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2021年3月8日(月)

どうみるデジタル法案

元行政機関等個人情報保護法制研究会の委員 三宅弘弁護士に聞く(上)

監視社会を加速させる

 「官民のデジタル化をダイナミックに進めます」と菅義偉政権が鳴り物入りで2月9日に閣議決定したデジタル関連法案。利便性を宣伝して個人データの利活用を推進する法案ですが、監視社会を加速させる危険はないのか。法制定の際に総務省の行政機関等個人情報保護法制研究会の委員だった三宅弘弁護士に聞きました。(伊藤紀夫)


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 「改革の象徴」と位置付けるデジタル庁設置法案は、国の情報システム、地方共通のデジタル基盤、マイナンバー、個人データの利活用を強力に推進するとし、その長である首相が政府のみならず地方公共団体、民間部門を含めて情報統制を図るものとなっています。

本人に同意なし

 今回の関連法案で特に重要なのは、個人情報保護法の改定です。個人情報保護法の体系は、基本理念と民間部門を規定する個人情報保護法、行政機関、独立行政法人等の個人情報保護法の3法と地方自治体の条例から成り立っています。こうした分散管理は、それぞれの部門が持っているデータを勝手にやりとりできないようにして個人情報を保護するための仕組みです。

 今回の法案では、行政機関と独立行政法人の個人情報保護法は廃止し、個人情報保護法に一本化します。分散管理を集中管理に変え、本人の同意なしに個人データを利活用しやすくしようとするものです。

 昨年成立したスーパーシティー法(改定国家戦略特区法)は、企業、自治体、政府から大量の個人情報を「データ連携基盤整備事業」に集めて民間企業にゆだね、自動運転など生活全般にわたる各種サービスを提供する「未来都市」づくりを推進するものですが、今回の法案はその全国版ともいえます。政府や自治体、民間企業が多分野の個人情報をひも付けして利用できるようになれば、個人情報の侵害・漏えいが深刻化するでしょう。

警察が無制限に

 個人情報保護法23条は「第三者提供の制限」を規定していますが、その例外として「法令に基づく場合」があり、警察は刑事訴訟法197条の捜査照会で個人データを入手できます。犯罪捜査でコンビニの監視カメラのデータが入手できるのも、この規定が根拠となっています。

 行政機関個人情報保護法は行政機関が保有する個人データの「利用及び提供の制限」を定めていますが、「相当な理由」や「特別な理由」があるものは他の行政機関に個人情報を提供できることになっています。

 この規定は今回の法案にそのまま残っており、本人の同意なしに捜査を理由に個人データが警察に無制限に流れる危険があります。

 コロナ禍で10万円一律給付が迅速に進まなかったことをデジタル化の遅れのせいにするなど、電子政府化に対する以前からの怠りを隠して、便利さを強調して一気呵成(かせい)にデジタル化による個人情報の利活用を進めようというのが、大きな問題です。

 (つづく)


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