2003年12月16日(火)「しんぶん赤旗」
【ワシントン14日遠藤誠二】スミソニアン航空宇宙博物館の別館開館にあわせ広島への原爆投下機エノラ・ゲイが展示されるのを機に、米国内の歴史家、宗教者、平和活動家らが十三、十四の両日、訪米している被爆者とともに、原爆投下の実態や米国の核政策などについて討議する対話集会を開きました。
広島、長崎の被爆者は、被爆の実相を知らせないB29爆撃機エノラ・ゲイの展示に抗議して米国を訪れました。十四日、ワシントン市内の教会では、宗教者や平和活動家ら約二百人の市民が集まり、被爆者の声に耳を傾けました。
朝長民子さん(熊本県被団協事務局次長)は、広島での自身の被爆体験を語るとともに、今度核兵器が使われたら「人類は間違いなく滅びる」と述べ、「自分自身の悲しい、苦しい経験から、核兵器を地球上からなくそうと世界の人々に呼びかけています。米国でも平和を求める輪を広げてください」と訴えました。
アメリカ・フレンズ奉仕委員会のジョセフ・ガーソン氏は「被爆者が亡くなったら誰が広島と長崎を記憶するのか」と問いかけ、スミソニアン博物館のエノラ・ゲイ展示は「広島の記憶をなくすことを意図したもの」と批判。
さらに、ブッシュ現政権が「小型核」といいながら、広島原爆の七十倍の威力の核兵器開発を再開したことは、「核兵器の拡散と核軍拡競争を招く」とその危険性を指摘しました。
十三日には、ワシントン市内のアメリカン大学で、米国内の著名な歴史家、作家、ジャーナリストらによる討論会、「二十一世紀における広島 われわれは過去を繰り返すのか」が開かれました。
一九六〇年代末、ベトナム戦争をめぐる秘密文書「ペンタゴン・ペーパー」を暴露したダニエル・エルスバーグ氏は、原爆投下は、「非戦闘員を攻撃することであり、どのような状況のもとでも正当化できないテロ」だと主張、「われわれはこの一秒、この一分においても人間の尊厳を守ることを行わなければいけない」と述べ、核兵器廃絶を説きました。
被爆者らは、十五日の開館にあわせ、エノラ・ゲイ見学とともに、博物館前で抗議行動を予定しています。