日本共産党

2003年12月21日(日)「しんぶん赤旗」

列島だより

コイ大量死産地はいま

例年なら正月に向け活気が…

日本共産党 原因究明、救済に全力


 コイヘルペスウイルス病(KHV)によるコイの大量死は、養殖業者をはじめ関連の業界を苦境にたたせています。大量死の発生から約二カ月。被害も各地に広がりをみせています。一大産地の茨城県、新潟県の場合をみてみました。



“3年間、出荷できない”

茨城・霞ケ浦

 「生殺しはいいかげんにしてくれ」。コイヘルペスウイルス病のまん延防止による出荷禁止で営業の見通しがたたないことに、全国のコイ養殖生産の五割を占める茨城県霞ケ浦のコイ養殖業者は、いらだちをつのらせています。

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コイの出荷停止で、ナマズの販売でほそぼそと営業する養殖業者=茨城県玉造町

養殖コイの8割

 例年なら、正月向けの出荷で活気あふれる漁港に人影はありません。

 十月半ばから養殖いけすに浮かんだコイの大量死。十一月二日にKHVによる感染が確定、養殖コイの約八割、千百二十五トンが死に、被害推定額は二億五千万円にのぼりました。

 農林水産省と茨城県はまん延防止として死んだコイの処分と生き残ったコイの移動禁止(十一月三十日まで)、出荷自粛(同)を発令。その後、天然コイへの感染を確認、移動禁止を十二月二十日まで延長した上、十二月一日付で出荷禁止の処置をとりました。

 さらに十九日には生き残ったコイの全量処分命令と、一キロ当たり約二百二十七円で買い上げることを決めました。出荷禁止は当面の措置ですが、県農林水産部では天然コイへの感染という事態から「解除はかなり難しい」とみています。

 養殖業者(60)が声をあらげました。「生き残ったコイを国などが買い上げても、八割近い死んだコイの収入はゼロ。何百万、何千万円とかかったエサ代はどうなる。この先も出荷禁止が続けばもう継続は難しい。一年前に一千万円以上かけて買った大型トラックのローンだってあるんだ」

 養殖コイは、稚魚から出荷できる成魚に成長するまでに三年間かかります。その稚魚も処分の対象となり、霞ケ浦では今後三年間は出荷できなくなります。

 寒風のなか、養殖いけすの様子を見にきた業者はいいます。三十代の息子がやっと後継者になり、できれば嫁をもらい家も新築したい、と考えていた矢先のコイ大量死。「息子は途方にくれている。おれも十六歳から漁師になり、コイ養殖でがんばってきた。必死で働いてきた。国はなんでウイルスの流入を水際で防げなかったのか」

 霞ケ浦漁協連合会の羽生誠副組合長(玉造漁協組合長)は、「生き残ったコイの買い上げを国も認めたが、死んだ養殖コイの補償はない。休業補償や、廃業を迫られる業者への補償、養殖施設の撤去費用の補償がなければ霞ケ浦は荒れ果てるなど、コイ養殖と漁協の存亡がかかっている」と危機感をつのらせます。

現地で、議会で

 日本共産党の大内久美子県議は二日、県議会総務委員会でコイ大量死問題を取り上げ、養殖業者への救済策の早期実施を求め、県側は「実施の方向で国と協議している」と答えました。党茨城県委員会はこれに先立ち十一月十三日には現地調査し羽生副組合長らと懇談。十一月二十七日には、大門みきし参院議員、塩川鉄也衆院議員、大内県議、山中たい子県議らが農林水産省などにKHVの侵入経路の解明などの原因究明と「実情にあった養殖被害の十分な救済などの助成」を要望するなど原因究明と救済に全力をあげています。

 (北関東総局・山本眞直記者)



疑い晴れたが、風評被害

新潟・中越

 新潟県では、十一月に中越地区の生産業者のニシキゴイ二千匹が大量死し、コイヘルペスウイルス病の感染が疑われる問題が起きました。県内水面水産試験場の検査で陽性となりましたが、国の水産総合研究センター養殖研究所(三重県)の検査で陰性と出て感染の疑いはなくなり、業者は一安心しました。しかし、感染の疑いの報道がされて以降、深刻な影響が出ており、今後の課題も多く残されています。

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業者から実情を聞く、くわはら候補(右から2人目)、佐藤市議(右端)ら=新潟県山古志村

 「報道以降、出荷がゼロに等しく、報道前に契約したところから風評でキャンセルも続出している。毎月経費が二百万円近くかかるうえ、越冬用のコイを隔離するために他の市町村に水槽を設けなければならず、余計経費がかかる。発病しやすい気温が上がる春になって、もしどこかで感染のコイが出たら大変なことになる」。こうのべるのはニシキゴイの産地・山古志村のある生産業者です。

地域経済は深刻

 新潟県は、小千谷市や山古志村を中心に、ニシキゴイの生産業者数が全国の半分を占め、生産額も数十億円で全国一の産地となっています。山古志村では最大の産業になっており、ニシキゴイ産業の趨勢(すうせい)は地域経済にも大きな影響を与えます。報道後、倒産寸前になった業者も出ています。

 日本共産党は、この問題が起きてから、五十嵐完二県議が小千谷市の生産業者や、県錦鯉協議会などの団体と小千谷市、山古志村が立ち上げたKHV対策室を訪問して実情を調査。くわはら加代子参院選挙区候補も、山古志村の業者や県内水面水産試験場を訪ねて調査しました。

 調査を通じて、防疫検査体制の確立や、今のところ治療方法がないことから予防薬・治療薬の早急な開発、KHV病検査経費や低利融資の支援の必要性が判明。特に優良な稚魚を生産するために、その親ゴイの保護、感染防止が不可欠で、その隔離施設の整備費への補助の緊急性が明らかになりました。

 県は、県錦鯉協議会とKHV対策室の要望をうけて、県内水面水産試験場での検査費用の免除、低利融資などを実施。県議会での五十嵐県議の質問にたいし平山征夫知事は、親ゴイの隔離施設整備費の補助では県単の制度適用(事業費の半額補助、一千万円上限、市町村助成も可能)で支援すると表明。また、国にKHV情報の早期収集と公開を要望し、県内水面水産試験場に高精度のDNA検査機器を増設し、検査担当職員の研修を実施して迅速・的確な検査が行える体制を整備したと答えました。

 小千谷市でも佐藤勝太郎市議が、情報収集と検査体制の迅速化、融資支援を議会質問。関広一市長は、県融資制度への利子補給の検討を表明しました。

研究怠った国

 くわはら候補は「以前から外国でKHVが発生していることを知っていながら、防疫検査体制の確立、予防薬・治療薬の研究を怠ってきた国の責任が問われる。適用が不十分な親ゴイの隔離施設整備費補助などの改善のために尽力したい」と語っています。

 (新潟県・村上雲雄記者)


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