日本共産党

2003年12月19日(金)「しんぶん赤旗」

きょう空自派遣命令

イラク実施要項決定 戦後初、戦場へ

サマワ、バスラ、バグダッドなど

陸、海には準備命令


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 小泉純一郎首相は十八日、首相官邸で石破茂防衛庁長官と会い、イラクへの自衛隊派兵に関する「基本計画」(九日閣議決定)に基づき、自衛隊の詳しい活動内容を定めた「実施要項」を承認しました。「実施要項」の全文は非公表とされ、「概要」だけが明らかにされました。

 石破防衛庁長官は同日の記者会見で、十九日に、年内に派兵する空自の先遣隊に派遣命令を、陸自と海自には派遣準備命令を出すことを明らかにしました。空自には、部隊編成命令も出します。

 派兵が強行されれば、戦後初の“戦場”派兵となります。

 「概要」には、陸上自衛隊の派兵先として、イラク南東部ムサンナ州と、同州にあるサマワを明記。情報収集や連絡調整のため自衛隊員を駐在させるとして、バグダッドの連合軍司令部施設も明示しています。

 航空自衛隊の派兵先としては、米軍輸送機や民間機へのミサイル攻撃が相次ぐバグダッド空港をはじめ、バスラ、バラド、モスルの各空港を明記しました。

 陸自と空自の活動内容としては、「人道復興支援活動」のほか、米占領軍が行うフセイン政権残党勢力の掃討作戦や、イラク人による抗議・抵抗運動の鎮圧に対する支援を含む「安全確保支援活動」を明記。「安全確保支援活動」の内容について、陸自は「医療、輸送、補給等」、空自は「輸送」としています。

 輸送については「武器(弾薬を含む)の輸送を行わない」としました。しかし、政府は武装米兵を輸送する際に、小銃やライフルのほか、対戦車弾や迫撃砲をいっしょに輸送することも可能とする考えを示しています。

 「概要」には、陸・海・空の各自衛隊を派兵する時期について、「防衛庁長官が現地の状況等を確認の上、総理の承認を得て」「防衛庁長官が命じた日から二〇〇四年十二月十四日まで」とするだけで、具体的に出発する期日は盛り込まれていません。


イラクへの自衛隊派兵「実施要項」の概要 (全文)

 石破茂防衛庁長官が十八日に決定したイラクへの自衛隊派兵に関する「実施要項」の概要(全文)は次のとおりです。

 1 状況及び方針

 ○ 基本計画の閣議決定(平成15年12月9日)を受け、自衛隊の部隊は、人道復興支援活動の実施を中心としつつ、その活動に支障を及ぼさない範囲で、安全確保支援活動を実施

 ○ 自衛隊の部隊は、活動地域における治安状況等を注意深く見極め、慎重かつ柔軟に対応措置を実施

 ○ 自衛隊の部隊は、イラク復興支援職員及び関係在外公館と連携を密にするとともに、現地社会との良好な関係を構築

 2 自衛隊による対応措置の実施期間

 平成15年12月18日以降において基本計画に定める対応措置の実施を防衛庁長官が命じた日から平成16年12月14日までの間

 3 自衛隊による対応措置の実施区域

 (1)陸上自衛隊が対応措置を実施する区域は、基本計画で定められた区域の範囲から、活動の必要性、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められること、活動の安全が確保されることを考慮して、以下の場所又は地域を指定

 ○ イラク南東部ムサンナー県(サマーワ市を中心として活動)

 ○ クウェート国に所在する人員の乗降地、物品の積卸し・調達地、連絡調整を行う隊員の駐在地

 ○ バグダッドの連合軍司令部施設(情報収集及び連絡調整を行う隊員が駐在)など

 (2)航空自衛隊が対応措置を実施する区域は、(1)と同様の考慮をして、以下の場所又は地域を指定

 ○ バスラ飛行場、バグダッド飛行場、バラド飛行場、モースル飛行場等

 ○ クウェート国等ペルシャ湾沿岸等に所在する国の領域のうち、人員の乗降地、物品の積卸し地及び装備品の修理地

 など

 (3)海上自衛隊が対応措置を実施する区域は、(1)と同様の考慮をして、以下の場所又は地域を指定

 ○ ウム・カスル港

 ○ クウェート国の領域のうち、人員の乗降地、物品の積卸し地

 など

 4 自衛隊による対応措置の種類及び内容

 ○ 人道復興支援活動としての医療、給水、公共施設の復旧・整備、人道復興関連物資等の輸送

 ○ 上記に支障を及ぼさない範囲での安全確保支援活動としての医療、輸送、保管、通信、建設、修理若しくは整備、補給又は消毒

 ○ なお、物品の輸送に際しては、武器(弾薬を含む。)の輸送を行わないこと

 5 自衛隊の部隊による業務の実施の方法

 (1)陸上自衛隊の部隊による業務の方法

 ア 基本計画及び実施要項の範囲内で実施する主な業務

 ○ 人道復興支援活動としての医療、給水及び公共施設の復旧・整備並びにこれらに支障を及ぼさない範囲での安全確保支援活動としての医療、輸送、補給等

 イ 陸上自衛隊の部隊は、ブルドーザ、装輪装甲車、軽装甲機動車等により業務を実施。また、活動の安全を確保するために必要な数の拳銃、小銃、機関銃、無反動砲及び個人携帯対戦車弾を携行

 ウ 陸上自衛隊の部隊は、防衛庁長官が現地の状況等を確認の上、総理の承認を得てその本邦出国の時期を定めた後、本邦を出国

 (2)航空自衛隊の部隊による業務の方法

 ア 基本計画及び実施要項の範囲内で実施する主な業務

 ○ 人道復興支援活動としての輸送及びこれに支障を及ぼさない範囲での安全確保支援活動としての輸送

 ○ 陸上自衛隊の部隊の派遣又は補給等に際しての航空機による輸送

 イ 航空自衛隊の部隊は、輸送機(C─130H)、多用途支援機(U─4)および政府専用機(B─747)により業務を実施。また、活動の安全を確保するために必要な数の拳銃、小銃及び機関拳銃を携行

 ウ 航空自衛隊の部隊は、防衛庁長官が現地の状況等を確認の上、総理の承認を得てその本邦出国の時期を定めた後、本邦を出国

 (3)海上自衛隊の部隊による業務の方法

 ア 基本計画及び実施要項の範囲内で実施する主な業務

 ○ 陸上自衛隊の部隊の派遣又は補給等に際して行う艦艇による輸送

 イ 海上自衛隊の部隊は、輸送艦又は掃海母艦及び護衛艦により業務を実施

 ウ 海上自衛隊の部隊は、陸上自衛隊の部隊の本邦出国の時期に応じ、防衛庁長官が総理の承認を得て本邦出国の時期を定めた後、本邦を出国

 (4)その他の事項

 ア 陸上、航空、海上自衛隊の部隊は、相互に緊密な連絡を確保

 イ 警戒監視や情報収集等により、活動の安全確保に万全を期すとともに、活動を実施している場所の近傍において戦闘行為が行われるに至ったか否か等について早期に発見するよう努力

 ウ 業務を円滑かつ効果的に行うため、住民との良好な関係を維持

 エ 情報の提供等可能な支援をイラク復興支援職員に対して実施

 6 活動の一時休止及び避難等に関する事項

 活動を実施している場所の近傍において戦闘行為が行われるに至った場合等は、活動の一時休止、避難等を行うとともに、直ちに防衛庁長官まで報告し、その指示を待つこと

 7 実施区域の変更及び活動の中断に関する事項

 ○ 実施区域の変更に際しては、速やかに変更後の区域に移動し得るよう配慮

 ○ 中断の指示を受けた場合、速やかに活動を中断して部隊の安全を確保。関係国の軍隊及び関係機関等に対して中断を連絡

 ○ 活動の中断時、派遣の終了又は活動の復帰の判断に資する情報の収集及び防衛庁長官への報告を実施

 8 その他の重要事項

 ○ 自衛隊の部隊は、情報の収集や警戒監視等による現地の治安状況等の把握に細心の注意をはらい、業務の実施方法が活動の安全確保の観点から最も適したものとなるよう最大限に考慮すること

 ○ 対応措置を実施するに当たり、時宜に応じ、現地の情勢及び活動状況について防衛庁長官に報告

 ○ 6及び7のほか、基本計画又は実施要項の変更を必要とする場合には、その理由等必要な事項につき防衛庁長官に報告し、指示を待つこと


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