日本共産党

2003年12月19日(金)「しんぶん赤旗」

イラク失業急増

米英への怒り強まる


 米英軍が不法な占領を続けるイラクでは、国連・世界銀行の報告で失業率が約50%にも達していることが明らかになるなど生活の困窮が進んでいます。フセイン元大統領の拘束後もやまない米軍などに対する攻撃の背景には、軍事作戦での住民抑圧だけでなく、生活困窮を招いた占領へのイラク国民の怒りといら立ちがあるとみられます。(島田峰隆記者)

大量解雇が原因

 国連と世界銀行が十月に発表したイラク国民の雇用などについて調査した報告書「合同イラク調査─生活、雇用、再統合」によると、イラクの失業率は現在、約50%。三月二十日の米英両国によるイラク侵略前と比べて、20ポイントも増加しました。

 報告書は、失業増の原因が、米英占領当局の暫定行政当局(CPA)が、フセイン元大統領を支えたバース党の影響を除くという口実で、公務員や軍人を大量解雇したことにあると指摘しています。

 失業増には、戦争の混乱で政府機関が略奪されたまま放置され、いまだに十分に機能しないこと、治安悪化で外国企業や援助機関も退去を余儀なくされていることも影響しています。

 ロイター電は、学位や高度な語学力があってもイラクではまず就職できないとし、「普通のイラク市民をなによりも悩ませているのは就職口を見付けることだ」と伝えました。

 市民は怒りを募らせ、雇用対策を求める示威運動も頻発しています。九日には自衛隊の派兵予定地である南部サマワで、約千人の市民がCPA事務所付近でデモ行進し、オランダ軍と衝突する事件も発生しました。

武装勢力が採用

 こうしたなか、武装勢力が失業者を「採用」し、占領軍への襲撃部隊として組織しているとされます。米紙クリスチャン・サイエンス・モニター十一月二十七日付(電子版)はその実態を紹介しています。

 同紙のインタビューに答えた上級イラク人警察官は、旧フセイン政権の幹部が市民に報酬を与えて占領軍に危害を加えるよう呼び掛けていると証言。解雇されて収入もない人たちが「怒る理由があるし、米国人とたたかうために進んで資金を受けようとする」と語っています。

 北部モスルに住む衣服店の店主も「経済状況が上向かなければどうにもならない」「仕事がないから反対勢力が市民を雇っている。貧しい人は家族を食わせるためなら何でもするんだ」と述べました。

 前線の米兵も失業が襲撃を呼ぶ最大要因であることを認めます。バグダッドに展開するブレナン大佐は、「イラク人を就職させることは軍事作戦より重要だ」「目的意識と仕事を持つ人々は武器を取りはしない」と語りました。(九日発ロイター電)

安定に雇用必要

 国連と世銀の報告書は、新規の雇用創出が「イラクの復興過程で最も決定的に重要な要素の一つであることは疑いない」と指摘。雇用創出こそが大部分のイラク国民の深刻な貧困を軽減し、同国の「正常化」と「平和で安定した環境の維持」にとっても不可欠だと強調しています。


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