日本共産党

2003年12月8日(月)「しんぶん赤旗」

イラクへの自衛隊派兵

成り立たない政府の正当化論


 小泉・自公政権は、イラクへの自衛隊派兵のための基本計画を九日にも閣議決定しようとしています。派兵決定の強行は「イラク国民にとっても、日本国民にとっても、とりかえしのつかない災いをもたらす最悪の選択です」(日本共産党第十回中央委員会総会決議)。政府が持ち出すどんな派兵正当化論も成り立ちません。


「テロにひるむな」というが…

イラク国民の憎しみの対象に

 小泉純一郎首相は、イラクでの日本人外交官殺害事件を受け、「テロにひるんではならない」と繰り返し、自衛隊の派兵に固執しています。

 テロはどんな理由であれ許されません。それをなくすためには、イラクでなぜ、テロと暴力が拡大しているのかを真剣に検討することが必要です。

 イラクではいま、罪のない一般市民に無差別発砲するなど横暴な軍事占領支配を続ける米占領軍に、国民の怒りと憎しみが高まっています。英国の独立調査機関が一日に発表したイラク国民の世論調査では、約八割が「占領軍を信頼していない」と答えています。

 日本政府も「生活上の不満、あるいは米軍兵士が末端で起こす事件等の結果、(イラク国民の)反米感情が増えている」(岡本行夫首相補佐官のイラク調査報告、三日公表)と認めざるを得ません。

 米英軍が国連憲章に違反した無法な侵略戦争を行い、不法な軍事占領を続けていることが、イラク国民の怒りと憎しみを呼び、テロと暴力の土壌を広げているのです。国連のアナン事務総長も「占領が続く限り、抵抗は拡大する」(十月十四日)と指摘しています。

 米英占領軍を支援するための自衛隊派兵は、イラク国民の怒りと憎しみの的になっている不法な占領支配に日本が軍事力をもって加担することです。

 そうなれば、日本も、軍事占領に反対しているイラク国民やイスラム世界の人々の憎しみの対象になってしまいます。自衛隊の派兵は、日本が不法なテロの標的になる危険を招き寄せることにもなります。

 “テロにひるむな。自衛隊を出せ”という論法は、派兵反対の世論を“テロに屈するものだ”と脅しつけ、危険極まりないイラクへの派兵を国民に押しつけるものです。


「安全な場所選ぶ」というが…

「殺し、殺される」ことに

 政府は「安全な場所を選んで自衛隊を派遣する」と繰り返しています。

 しかし、十一月には武力攻撃などによって占領軍兵士百人以上が死亡し、日本人外交官や韓国人技師の殺害なども続いています。米軍は、各地で空爆を再開するなど大規模な反米勢力の掃討作戦に乗り出しています。イラクはいま、「戦争状態」(米占領軍のサンチェス司令官、十一月十一日)に逆戻りしています。

 政府も、イラクの現状について「同国内における戦闘が完全に終結したとは認められない状態にある」(十二月二日決定の答弁書)とし、「戦闘」がいまだ終わっていないことを認めています。岡本行夫首相補佐官もイラク調査の報告で、「テロ活動の増加」がみられ、「減少する勢いを見せていない」としています。

 政府が十一月にイラクに派遣した専門調査団は、自衛隊派兵の候補地であるサマワを含む同国南東部の治安情勢について「比較的安定」しているとしつつ、「襲撃等の可能性は存在」すると指摘しています。

 イラク国民の怒りと憎しみの的になっている米英軍の不法な占領支配に加担する自衛隊は、占領軍の一部とみなされ、攻撃対象になることは避けられません。自衛隊の行く所が、どこでも「戦闘地域」になるのです。「戦闘地域に自衛隊を送らない」というイラク特措法の建前は、いよいよ虚構になっています。このまま自衛隊派兵を強行すれば、日本の軍隊が戦後初めて、他国領土で他国民を殺傷し、自衛隊員からも戦死者を出すということになりかねません。まさに「殺し、殺される」(小泉首相)という恐ろしい事態が現実のものになってしまいます。


日本の「責任」というが…

復興支援をいっそう妨げる

 首相は、イラクの復興支援は、日本の「国益」「責任」だとし、自衛隊の派兵によって「国際社会の責任ある一員として役割を果たしていく」と述べます。

 国際社会がイラク国民の意思に基づいて復興支援にあたることは当然です。しかし、米英軍の不法な軍事占領による事態の泥沼化が、国際社会としての復興支援を不可能にしています。

 国連は、八月にイラクの現地本部で爆破テロが起きたことなどを受け、バグダッドの外国人職員を全員退去させました。赤十字国際委員会のバグダッド事務所付近でも十月に連続爆破テロが発生。同委員会はバグダッドと南部のバスラにある事務所の一時閉鎖を決めました。

 アナン国連事務総長は「国連は、占領状態が続く限り、イラクで政治的役割が果たせない」(十月二日)と指摘。国連本部の政務官は、米英の占領下では「国連が占領の『協力者』であるかのような印象を広めてしまう」とし、「占領と国連とは両立しない」と強調しています(川端清隆氏、「朝日」十一月七日付)。

 米英軍の占領支配の下で活動すれば、それが国連であれ、NGO(非政府組織)であれ、どの国の政府であれ、占領の「協力者」とみなされ、攻撃の対象になってしまうのです。

 占領支配に加担する自衛隊派兵は、復興支援の「責任」を果たすどころか、それを妨げ、日本の「国益」にも反することになります。

 結局、首相のいう「国益」とは日米同盟を最優先することであり、軍事占領を続ける米国に対して「責任」を果たすといっているにすぎません。


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