日本共産党

2004年1月10日(土)「しんぶん赤旗」

戦後初、泥沼の戦場へ

陸自先遣隊 派兵命令

イラクに新たな火種持込む


 石破茂防衛庁長官が九日、陸上自衛隊にイラクへの先遣隊派兵を命令したことは、戦後初めて日本の地上軍を“戦地”に派兵するという憲法じゅうりんの道に踏み出す暴挙です。

公明の欺まん

 陸自先遣隊について政府・与党、とりわけ公明党は「陸上自衛隊本隊の派遣時期に関しては、先遣隊の調査報告を受けた後、…態度を決定する」(「公明新聞」九日付)とし、あたかも“調査団”であるかのように描いています。

 しかし、先遣隊は、攻撃を受ける危険に備え、機関銃や軽装甲機動車で武装し、まさに“戦地”派兵の先陣を切るものです。

 先遣隊の派兵目的は「最新の治安状況に関する情報収集」とともに「(陸自本隊の)宿営地設置のための事前調整」です(同)。陸自本隊の派兵に向けた準備が大きな目的の一つなのです。陸自本隊の派兵は既定の事実であり、先遣隊の調査結果で左右されるのは派兵の時期にすぎません。

攻撃の対象に

 政府は、先遣隊を派兵するイラク南部サマワの治安状況について「比較的安定している」と説明しています。しかし、「イラク全土が戦闘地域」であることは、米占領軍当局も公に認めています。

 これまで治安状況は比較的平穏とされてきた同国中部のカルバラでも昨年十二月二十七日、駐留外国軍の駐屯地などを狙った同時多発攻撃があり、ブルガリア兵五人、タイ兵二人が死亡。サマワ南東にあるナシリアでも昨年十一月に、イタリア軍警察を狙った爆破事件で、同軍兵士ら十九人が死亡しています。

 オランダのカンプ国防相は昨年十二月、同軍が展開しているサマワを含むムサンナ州について「イラクでは最も安全」とする一方、旧フセイン政権時代の共和国防衛隊員とその同調者などが最大一万人規模で潜んでいる可能性があると議会に報告しています。(「毎日」昨年十二月十二日付夕刊)

 サマワについても今月三日に、職を求める約二千人のデモ隊とイラク警察の間で銃撃事件が起きるなど、治安の悪化が指摘されています。

 治安が「比較的安定」しているといわれる地域でも、米英軍の不法な占領支配に協力・加担する自衛隊が派兵されれば、攻撃対象になることは避けられません。それは、イラクに新たな火種を持ち込み、事態の泥沼化をいっそう深刻にすることになります。

雇用機会奪う

 政府・与党は、サマワでの職を求めるデモの発生などを踏まえ、失業率60%といわれる雇用問題への支援をにわかに強調し始めています。しかし、検討されているのはODA(政府開発援助)の活用などであって、自衛隊が雇用創出を任務にするわけではありません。

 それどころか、自衛隊が行う「人道復興支援活動」は結果としてイラク人の雇用機会を奪う恐れがあります。「復興事業は職のないイラク人に優先的に与えられるべきだ」(イラク統治評議会のダーラ・ヌーレッディーン評議員=本紙昨年十二月三十日付)という指摘がすでにあがっています。

 道理のない自衛隊派兵を無理を重ねて強行すれば、イラク国民との矛盾もいっそう広がることになります。


昨年末から今年にかけてサマワで起こった主な事件

 ●昨年12月9日 職を求める約1000人の市民のデモ隊に、治安維持を担当するオランダ軍が威嚇射撃し、市民が負傷

 ●同21日 サマワ近郊にあるイラク共産党の事務所に3個の手製爆弾が仕掛けられているのをオランダ軍が処理

 ●同27日 市内ムサンナ州庁舎前に集まったデモ隊がオランダ軍に向け発砲

 ●同31日 「共和国病院」に8人の男が侵入し、警官らに発砲

 ●今年1月3日 失業者ら2000人規模のデモにイラク警察が発砲し、銃撃戦に発展、1人が死亡し、約15人が重軽傷


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