日本共産党

2004年1月5日(月)「しんぶん赤旗」

ブッシュ米政権 小型核の研究禁止解除

「使いやすい核兵器」へ本腰


 ブッシュ米政権は「小型核兵器」の研究禁止を解除し新たな核兵器開発に本腰を入れ始めました。「使える核兵器」を推進する米政権の動きをみます。(ワシントン=浜谷浩司)

「技術を自由に探求」

 「この好機を逃してはならない」−「小型核兵器」の研究禁止解除を受け、核兵器開発を担当するエネルギー省核安全保障局のブルックス局長が、こんな通達を出しました。昨年十二月五日付で、ロスアラモス、ローレンス・リバモア、サンディアの各国立核兵器研究所にあてたものです。

 米議会は、ブッシュ政権の要求にそって、爆発力五キロトン以下の核兵器の研究を十年間にわたって禁止してきた条項を撤廃しました。この通達は、今回の禁止解除が大きな意味をもつことを示唆しています。通達はこう指摘します。

 核兵器に関するアイデアをめぐらせる際、これまでは禁止条項を「うっかり犯す懸念」があった。その懸念が取り払われたことで、技術的な選択肢を「今や自由に探求することができるようになった」。その選択肢は「新たな、あるいは出現しつつある脅威に対応する能力」を強めるものだといいます。兵器や用途を特定していません。

 同時に、「小型核」開発禁止や核爆発を伴う核実験の一時停止などによる核兵器産業の「停滞」を払しょくしようとしています。

 想定される新型核兵器について通達は、「各研究所の設計チームは、国防総省と全面的に協力して先進的構想の検討にあたってもらいたい」と述べています。

新たな予算の実現

 ブッシュ政権は、二〇〇四年度の核兵器関連予算で、新たな特徴をもった要求をし、実現させています。

 (1)既存核兵器を改良した強化核地中貫通弾(RNEP)の開発(2)先進的核兵器構想イニシアチブ(ACI)の推進(3)核実験再開準備期間の短縮(4)熱核爆弾(水爆)の起爆装置であるピット生産−がそれです。

 予算額からみると、RNEPは七百五十万ドル、ACIは六百万ドルと、比較的少額にとどまっています。研究が軌道に乗るにつれ、これらの金額は年々伸び、議会でも議論になるとみられます。

 「先進的核兵器構想」には、既存の核兵器の改良から新型核兵器の開発に至る、さまざまな選択肢が含まれます。そこには、地中施設の破壊を目的にしたもの、生物・化学兵器を破壊するため熱や放射線の効果を強めたもの、などがあるとみられます。これら新型核兵器は、実戦に適した「使いやすい」ものとなります。これら新型核兵器は、研究開始から開発、生産をへて配備まで、一定の期間を要します。

 しかし、核兵器の使用に向けたブッシュ政権の政策は、兵器のハード面だけにとどまりません。

通常兵器との一体化

 ソ連崩壊後、米国が想定する敵は大きく変わりました。「ならず者国家」などに対する先制攻撃という同政権の戦略はイラク戦争で実行に移されました。

 同時に進められている米軍改革でも、核兵器と通常兵器とを継ぎ目なく一体化し、「必要」に応じて選択できるようにするとの考えが強調されています。新型核兵器が実戦配備される前にも、核兵器が使用される危険があります。

 ブッシュ政権は、二〇〇一年末に議会に提出した「核態勢見直し」報告で、新型核兵器で一般市民への被害を「限定する」と主張しました。エネルギー省の先の通達も、一般市民への「付随的被害」を「減らす」ことが「潜在的に重要な課題」だと提起しています。核兵器使用の敷居を下げ、通常兵器と同様、実戦で「使える」ようにするのが狙いです。

 核兵器使用の危険の強まりに懸念が高まっています。国連総会は昨年十二月、ブラジルなど「新アジェンダ連合」諸国の提案で、核兵器廃絶の決議とともに「非戦略核兵器」の削減・全廃を強く求めた決議も採択しました。

 特に米国の動きを念頭に、こうした兵器を持つ国に対し、「配備する兵器の数や種類を増やしたり、新型兵器を開発したり、その使用を正当化したりしない」よう求めています。


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