2004年1月11日(日)「しんぶん赤旗」
韓国のソウル地方裁判所は九日、米軍基地内の施設からソウル市内の川に劇薬液を垂れ流していた米軍の担当責任者に懲役六月の実刑判決を言い渡しました。在韓米軍は同日、米軍地位協定を盾に「公務中の米兵が起こした事件の裁判権は米軍にある」との文書を報道機関に配布。判決を無視し、米兵の身柄引き渡しを拒否する姿勢を公然と表明しました。(面川誠記者)
ソウルからの報道によると、判決をうけたのはソウル市内の龍山米軍基地に司令部を置く米第八軍に所属するアルバート・マクファーレン被告。二〇〇〇年二月に、霊安室で使う劇薬ホルムアルデヒドを排水溝を通してソウル市内を流れる大河・漢江に垂れ流した容疑で起訴されていました。ホルムアルデヒドはシックハウス症候群の原因となる物質の一つで、人体への悪影響があります。同年七月に環境団体の緑色連合が、米軍関係者の内部告発文書と現場写真を入手し、ソウル地検に告発しました。
米軍は「ホルムアルデヒドの放出は適切な手続きに従った」「人体への影響はない」と主張し、検察の捜査にいっさい協力せず、被告も出頭させませんでした。検察は〇一年三月に罰金五百万ウォンの略式起訴をしましたが、判決は求刑よりはるかに重い懲役六月の実刑。
判決文は、「事件が公務中に起きたとみなすことはできない」として、米軍の主張を否定。「米当局は裁判権が米国側にあると主張しながら、いまだに被告人に対する刑事訴追権を行使しておらず、事実上韓国側の裁判権を認定したものと判断される」と主張しました。さらに、被告は「裁判が進行していることを知りながら出廷に応じないだけでなく、犯行に対する反省の兆候が見られず、実刑宣告をせざるを得ない」と断じました。
米国が身柄引き渡しに応じる可能性はなく、マクファーレン被告が収監される見通しはありません。しかし、判決は、韓国側が在韓米軍犯罪に対する司法権行使の意思を鮮明にしたものです。
緑色連合は他の市民団体とともに共同声明を発表、「判決は韓国の司法主権と韓国民の自尊心をよみがえらせた」と評価。「在韓米軍地位協定を積極的に解釈、適用する前例を残した」と、高く評価しています。