日本共産党

2003年12月6日(土)「しんぶん赤旗」

第十回中央委員会総会

志位委員長の幹部会報告


 日本共産党第十回中央委員会総会(三日〜四日)で採択された志位和夫委員長の幹部会報告は、次のとおりです。


写真

幹部会報告をする志位和夫委員長=3日、党本部

 みなさん、おはようございます。衛星通信をごらんの全国のみなさんにも心からのあいさつを送ります。私は、幹部会を代表して第十回中央委員会総会に対する報告をおこないます。

 幹部会報告は、総選挙の総括と教訓を中心におこないます。

 今後の方針については、七カ月後にせまった参議院選挙の方針、来年一月の第二十三回党大会にむけての活動方針にしぼってのべることにします。

一、総選挙の結果について

 まず総選挙の結果についてであります。

 わが党の総選挙での結果は、議席を改選前の二十議席から九議席へと大幅に後退させる結果となりました。比例代表選挙での得票は、四百五十八万票(7・8%)であり、前回総選挙でえた六百七十一万票(11・2%)から後退しました。

 この選挙は、財界主導で政党状況の急激な変化がつくられ、「政権選択選挙」のキャンペーンが大規模におこなわれるという、複雑で困難な条件のもとでのたたかいでした。わが党は、この状況に正面からたちむかい、力をつくして奮闘しましたが、議席と得票を減らす結果となったことは、たいへんに残念であります。党の前進を願う方々の期待にこたえる結果がだせなかったことにたいして、党中央としておわびをいたします。また、ご支持していただいた有権者のみなさん、昼夜をわかたず奮闘していただいた支持者、後援会員、党員のみなさんに心から感謝するものであります。ありがとうございました。

 わが党は、この選挙を反転攻勢の選挙と位置づけてたたかいました。八中総決定では、「二〇〇一年の参議院選挙で獲得した四百三十三万票が、われわれのとりくみのリアルな起点となる。これを起点とし、反撃と攻勢の活動をつうじてどれだけ前進・躍進するか──これで選挙戦の結果がはかられる」(大会決議案)とのべています。

 この決定にてらして結果をみますと、わが党が今回の総選挙でえた比例代表での四百五十八万票という得票は、前回の総選挙からは減らしましたが、二〇〇一年の参院選の四百三十三万票にくらべて二十五万票を増やしています。これは、わが党が、小選挙区でえた四百八十三万票(8・1%)とともに、複雑で困難な条件のもとでふみとどまったといえる結果であり、今後の前進の土台となる貴重な成果であります。わが党の前進のために奮闘してくださった全国のみなさんの努力のたまものであります。

 選挙後、全国の都道府県委員長、地区委員長、候補者のみなさんから、選挙をたたかっての感想と意見をよせていただきました。また党本部には、電話、ファクス、メールなど、さまざまな形で、激励とともに、批判や叱咤(しった)の声もふくめ、たくさんの意見がよせられました。私たちは、それらの意見の一つひとつをつぶさに読み、真剣にうけとめ、検討を重ねてきました。ご意見をよせてくださった党内外のすべての方々に、感謝をもうしあげるものです。

 そうした内外の声もふまえ、幹部会報告では総選挙の総括と教訓の基本点を明らかにするものです。総括と教訓については、来年一月に開催される第二十三回党大会にむけて、党内外のみなさんの意見をふまえて、さらに深めていきたいと考えます。

二、この選挙のたたかいから確信にすべきこと

 総括の第一の角度は、この選挙のたたかいから確信にすべきことは何かということです。

 残念な後退のなかからも、今後のたたかいの確信にすべきことを、まずはっきりとつかむことが重要であります。

政党状況の急激な変化のもと、的確な政治戦略を築きながらたたかいぬいた

 その第一は、わが党が、政党状況の急激な変化のもとで、的確な政治戦略と政策論戦の方針を築きあげながら、この選挙をたたかいぬいたことです。

 この選挙は、保守「二大政党制」づくりの方向に、政党地図──政党状況の激変がおこり、消費税増税と憲法改定など日本の命運にかかわる問題で、自民党と新民主党が同じ流れに合流し、その枠内で「政権選択」を争うという状況がつくられるもとでの選挙でした。

 それまでの野党状況の特徴は、わが党以外の野党が、「反自民」をかかげる限りでは野党性をしめすものの、国政の基本問題では自民党政治の枠内にとどまり、その枠組みを打破する立場を確立できていない−−こうした二つの側面をもつ過渡的状況を特徴としていました。

 この局面が、今回の総選挙にむかう過程で大きく変化しました。財界とアメリカから信頼されるもう一つの保守政党をつくろうという動きが、急激にすすみました。それは、民主党と自由党の合併によって生まれた新民主党が、(1)消費税について自民党と競い合う形で、いちはやく増税の方向を打ち出したこと、(2)憲法について「論憲」から「創憲」へと、公然たる改憲路線を打ち出したこと、(3)衆議院の比例定数の大幅削減という反民主主義の暴挙を強行する姿勢をあらわにしたことなどに、具体的な形であらわれました。ここには明らかに、従来の野党状況とはことなる政党地図の大きな変化がありました。

 この変化は、財界が前面にでて、財界主導でつくられたものでした。日本経団連、経済同友会などの財界団体は、危機におちいった支配体制の延命のために、政界を再編し、財界の意のままに動く保守「二大政党制」をつくりあげる野望の実現をめざして、系統的な戦略をもってのぞみました。その青写真は、すでに昨年十月に経済同友会が発表した政界再編の提言のなかに、はっきりとしめされていました。今年に入って、日本経団連によって、企業献金のヒモつき政党を育成する政界買収作戦が公然と提唱されました。民主・自由両党の合併の仲人役をつとめたのは財界関係者でした。財界団体は、自民党と民主党の「政権公約」の策定の過程への直接の関与までおこないました。

 政党状況の変化が、消費税増税や憲法改定などの具体的な問題をつうじて、明りょうな形で顕在化したのは、解散直前の時期でありました。民主党が「マニフェスト」で消費税増税と憲法改定を公然と打ち出したのは、民主・自由両党が合併した十月五日であり、自民党が「政権公約」で消費税増税を打ち出したのは、解散当日の十月十日のことでした。

 わが党は、この状況に直面して、おこっている政党状況の急激な変化を分析し、増税と改憲を推進する保守「二大政党制」づくりの動きに正面から対決する攻勢的な論陣を敏速につくりあげていきました。政党状況の変化の根本に、財界の戦略があることを、たたかいのなかで追跡・探求し、間違いのない事実にもとづいて、ことの真相を可能な限り明らかにし、国民につたえる努力をつくしました。全国のみなさんからの感想でも、「論戦は正確で力をもった」「論立てが明確でたたかいやすかった」ということが、共通してのべられています。この時期に発揮された党中央の政治的イニシアチブは、全体として機敏で的確なものであったと考えるものであります。

 政党状況の変化は急激なものであり、わが党の訴えを国民的な規模でつたえきることはできませんでした。「自民党政治を変えてほしい」、あるいは「反自民」という思いが、民主党に流れこむ動きが形成され、わが党の前進にとって大きな逆風として作用しました。

 しかし、ことの真相がつたわったところでは、たしかな変化がおこりました。また、ことの真相をつかんだ多くの党員と後援会員、支持者のみなさんが、確信と誇りをもってたちあがり、それは日をおって広がりました。そのことは、全国からの感想でも生き生きとつづられています。「財界戦略をゆるしてはならない」と、多くの党員がいわば「綱領的な確信と気概」をもってたちあがりました。とりわけ、一カ月という短い期間に、四種類の「しんぶん赤旗」号外の全戸配布をおこなったことは、画期的な奮闘でした。このビラの一枚一枚がとどき、対話がすすんだところでは、積極的な変化がつくられました。

 国民的な規模では、この仕事がやりきれなかったとはいえ、わが党が的確な政治戦略をもってたたかいぬけたことのもつ意義は大きなものがあります。悪政を推進する保守「二大政党制」づくりのくわだてに正面から対決したわが党のたたかいは、今後に必ず生きるものと確信するものです。また、こうした複雑で困難なたたかいのなかで、わが党が獲得した四百五十八万票という得票の一票、一票の重みは、大きなものがあります。

選挙で訴えた政策と公約は、こんごに生きる力をもっている

 第二に、わが党が、この選挙で訴えた政策・公約の内容は、すべて今後に生きる力をもつものであるということであります。

 わが党は、この選挙戦で自民党政治をおおもとから変える日本改革の提案でも、年金、雇用、イラク問題などの個々の政策提起でも、消費税増税反対と憲法改悪反対でも、国民の利益にたった論陣をはりました。これらの政策提起のもつ先駆的意義は、選挙後の政治の現実の展開をつうじても、うきぼりになっています。

 たとえば、わが党は、総選挙政策のなかで、社会保障の財源をどうまかなうかについて、ふみこんだ見解を明らかにしました。すなわち、まず当面は、「逆立ち」財政をただす改革をすすめ、将来は、経済の民主的原則にもとづいて大企業や高額所得者に応分の負担をもとめる改革をすすめるという、“二段構え”の財源論を提起し、消費税に頼らなくても安心できる社会保障を築けるということを明らかにしました。この立場にたって、年金問題でも、当面は歳出の改革によって来年度から基礎年金への国庫負担率を二分の一に引き上げるとともに、将来は国庫と事業主の負担による「最低保障年金制度」を創設することを提案しました。これらの政策提起は、いま年金問題が熱い焦点となるなかで、いよいよ重要で切実な意義をもつものとなっています。

 イラク問題でも、わが党の一貫した主張と行動−−(1)イラクへの無法な侵略戦争に反対をつらぬく、(2)米英軍主導の占領支配から国連中心の復興支援に枠組みをきりかえ、イラク国民に早期に主権を返還し、その枠組みのもとで米英占領軍を撤退させる、(3)日本は国連中心の枠組みでの非軍事の人道支援こそおこなうべきであって、憲法をじゅうりんした自衛隊派兵計画には反対するという立場が、いかに的確であったかは、米英軍の占領支配の破たんとイラク情勢の泥沼化という事態の展開そのものによって裏付けられています。イラクへの自衛隊派兵という歴史的暴挙をくいとめるために、日本共産党の真価を発揮すべきときであります。

 わが党が、この総選挙で、二十一世紀の日本の進路にかかわる大問題として、消費税増税と憲法改悪の問題を、先駆的に提起した意義は、きわめて大きなものがあります。この二つの大問題を選挙戦の争点として提起した政党はわが党だけでしたが、それはしだいに選挙戦の熱い争点となり、増税と改憲を推進する自民党と民主党の立場が、うきぼりにされていきました。今後を展望すると、この二つの大問題は、いよいよ国政の熱い大争点とならざるをえません。日本経団連は消費税増税を二〇〇七年には実施する日程表をつくりました。憲法改定をめぐっても、自民党は、来年にも改憲のための国民投票法案の制定、再来年には本格的な改定作業の開始という日程表を明らかにしています。国民多数の立場と、消費税増税・憲法改悪をおしつける悪政との矛盾は、今後いっそう広がらざるをえないでしょう。

 わが党は、総選挙でかかげた公約の一つひとつを実現するために、新しい国会で、また国民運動と共同して、全力をつくすものであります。

三、党中央のとりくみの反省点について

 つぎに総括の第二の角度として、党中央のとりくみの反省点について明らかにします。全国からの感想のなかで、政党状況の急激な変化が明らかになった十月はじめから投票日にいたる時期に、党中央が発揮した政治的イニシアチブが的確だったことへの評価とともに、「なぜもっと早くできなかったのか」「総選挙のとりくみが全体として遅れたのではないか」「財界戦略は昨年来のものではないか」などの率直な意見がよせられています。これらの声は、党中央として深刻にうけとめなければならないものであると考えます。報告では、党中央の選挙戦のとりくみにかかわって、二つの反省点をのべるものです。

党中央が直接責任をおっている課題−−宣伝物(号外)と選挙政策の遅れ

 一つは、全党と後援会に総選挙のたたかいへの総決起をよびかけながら、党中央が、その推進のために必要不可欠な仕事を、時機を失せずにおこなうという点で、自らの責任をはたしたとはいえない弱点があったことであります。とりわけこの弱点は、宣伝物(号外)発行と選挙政策発表の遅れにあらわれました。

 七月末、年内総選挙の可能性が強まるもとで、常任幹部会として、「政局は、ことし秋から年内の解散・総選挙の可能性を色濃くしている」こと、「総選挙での勝利を前面にすえ、政治宣伝や対話・支持拡大など勝利に必要な諸課題をすべてやりぬく活動を加速させていく」ことを確認し、全党に総選挙勝利を前面にした活動と宣伝・対話のとりくみの飛躍をよびかけました。全党に宣伝・対話のとりくみの飛躍をよびかける以上、党中央の責任として全党的とりくみの推進の要となる宣伝物(号外)をすみやかに発行すべきでした。ところがこれが大きく遅れる結果となりました。

 九月十七日、十八日に開催した八中総では、「秋の解散・総選挙の可能性は濃厚」として、「総選挙勝利に必要な草の根での宣伝・組織活動を、四十日間でやりぬく」ことを党活動の前面にすえつつ、総選挙勝利と大会成功のためのとりくみを相乗的に推進する方針をきめました。

 全国からの感想のなかで、「八中総の時点で大会を延期して、総選挙一本にしぼるべきではなかったか」という声もよせられています。しかし、すでに党大会が招集されている状況のもとでは、解散・総選挙の日程が確定しない時点で、延期を決定することは適切ではありませんでした。八中総決定で、「早期の解散・総選挙になった場合には、解散の翌日に緊急の九中総を招集して、大会延期の措置をとる」ことを確認したのは、そういう立場からでありました。総選挙勝利のための活動を前面にすえつつ、大会成功のための活動をやりぬく構えをくずさず、「支部が主役」で両方の課題を相乗的に推進するという、八中総の方針そのものは、攻勢的で積極的なものであったと考えます。全国からの感想でも、綱領改定案と大会決議案の読了と討論のための努力は、選挙戦をたたかうエネルギーを深いところからひきだすものになったという感想が、多くよせられています。

 選挙戦のとりくみが遅れた問題については、二つの課題を提起したことにではなく、選挙戦のとりくみそのものがどうだったのかが、具体的に検討されなければなりません。その角度からこの間の党中央の活動を自己点検してみますと、中央委員会総会として「四十日間でやりぬく」という方針を全党に提起しながら、国民むけの宣伝物(号外)がこの段階にいたっても作成されておらず、宣伝物(号外)の発行が解散時点にまで遅れたこと、選挙政策も発表が十月八日まで遅れたことなど、党中央の責任としてやるべきことがやられておらず、立ち遅れたことに、大きな問題がありました。これは全党のとりくみの立ち遅れの大きな要因となりました。

 政党状況の変化にそくして争点を明らかにする宣伝物−−たとえば、自民、民主両党が消費税増税で同じ流れに合流した、ということを批判した宣伝物などは、そういう状況の変化の具体的事実が明りょうにならなければ作成できないことは、いうまでもないことです。しかし、わが党の日本改革の提案や、党の歴史・路線・値打ちをおしだす宣伝物は、もっと早い時点で作成できたし、作成すべきでありました。また、選挙政策も、その性格からいって、他党の動向をみきわめなければ発表できないというものではありません。もっと早い時点でしあげて、発表すべきものでありました。これらの政策・宣伝活動が早い時期からとりくまれていれば、政党状況の変化にそくして争点を明らかにした論戦がさらに大きな威力と効果を発揮することができたでしょう。これらの遅れは、大きな反省点であります。

 これらの遅れの責任は、ただ党中央の担当部門の責任ということではすまされない問題です。選挙闘争の全体に指導責任をおっている幹部会委員長である私と、選挙闘争本部が、これらの遅れを重視し、党中央の集団的英知と力を結集して事態を打開する指導的イニシアチブを十分に発揮したとはいえなかったことが問題でありました。この点で重大な弱点があったことをきびしく反省するとともに、二度とこうした遅れをきたさないことを自らへの戒めとし、今後の教訓とするものです。

保守「二大政党制」をめざす財界戦略への的確な分析と批判の立ち遅れ

 いま一つは、保守「二大政党制」をめざす財界の新しい戦略にたいする的確な分析と告発の立ち遅れという問題です。この財界戦略が、政党地図−−政党状況の変化という形で顕在化したのは解散の直前のことでした。しかし、財界戦略そのものは、昨年来からのものでした。

 昨年来、財界は、支配体制の深刻な危機を前にして、従来の財界と政治との関係−−政治の責任は政権党におわせながら財界が支援するという従来型の関係−−を根本的に変えて、財界が直接のりだして政界を再編成し、政界を自らの直接の支配下におく戦略を開始するという新しい動きに出ていました。これまでも一九九三年から九四年にかけての「非自民政権」など、保守「二大政党制」づくりの動きはありましたが、今回の保守「二大政党制」づくりのくわだては、財界・大企業が直接のりだし、直接指揮をとって推進しているところに、これまでにない新しい特徴がありました。

 財界と政治の関係が、そうした新しい特徴をもったものへと急激に変化しているのに、わが党は財界と政治の関係、したがってまた政党関係の基本を従来型の見方でみていました。そのために保守「二大政党制」づくりにむけた財界のさまざまな動きが現におこっているのに、それを見落とす結果となりました。ここが重大な反省点であります。

 八中総で決定した大会決議案の第八章「総選挙、参議院選挙での新たな躍進をめざして」のなかでのべられている政党状況の分析−−野党の状況には「反自民」という面と、基本路線での自民党政治の枠内という二つの面があるという見方は、財界と政治の関係にたいする従来型の見方に対応した、従来型の政党状況の分析を定式化したものであり、あの時点での認識としても不正確なものでありました。

 解散の直前に政党状況の変化が顕在化し、それを批判する論陣を築く過程で、この政党状況の変化が財界主導でおこなわれていること、この動きの根本に保守「二大政党制」をめざす財界の新しい戦略があることを究明・告発・批判したことは、最後の一カ月のたたかいに大きな威力を発揮しました。そのことは、全国からの多くの感想でも、「いったい今度の選挙を、何を足場に、どこで踏ん張っていいか、さだかでないまま選挙を迎えようとしていたが、十月はじめからの解明によってたしかな足場がさだまった」という声がよせられていることでも、明らかです。

 それだけに、もっと早い段階から財界戦略への的確な分析と批判がおこなわれていれば、もっと早くこの選挙戦をたたかう見取り図を全党に提供し、選挙戦の真の争点を国民に明らかにすることができたはずであります。「マニフェスト選挙」や「二大政党制」づくりの動きにたいしても、もっと早い段階からその時期なりのやり方での的確な批判ができたはずであります。そして選挙戦のたたかいの全体をより積極的に展開することもできたはずであります。

 以上の二つの問題を、党中央としての選挙戦のとりくみの中心的な反省点とし、今後の教訓として必ず生かしたいと思います。

四、候補者を先頭にした住民との日常的結びつきと選挙活動について

 総括の第三の角度として、候補者を先頭にした住民との日常的結びつきと選挙活動について、報告したいと思います。

 二〇〇一年の参議院選挙のたたかいを総括した三中総決定は、総選挙にのぞむ基本姿勢として、「議員、候補者を先頭に、住民との日常的結びつきを抜本的に強化する」ことを強調し、「かつての中選挙区制度と比較しても、いまの小選挙区比例代表・並立制という選挙制度で危険なのは、選挙を経るごとに、有権者と議員・候補者の生きた結びつき──草の根の足場が弱まることにあります。……よほど意識的に、結びつきを強める努力が必要となっています。そういう見地で、比例候補者、小選挙区候補者の活動を位置づけ、抜本的な強化をはかりたい」という提起をおこないました。

 さらにこの決定では、「比例代表選挙を、選挙戦の中心にすえてたたかう」こととともに、小選挙区について、「小選挙区は、有権者の前で国政を争う重要な基本単位であり、日本共産党は、議席の有無にかかわらず、国政で責任をはたす党として、この基本単位で日常不断に有権者とむすびつき、要求にこたえる活動に、積極的にとりくまなければなりません」と提起しました。

 これらの決定にてらして、総選挙のとりくみがどうだったのかについて、総括と教訓の基本点についてのべるものです。

全選挙区で候補者を立てたたかいぬいた積極的な意義

 まず今回の選挙戦で、わが党が、四十七人の比例代表候補者を擁立してたたかうとともに、三百の小選挙区のすべてで候補者を擁立して、たたかいぬいたことの積極的な意義について確認しておきたいと思います。

 三百名の候補者のなかには、早い段階から候補者活動にとりくんで草の根での信頼を広げる活動にとりくんだ同志もいれば、選挙の直前の時期に党の要請にこたえて困難な条件のなかでも立候補を決意し奮闘した同志もいます。おかれた条件はさまざまですが、どの同志も、日本共産党の国政の候補者としての勇気と気概をもってこの選挙戦をたたかう先頭にたちました。選挙後によせられた感想をみても、多くの同志が、選挙戦で訴えた政策と方針にたいする強い確信、訴えがとどいたところでは国民の心をつかんだこと、そして候補者活動にとりくんだことへの誇りをつづっています。党機関の仕事と兼任で候補者活動にとりくんだ同志からも、「直接に有権者に党を語る仕事にとりくんだことが、今後の党機関の活動にも幅と深みをもたらす財産になった」などの積極的な感想が多くよせられていることも、重要であります。

 わが党が今回の選挙でえた比例代表での四百五十八万票という得票は、比例代表の候補者はもとより、全国の三百での小選挙区での果敢なたたかいがあったからこそ、獲得することができたものであります。

 小選挙区という選挙戦の基礎単位でのたたかいを欠いては、国民への責任をはたせませんし、将来的な党の発展もありません。議席に結びつかなかったとはいえ、このたたかいの積極的意義にたいして確信をもつ必要があるし、その先頭にたった三百人の候補者の奮闘にたいして、心からの敬意を表明するものであります。

計画的・系統的に有権者との日常的結びつきを広げるとりくみの重要性

 それでは日常的な有権者との結びつきはどうでしょうか。全国からの報告と感想をみますと、まだ一部ですが、小選挙区でも議席がえられる党に成長しようという気概を燃やし、候補者を先頭に、日常的に草の根の住民要求を国政にとどける活動をおこない、さまざまな団体・組織との対話や懇談、シンポジウムなどにもとりくみ、粘り強い活動をつうじて、その地域での日本共産党の国政での代表者として住民に認知され信頼されるとりくみが始まっていることは、貴重であります。今回の選挙戦での結果にただちに結びつかなくても、そうした粘り強い活動に光をあてて、発展させていくことが大切であります。

 しかし、全党的にみますと、計画的・系統的に有権者との結びつきを広げるとりくみを開始している選挙区は、まだ一部にとどまっています。またそうした先駆的とりくみを開始している選挙区でも、他党に比較するならば、わが党の活動の規模と内容は、弱いものにとどまっています。わが党は小選挙区制という反民主主義の制度の撤廃を要求していますが、この選挙制度のもとでのたたかいが一定の長期にわたって避けられないこと、また選挙を経るごとに有権者が小選挙区での政党選択を第一に考えるようになってきていることなどを考えるならば、ここでの活動が弱いという現状をどう打開するかは、わが党の将来にとって真剣な努力がもとめられる重大問題であります。

 自民党、民主党などは、それぞれ小選挙区での活動を文字どおりの主戦場として位置づけ、それぞれなりに候補者を先頭として有権者と密着した結びつきを広げることに力をそそぎ、議席の争奪に執念を燃やし、しのぎを削るたたかいを繰り広げています。このたたかいのなかで日本共産党が、政策論戦の面での真価をおおいに発揮するとともに、有権者との日常的な結びつきでも他党に負けないとりくみを発展させ、草の根の要求を国政に結びつける運動を多面的に展開することが強くもとめられています。

比例ブロック選出議員の二重の責任

 住民要求にこたえた活動および有権者との日常的な結びつきの重視ということは、活動の形態と条件に違いがあるとはいえ、比例ブロック選出議員の場合にも、重視されなければならない点であることが、この総選挙のとりくみでも明らかになりました。

 比例ブロックの選出議員は、その地域で有権者を代表する日本共産党の衆議院議員であり、またその議席は、その地域での党支持者、後援会員、党員の奮闘が結実したものです。この二重の責任への自覚にたって、この点での活動に特別の力をそそぐ必要があります。

 以上、おもに有権者との日常的な結びつきという角度から今度の選挙戦の総括と教訓についてのべましたが、総選挙をたたかう今後の基本方針については、小選挙区・比例代表並立制のもとでの三回の総選挙の経験もふまえ、比例代表と小選挙区の位置づけとたたかい方について、ひきつづき抜本的で総合的な検討をおこない、方針を明らかにしていきたいと思います。

五、党建設にかかわる総括と教訓について

 総括の第四の角度は、党建設にかかわる総括と教訓についてであります。

財界のくわだてを草の根から打ち破る、国民と深く結びついた強く大きな党を

 総選挙のたたかいは、どんな情勢のもとでも前進できる量・質ともに強大な党建設の必要性、それが立ち遅れている現状を打開することの重要性を、痛切に感じさせるものでありました。全国からの多くの感想でも、「財界など支配勢力がどんなたくらみをめぐらしても、それを打ち破って、前進できる力をもった党をつくりたい」という声が、共通してよせられました。

 党建設の遅れという問題点は、二〇〇〇年の総選挙、二〇〇一年の参議院選挙、今年のいっせい地方選挙のさいにも、その総括にさいして、打開すべき党の弱点として明確にしたことでありました。全党は、その教訓にたって、二〇〇〇年の総選挙以降の時期に、二〇〇〇年七月から十一月に「党員拡大を重点とした党勢拡大の大運動」、二〇〇一年十月から二〇〇二年四月に「党員・読者拡大の大運動」にとりくみ、今年五月から大会をめざして「党員・読者拡大の大運動」にとりくんでいます。

 これらの全党の奮闘によって、今回の総選挙は、党員拡大では、前回総選挙時にくらべて、党員数は106%と、わずかですが前進のなかでたたかいました。しかし、「党と国民との結びつきの前進・後退の最大のバロメーター」(大会決議案)である「しんぶん赤旗」の読者数は、それをささえ増やす全党のたゆまぬ奮闘によって前進した月もありましたが、全体としては後退傾向を脱することができず、前回総選挙時比で、日刊紙で86%、日曜版で84%という水準で、今回の総選挙をたたかうことになりました。

 今回の総選挙では、財界主導での政党状況の激変とともに、宣伝戦の面での大きな様変わりも痛感されます。すなわち、自民党と民主党などが巨額の資金を投入してかつてない膨大な規模での宣伝をおこない、「政権選択選挙」をあおりたてたマスメディアのキャンペーンとの相乗効果で、国民世論を動かす洪水のような作用となってはたらきました。

 わが党は、このくわだてにたいして正面から果敢にたたかいました。しかし、これまでにない大掛かりな野望を打ち破るには、わが党の基礎的な力が小さいことも事実であります。相手は財界の権力・財力をバックにした大がかりなくわだてをすすめようとしている。そうした保守「二大政党制」づくりを打ち破り、情勢を前向きに打開し、国民の利益にかなった民主的改革の道を切り開くためには、草の根で国民と深く結びついた党を強く大きくする以外に道はありません。これが唯一の大道であり、いま目の前ですすめられている反動的くわだてにたいする最大の回答であります。このことを、今回の総選挙の結果の痛切な教訓として全党がつかみ、新たな決意をもって党建設の前進のために力と情熱をそそぐことを、心からよびかけるものであります。

どうやって党建設の前進をかちとるか−−選挙戦をつうじてうきぼりになった教訓

 どうやってこの分野での前進をかちとるか。大会決議案の第十章「どうやって党建設を安定的な前進の軌道にのせるか」は、そのための基本的指針を明らかにしています。そこでは、党建設を前進させるための「五つの基本方針」と、それを土台にした「四つの重点的努力方向」がのべられています。この全体を、しっかりとにぎってとりくむことが、強く大きな党をつくるうえでも、政治戦をたたかううえでもいかに重要であるかが、総選挙のとりくみをつうじてもうきぼりになっています。報告では、いくつかの教訓を順不同でのべますが、これらを強く大きな党をつくるうえでの実践にいかしていきたいと思います。

国民の要求実現のために献身すること

 一つ目は、国民の要求実現のために献身することです。

 今回の総選挙で、全体として得票を後退させたなかでも、大きく得票をのばしている党組織もうまれています。それらの党組織に共通しているのは、広い住民の要求をとらえ、住民とともにたたかいをおこし、そのなかで党が揺るがない信頼を広げていることであります。市町村の段階で大きく得票をのばしているいくつかの党組織が生まれていますが、そこでは切実な住民要求にもとづく日常活動にとりくみ、それと結びつけて党勢拡大を持続的に前進させていることが、共通した教訓です。前回総選挙比で二倍以上の得票をえた小選挙区熊本五区では、党が広範な住民とともに川辺川ダム反対のたたかいに積極的にとりくんだことが、保守層や無党派層の信頼を広げ、党の前進につながっています。これらは、国民の要求実現のために献身することが、わが党の立党の精神であり、根本的な存在意義であるということをしめすものであります。

 大会決議案と総選挙政策にもとづいて、多面的な要求実現の運動に、すべての支部がとりくみましょう。そのさいイラク問題、消費税や憲法問題などの国政の大問題とともに、身近な要求のとりくみが大切であります。また大会決議案の第七章「社会の道義的な危機を克服する国民的対話と運動を」にもとづいて、広い団体・個人との対話と共同を広げていくとりくみも重要であります。

若い世代の要求にこたえるとりくみと党建設

 二つ目は、若者の多面的な要求にこたえる活動を強め、若い世代を大胆に党に迎えいれることの重要性であります。

 全国からの感想では、新しい世代、若い世代の後継者をつくることが、党にとって死活的な課題となっていることが、選挙戦をつうじても痛感されたというたくさんの声がよせられました。まさにこれは全党の共通した気持ちです。同時に、報告を読みますと、総選挙のなかで、若い世代が力を発揮する経験が各地に広がったことも、のべられています。とくに小選挙区に若い候補者を擁立したいくつかの選挙区で、目覚ましい変化が生まれていることは重要であります。

 たとえば小選挙区京都四区からは、「青年の活躍は、宣伝でも、対話でも、弁士でも、目覚ましいものがあった。新顔の青年がつぎつぎと集まり、事務所には百人をこえる青年が出入りし、マスコミも驚いていた。党や民青同盟に入る青年もつぎつぎと生まれた」という報告がよせられました。

 小選挙区愛知十五区からは、「この数年間に党に迎えいれた青年がつぎつぎに力を発揮したのも、うれしい選挙だった。三十二歳の候補者が最年長で、宣伝カーに乗務した平均年齢が二十五歳というときもあった」という報告がよせられました。

 若い世代が総選挙で力を発揮した背景には、この間、青年党員や民青同盟が、イラク戦争反対の運動、憲法九条を守る運動、「若者に仕事を」をもとめる運動など、青年のなかで、要求にもとづくさまざまなたたかいを広げてきていることがあげられます。他党もいろいろと「青年対策」をやっています。しかし、青年がみずからの切実な要求をかかげてたちあがったときに、それを正面から受けとめ、青年とともにその実現のためにたたかうことのできる政党は、日本共産党しかありません。ここに確信をもって、いま青年のなかに大きくうってでれば、前進をかちとることはできる。その条件はおおいにあります。

理論的・政治的確信を全党のものに

 三つ目は、私たちの事業への理論的・政治的確信を全党のものにすることの重要性です。

 今回の選挙の特徴は、綱領改定案が明らかにしている「異常な対米従属と大企業・財界の横暴な支配の打破」という民主主義的変革の課題が、日本の政治の中心問題であることが、財界の大号令のもとですすめられている消費税大増税のくわだて、アメリカの圧力のもとですすめられている憲法改悪の策動、さらに財界主導での保守「二大政党制」づくりなど、日々の政治の生きた動きをつうじて手にとるように明らかになりつつあるところにありました。

 党中央が、この動きをみぬいて「財界戦略を打ち破ろう」とよびかけたことにたいして、多くの同志たちが、勇気と確信をもって立ちあがりました。そして全国からの感想でも、そうした奮闘の土台には、綱領改定案と大会決議案があった、この理論的指針があったからこそ激動的な情勢にも意気高くたちむかえたとの感想が多くだされています。

 それだけに、綱領改定案と大会決議案を全党の英知を結集して練り上げ、その政治的・理論的到達点を文字どおり全党員が深く身につけることの重要性は、ますます切実なものとなっています。

「しんぶん赤旗」の活動は「正念場」

 四つ目は、機関紙活動の現状打開にとって、いまが「正念場」だということであります。

 「正念場」という場合、「しんぶん赤旗」の活動を発展させることが党にとって「正念場」であるだけでなく、日本の社会全体にとってもまさに「正念場」となっていることが、今回の総選挙をつうじて痛感されたことでした。

 大会決議案は、「『しんぶん赤旗』は、まず何よりも、“真実を伝え、正義の世論をおこす旗”である」とのべていますが、「しんぶん赤旗」のこの役割がいまほど痛切にもとめられることはありません。財界主導の保守「二大政党制」づくりの動きは、マスメディアを空前の形で総動員したキャンペーンとして展開されました。マスメディアのほとんどが、今回の選挙を「政権選択選挙」「マニフェスト選挙」とよび、保守「二大政党制」へと国民を誤導する報道姿勢に終始しました。

 このなかで、財界による日本の政治支配の黒い野望の全体像を、動かぬ事実にもとづいて明らかにしていった「しんぶん赤旗」の報道は、まさに真実と正義にたったかけがえのないものでありました。わが党が、今後のたたかいで、この財界のくわだてを打ち破り、日本改革への道を開く事業を前進させることを展望するとき、それは強大な「しんぶん赤旗」ぬきには、考えられないことであります。

 今日の情勢のもとで、いよいよその値打ちが輝く「しんぶん赤旗」を、国民的なメディアに成長させていく仕事に、全党があげてとりくもうではありませんか。

党機関の水準を抜本的に向上させる努力

 五つ目は、党機関の水準を抜本的に向上させる努力の重要性です。

 今日のような激動の時代には、政治的・理論的指導がいかに重要かということが、選挙戦をつうじても痛切に感じられました。財界戦略のもとでの政党状況の変化と党の立場を同志たちにつたえきり、心に灯をともす政治指導をやりきったところでは、党はみちがえるような底力を発揮しました。この点での力量の向上のための努力をおたがいにはかりたいと思います。

 また、大会決議案が指摘している「双方向・循環型」の指導を、中央と中間機関、機関と支部との間でつらぬき、あたたかい連帯で心がかよいあう党をつくることの重要性も、選挙戦のさまざまなとりくみをつうじて痛感されたことでありました。

 この点にかかわって、全国からよせられた声のなかに、「中央への数字での報告が多すぎる」「電話指導が多すぎる」という意見があります。これは大胆で抜本的な改善をはかりたいと思います。中央の指導・援助の姿勢としても、現場に足をはこび、苦楽をともにして、事態の打開をはかり、その経験に中央自身も学ぶという活動方法をしっかり定着させるようにしたいと考えます。

 以上の教訓もふまえ、財界主導の保守「二大政党制」づくりを草の根から打ち破る、強大な党の建設に、新たな意気ごみをもってのぞもうではありませんか。

六、参議院選挙の方針、党大会にむけた二つの任務について

 報告の最後に、今後の方針について、参議院選挙と、党大会にむけた二つの任務の問題について報告いたします。

参議院選挙の方針と目標について

 参議院選挙は、七カ月後にせまっており、総選挙の教訓を全面的に生かしたたたかいが必要です。

 参議院選挙は、増税と改憲の道をすすむ保守「二大政党制」づくりを許すのか、それともそれに対抗する革新・民主の立場にたつ日本共産党をのばすのか−−これが対抗軸となってたたかわれることになるでしょう。保守「二大政党制」の道には、行き詰まった自民党政治を打開する力も展望もありません。財界主導の悪政おしつけの野望を正面から打ち破り、自民党政治の根本的改革をめざす、日本共産党の役割と責任がいまほど重大なときはありません。選挙勝利に必要なとりくみを、ただちに開始しなければなりません。

 参議院選挙の方針については、十一月二十二日の都道府県委員長会議で、比例代表選挙についての新しい方針を提起いたしました。

 その中心点は、第一に、非拘束式の比例代表選挙の投票の訴えは、「政党名または候補者名の投票をお願いする」という方針にあらため、自由闊達(かったつ)に党への支持を広げることにするということであります。総選挙をみましても、有権者が政党そのものを選択する選挙の様相が、これまでになく強まっています。保守「二大政党制」か、日本共産党か−−二つの流れの対抗のなかで、日本共産党の役割と値打ちをおおいに語る政党選択を前面におしだしてこそ、勝利への道が開かれます。

 第二に、総選挙での到達点をリアルに直視し、それを土台に着実に前進をはかる方針をとるということであります。そのために地域割りをもつ候補者を五人にしぼり、五議席を比例代表選挙での「絶対確保議席」として、全党の一致結束した力で五人の勝利を必ずかちとるようにします。これ自体が、総選挙でえた得票を大幅にふやす大奮闘があってはじめて可能になる攻勢的な目標であります。

 以上を中心点とする新しい方針は、この中央委員会総会を待たずに、一刻も早く全党に徹底すべき方針であったので、常任幹部会の責任で緊急の都道府県委員長会議を開き、その会議での報告で提起しました。その会議でも、その後の全国のうけとめや討論でも、この方針は全体として歓迎され、緊張感と責任感をもってうけとめられています。都道府県委員長会議への報告を、中央委員会総会としても確認し、この新しい方針のもとに参議院選挙をたたかうことを、提案するものであります。

 あわせて、これまで候補者として奮闘されてきたわけですが、今回の方針で候補者の任務を解くことになった四名のみなさん−−岩佐恵美参議院議員、池田幹幸参議院議員、小泉親司参議院議員、松竹伸幸安保外交部長の候補者としての活動に、中央委員会総会としても、心からの敬意と感謝をのべるものであります。

 選挙区選挙での七つの現職区の勝利のために、わが党のもてるあらゆる力を結集し、発揮するたたかいを展開します。広い有権者のなかで、要求にこたえる活動でも、宣伝活動でも、組織活動でも、これまでのどんな選挙もうわまわる量と質のとりくみを展開し、どの分野でも他党にうちかつ気概でのたたかいをすすめ、必ず議席をまもりぬくことを目標にたたかいます。このたたかいでも、政党選択を前面におしだし、日本共産党そのものへの支持を得るとりくみを大きく前進させることが、勝利の土台となります。その土台のうえに、それぞれの候補者の実績と魅力をおおいにおしだし、勝利をめざして全力をあげるものであります。

 参議院選挙における得票目標をどうするか。大会決定では、得票目標について、「その選挙でかならず責任をもって達成すべき目標を、それぞれの選挙の性格や、それまでの到達点をふまえて決定する」としています。この立場で、総選挙での到達点、および比例代表での五議席の絶対確保、選挙区選挙での勝利などの目標にてらして、都道府県委員会、地区委員会、支部が、得票目標を決めてとりくむようにします。そのさい「過去最高の峰をこえる」ことを一律の基準にはせず、現実的かつ積極的な目標をきめてとりくむようにします。比例代表選挙で五議席を確保するためには、得票率で全国的に10%以上が必要となりますが、これは、得票目標を決めるさいに一つの目安となる数字であります。

党大会の成功へ−−全党討論と「党員・読者拡大の大運動」の前進を

 つぎに党大会にむけたとりくみについてのべます。歴史的な党大会まで一カ月あまりとなりました。大会にむけた二つの任務をやりきり、党大会を党の政治的・組織的前進と高揚のなかでむかえ、大きな成功をかちとるために力をつくしたいと思います。

 まず第一の任務は、綱領改定案と大会決議案の全党討論をすすめ、討論によってこれを練り上げる仕事をやりぬくことです。その前提として、すべての党員に二つの議案をとどけきり、歴史的な大会にむけた討論に参加することを最後まで追求します。議案の「届け」の現状は、綱領改定案で70・6%、大会決議案で50・9%です。この「届け」を絶対に中途半端にせず、文字どおり最後の一人まで届けきり、それと結びつけて大会にむけた支部総会を成功させるために、力をつくします。

 なお、大会決議案の「第八章 総選挙、参議院選挙での新たな躍進をめざして」の部分については、解散・総選挙の経過とたたかいの経験、その総括をふまえて、書きあらためることになります。十中総の報告が採択されれば、その内容を大会時点で補強・修正する大会決議案に反映させることにしたいと考えます。

 第二の任務は、「党員・読者拡大の大運動」の成功のために力をつくすということであります。総選挙という激動をはさんだ運動で、全党の努力と奮闘がありましたが、党員拡大も読者拡大も前進の軌道にのせるにはいたっていません。ただ、そのなかでも、総選挙にむかう重要な期間であった七月、八月、九月に読者拡大で連続的な前進をかちとるという貴重な成果もありました。

 大会までの残る一カ月間で、イラク派兵反対のたたかいをはじめ公約と要求実現のとりくみをすすめるとともに、総選挙で協力していただいた後援会員、支持者のすべてのみなさんに、協力へのお礼をのべつつ、購読や入党の訴えをおこなうようにしたいと思います。選挙後、選挙のなかでの党の訴えに共鳴して、また選挙結果もみて、「もっと共産党に大きくなってほしい」「この党の一員としてがんばりたい」という積極的な動きも、全国各地で少なからず生まれています。これらの条件もくみつくして、党勢拡大での前進のために力をつくそうではありませんか。

 大会にむけた二つの任務とともに、参議院選挙勝利をめざす活動をただちに開始することがもとめられています。とくに、参議院比例代表選挙の新しい方針を、全国二百七十万人の後援会員、支持者のみなさんのすべてに、「後援会ニュース」もつかってつたえきり、支援と協力をお願いする仕事を、一刻も早くやりきるようにしたい。この仕事からスタートを切るようにしたいと思います。

 この時期は、財政活動も重要となる時期であり、選挙戦の後だけになおさら全党的な努力が必要となっています。この分野の事態の打開というのは、党費、機関紙誌代、募金、節約という財政四原則にたった努力をつらぬく、これが大原則です。草の根の力に依拠して、この分野でも全党のとりくみで事態の打開をはかりたいと思います。

 わが党は、歴史で試されたたしかな政治路線をもっています。草の根で国民と結びついた力をもっています。残念な後退のなかからも、科学の党にふさわしく、確信とすべきは確信とし、弱点は勇気をもって直視してつぎの教訓とし、力をあわせて奮闘するならば、新たな前進への道をきりひらくことは、必ずできます。

 同志のみなさん、国民の期待にこたえ、党勢の新たな前進で新年をむかえ、党大会をむかえるために全力をあげようではありませんか。七カ月後にせまった参議院選挙で必ず勝利者となるために、ただちにとりくみを開始しようではありませんか。以上をもって幹部会報告を終わります。


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp