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2020年8月11日(火)

きょうの潮流

 ほんらいであれば、悲喜こもごもの余韻に浸っていた頃か。9日に閉幕するはずだった東京五輪。コロナ禍で来年に延期されたこの夏を、選手たちはどんな思いで過ごしているのだろうか▼「成長できる1年をもらった」とは卓球女子の伊藤美誠(みま)さん。19歳のエースのように伸び盛りの若手は前向きにうけとめる選手が多い。一方で、今年にかけてきたベテランには延期はつらく、引退する選手も。あと1年か、もう1年か。心中は複雑でしょう▼最高の晴れ舞台で世界のライバルと力と技を競い合う。その夢が遠のき、ついえたときの絶望は過去にもありました。日本が戦争に突き進み中止となった1940年の東京五輪。旧ソ連のアフガン侵攻によって西側諸国がボイコットした80年のモスクワ五輪です▼とくにあの戦争の時代、選手たちは五輪やスポーツを奪われただけでなく、燃やした若い命を戦場で落としました。NHKが番組や本にした『幻のオリンピック』では、わかっただけでも日本の戦没オリンピアンは37人に▼競泳の選手だった児島泰彦さんもその1人。最年少の17歳で出場した36年ベルリン五輪の100メートル背泳ぎで6位入賞。東京でも活躍が期待されていました。しかし沖縄戦で死亡、遺品の写真には自身の水泳姿が。どんなに生きて帰って、また泳ぎたかったか▼戦争や政治、そしてウイルス。さまざまな試練に直面し、ほんろうされてきた選手たちの自問は私たちにも問いかけます。スポーツの意義とは、平和の尊さとは。


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