2003年12月6日(土)「しんぶん赤旗」
農水省は先月末、当面の国産米の生産量や備蓄などの目標を示す「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」を正式に決定しました。これは、今年六月に国会で与党三党の賛成多数で可決・成立した「改正」食糧法などに基づくものです。その問題点をみました。(今田真人記者)
今年産(二〇〇三年産)の国産米の作況指数(平年作を一〇〇とする指数)は、冷夏などの影響で九〇となり(十月十五日時点の農水省の見込み)、十年ぶりの大不作になりました。
今回の「基本指針」に盛り込まれた「二〇〇三年〜〇五年米穀年度の需給見通し」(表)によると、この作況指数に基づいて同省が計算した主食用の〇三年産米生産量は、七百六十三万トン程度になります。
これに対して、今年十月末時点の政府備蓄米(持越在庫量)は、超古米を中心に百三十一万トンにすぎません。
このため、来年産(〇四年産)の収穫米が出回る前の端境期には、政府備蓄米は八十五万トン(〇四年十月末持越在庫量)となり、「改正」食糧法に基づき同省が引き下げを決めた備蓄目標百万トン(以前は百五十万トン)すら下回る見込みです。
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ところが、農水省は今回の「基本指針」で、来年産(〇四年産)のコメ生産量の目標を八百五十七万トンと決定しました。これは、翌年の政府備蓄米(〇五年十月末持ち越し在庫量)も同じく八十五万トンとなる極めて低い生産目標です。
この備蓄水準は、来年産米(〇四年産米)が今年と同程度の不作になれば、たちまち底をつく危険な水準です。
この極めて低い生産目標までに国産米の生産を抑制するため、同省は「改正」食糧法に基づき、これまでの減反面積の割り当て方法から、生産目標数量の割り当て方法に変更し、低い生産目標を各都道府県に配分しました(先月二十八日付)。この生産数量の割り当て方法のもとでは、減反面積の割り当て以上に規制が厳しくなることが予想されます。
また、生産目標八百五十七万トンは、従来の減反面積に換算すると、〇三年産と同じ百六万ヘクタールに相当します。この百六万ヘクタールという水準は、一九七一年以降実施されてきた政府の減反対策(生産調整対策)の歴史の中でも最大規模のものです。
ではなぜ、小泉内閣・農水省が、今年の大不作を経験しながら、国産米の安定的な生産拡大体制にすべきだという教訓を無視し、このような過去最大の国産米生産の抑制に走ろうとするのでしょうか。
それは、日本の多国籍企業を中核とする財界の意向を受け、「農業鎖国はできない」と放言する首相と、そのもとでの自民・公明政治が、コメをはじめとする農産物の輸入依存を当然視しているからです。
今回の「基本指針」では、コメ輸入の方針の記述は極力ぼかされています。しかし、〇四米穀年度のもち米の安定供給についての個所では、「今後も、需給動向等を見極め、必要に応じて機動的なミニマム・アクセス輸入(コメ輸入)を行う」と明記しています。
小泉内閣の亡国的な農政の抜本的転換が求められています。