所線は、きょう開業100年をむかえます。2年前の台風で千曲川にかかる赤い鉄橋が崩落。住民や大学生、そして、全国からの支援によって今年3月に復旧を果たし、節目の祝いとなりました▼上田駅と別所温泉駅をむすぶ全長11・6キロのローカル線。信州の鎌倉と呼ばれるほど多くの文化財とともに、農民運動や山本宣治の碑をはじめ民衆のたたかいの足跡も。足をのばせば戦没画学生の作品を展示する無言館もあります▼この地域にはかつて五つの路線が張り巡らされていましたが、いまは別所線のみ。1世紀におよぶ運行のなかで廃線の危機はいくどもあり、それはこれからも。地域に密着し、生活の足となりながら切り捨てられてきた各地方の線路と同様の危惧は続きます▼「若者をはじめ、たくさんの人が存続のために立ち上がった」。自身も沿線に住む上田市議の渡辺正博さんは鉄道の価値と維持を訴えます。「路線バスも苦境にあえぎ、過疎化はすすむ一方。リニアなど不要不急の開発に明け暮れていないで、政府は公共の交通手段を守らなければ」▼駅をつなぎ、地域をつなぎ、人をつないできた鉄路。時代と社会の姿を映し出してきた車窓にはこの先どんな風景がひろがるのか。それを決めるのは、国ではなくそこに暮らす人びとです。


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