日本共産党

2004年1月11日(日)「しんぶん赤旗」

イラク派兵

改憲策動と一体

米「有志連合」の一員として

海外派兵自由化ねらう


 石破茂防衛庁長官が陸上自衛隊先遣隊にイラク派兵命令を下したことで、戦後はじめて、いまだ戦闘が続く地域に重武装の自衛隊が送りこまれようとしています。

 政府は、軍事占領行為は違憲とする従来見解をすりぬけ、「非戦闘地域」に限るとしたみずからの憲法上の制約も、「治安は安定」などとする調査報告なるものでいとも簡単に投げ捨てました。「人道復興支援」を言いたてることで、不法な米英占領軍への加担という任務を隠し、本質をごまかそうとしました。

 PKO(国連平和維持活動)などの際に、憲法違反にならない“歯止め”とされた当事国の受け入れ同意も停戦合意もないなかでの派兵です。

 小泉内閣は、戦地への自衛隊派兵という戦後政治の大きな転換を、幾重にも憲法をじゅうりんしたうえで強行しようとしているのです。

 イラク派兵の意味はそれだけにとどまりません。米国は、国連による平和秩序を無視して、米国に付き従う「有志連合」のみで先制攻撃戦略を展開しようとしています。イラク派兵は、この「有志連合」への仲間入りを軍事的にも果たす出来事でもあります。

 防衛庁防衛研究所を事務局とする「防衛戦略研究会議」が昨年九月に発表した報告書はつぎのように明記しています。

 「そもそもイラク戦争が安保理としての意思がまとまらないなかで遂行されたことからすると、(自衛隊の)イラク派遣は有志連合としての活動であると言っても過言ではない」

 石破防衛庁長官は、年頭の辞で「(米国が)苦しいとき、つらいときに、ともに目的を同じくし、活動する。それが、わが国の平和と独立に資するものである」と語りました。無法な戦争・占領を続ける米国と「目的を同じくし、活動する」のがイラク派兵の意義だというのです。

 こうした文脈でみると、小泉首相がイラク派兵の基本計画を閣議決定した際、「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」という憲法前文を読み上げたことが、いかに憲法を愚ろうするものかが浮き彫りになります。

 「自国のことのみに専念し他国を無視してきた」のは、先制攻撃に踏み切った米国です。その米国に付き従って国連無視の「有志連合」に参加しようとする行いを、武力によらない平和秩序を求める憲法前文で説明しようとするのですから。

 小泉首相が自民党に指示した二〇〇五年までの改憲草案づくりも、こうしたイラク派兵の意味合いと密接に関係しています。それは、米国の先制攻撃戦略にそって、「有志連合」の一員として海外で公然と武力行使を行えるように九条を改悪することに、なによりの狙いがあるからです。

 昨年十一月に、日米の軍需産業や国防族議員が集まった「日米安保戦略会議」で、自民党の額賀福志郎政調会長は「国際関係は、ある意味では米国を中心として新たな秩序が形成されつつある」と指摘。「専守防衛も当然にして、相対的なものにならなければならない」とのべました。民主党の前原誠司衆院議員(「次の内閣」外務担当)は「憲法を改正して九条に自衛権を明記して…集団的自衛権の問題もブレークスルー(突破)しなければならない」と主張。「アメリカの先制攻撃の議論をしっかりとそしゃくして(国際社会の)共通認識にまで高めておく必要がある」と、先制攻撃戦略の「国際的認知」を力説しました。

 自民党が「日本の国是」としてきた「専守防衛」さえ変更し、先制攻撃への参加も可能にしたいとの思惑がにじみ出ています。

 イラク派兵へのハードルを突破しようとしている今年、年初からA級戦犯を合祀(ごうし)した靖国神社への首相参拝が強行されました。自民党による改憲草案の要綱づくり、「憲法改正」国民投票法案の通常国会提出などが相次いでたくらまれています。こうしたことと、「有志連合」への参加となるイラク派兵は、無関係なことがらではありません。

 いま、イラク派兵に反対する国民多数の声を結集することは、そうした無法な派兵自由化が改憲の狙いであるだけに、憲法改悪の企てに立ちふさがる大きな力となることでしょう。

 (藤田健記者)


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