日本共産党

2003年12月19日(金)「しんぶん赤旗」

戦場で占領軍支援

イラク派兵実施要項決定


 石破茂防衛庁長官が十八日に決定したイラクへの自衛隊派兵に関する「実施要項」の「概要」は、憲法のみならず、政府みずからがつくったイラク特措法にも反する“戦場”での占領軍支援そのものであることを浮き彫りにしています。

■「非戦闘地域」と強弁

 「概要」は、陸上自衛隊部隊が「サマワを中心として活動」し、情報収集や連絡調整のために自衛隊員を「バグダッドの連合軍司令部施設」に派遣すると明記。航空自衛隊の派兵先としては「バグダッド飛行場」などを挙げました。

 「概要」では、自衛隊の派兵先は「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域(非戦闘地域)とされています。

 しかし、「概要」が挙げたバグダッドやサマワでは、米英占領軍などへの攻撃・襲撃が相次いでいるのが実態です。

 空自のC130輸送機が活動することになるバグダッド国際空港では、米軍のC130輸送機やC17輸送機などがミサイル攻撃を相次いで受けています。連合軍司令部の敷地内にも、ロケット弾が撃ち込まれています。

 サマワでも、市庁舎を標的にしたテロ計画二件が発覚し、首謀者が逮捕されています。今月六日には、ハンガリー部隊の車列に対する銃撃事件も発生。同地で治安維持活動を行っているオランダ軍は今月から、「テロの標的になる可能性は排除できない」として、警戒レベルを引き上げています。

■支離滅裂な政府説明

 政府は、自衛隊の活動を「非戦闘地域」に限ることについて、憲法で禁じられている海外での武力行使にあたらないための「制度的担保」で、「憲法上、当然の要請」と説明してきました。

 しかし、実際に派兵先が「非戦闘地域」かどうかについて、政府は、十五、十六両日に行われた国会審議で、支離滅裂、矛盾した答弁を繰り返しました。

 石破防衛庁長官は、フセイン政権残党勢力がイラクの主権政府を新たに樹立しようとしていない限り、襲撃があっても「戦闘地域」にあたらないという考えを表明。しかも、今起きているイラクでの襲撃は「そう(いうもの)ではない」とし、イラク全土が「非戦闘地域」であるかのような説明までしました。ところが、小泉純一郎首相は「(イラクには)戦闘地域はある」と言明しました。(十五日、衆院イラク特別委員会)

 サマワについては石破防衛庁長官は「非戦闘地域」と断言する一方、首相は「どこが戦闘地域か限定は難しい」と答弁(同)。攻撃が相次ぐバグダッドについては「戦闘地域かといわれて、そうではないとも、そうですとも、答えることは適当ではない」(同、石破防衛庁長官)としていましたが、「概要」にはバグダッドが明記されました。ところが、その説明はいっさいありません。

 重大なのは、国民向けに公表されたものは「概要」にすぎず、全文は非公表とされていることです。そのため、自衛隊の活動区域について、すべて「など」と記載され、実際にはどこまで自衛隊の活動区域が広がるのか分かりません。

 国会でいいかげんな説明を繰り返した上、実態まで隠して派兵を強行しようとしているのです。

■抵抗運動 鎮圧も支援

 「概要」は、イラクに派兵される自衛隊が「安全確保支援活動」を行うことを盛り込み、不法なイラク占領を続ける米英占領軍などへの軍事支援を改めて明確にしました。

 首相は十五日の衆院イラク特別委員会で、「安全確保支援活動」の説明を求められ、「(自衛隊が)人道復興支援活動をする地域においては、安全確保をしなきゃいけない」「安全確保しなきゃ隊員のみなさんも安心して活動できない」と答弁。あたかも自衛隊員の安全を確保するための活動であるかのように説明し、その無理解ぶりに委員会室から失笑が漏れました。

 「概要」に明記された「安全確保支援活動」とは、「治安維持」と称して戦闘行動を展開している占領軍に、医療、輸送、保管、通信、建設、修理・整備、補給、消毒などの支援を行う活動です。

 福田康夫官房長官に耳打ちされた首相はその後、説明を訂正。十六日の参院外交防衛委員会では、(1)武装兵士の輸送(2)イラク人による占領軍への抗議・抵抗運動の鎮圧への支援(3)占領軍によるフセイン残党掃討作戦への支援─などについて「そういう活動ができることになっている」と明言しています。文字通り、自衛隊は占領軍の一部になり、不法な占領支配に加担することになるのです。

■武器の輸送へ抜け道

 「概要」は「物品の輸送に際しては、武器(弾薬を含む)の輸送を行わない」としています。首相が「基本計画」の閣議決定を受けての記者会見(九日)で「武器・弾薬の輸送は行わない」と表明したことを受けたものです。

 しかし、首相の表明直後に、福田官房長官は記者会見(十日)で、武装した兵士の輸送は可能だとし、早速、抜け道をつくりました。石破防衛庁長官は、小銃やライフルだけでなく、迫撃砲や対戦車弾を携行した兵員の輸送まで可能との考えを示しています(十六日、参院外交防衛委員会)。

 しかも、石破長官は、武器・弾薬を輸送しない担保として輸送物資の中身をチェックすることも「一つひとつ開けてみて調べろと言っていたら、コアリション(連合軍)は成り立たない」(十五日、衆院イラク特別委員会)として否定しています。結局、「お互いの信頼関係」(首相、十六日、参院外交防衛委員会)だというだけです。

 「武器・弾薬の輸送を行わない」というのはごまかしにすぎません。


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