しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2020年10月29日(木)

きょうの潮流

 戦時中を覆った軍歌から、平和を掲げる戦後のヒット曲へ。NHKのテレビ小説「エール」が時代と音楽の転換を描きだしています▼主人公の古山裕一は、作曲家・古関裕而(ゆうじ)がモデル。時代の流れに呼応するかのように、「戦地に行く人々を励ます」といって求められるがまま、次々に軍歌を作っていきます。しかし、戦場で兵士が無残な死を遂げるのを目の当たりにして、自分を責めることに…▼戦後、実際の古関が反省したかどうかは定かではありません。むしろ、自作の軍歌を「快心の作」と愛着を持って回想しています。自衛隊歌にも取りかかりました▼ドラマはフィクションですから、人物像をそのままなぞる必要はないでしょう。しかし、軍歌には消してはならない重要な意味が含まれています。「エール」にも描かれた「人々を戦争に駆り立てた」という事実です▼美空ひばりのヒット曲などを手がけた作詞家の故石本美由起が語っていました。「軍歌には依頼した側の意思が全面的に込められている」と。NHKも古関にニュース歌謡、国民歌謡の名で作曲を依頼して戦意をあおりました。「音楽は軍需品」とされた時代。放送も軍国主義の宣伝機関だったのです▼朝ドラの戦後編ではテレビから明るい歌声が流れます。戦災孤児を見つめたラジオドラマ「鐘の鳴る丘」の主題歌や、戦災受難者の再起を願う「長崎の鐘」。これらの歌に耳を傾けると、軍歌が闊歩(かっぽ)する時代が再び訪れることがないようにと、そんな思いがいっそう強くなります。


pageup