日本共産党

2003年12月6日(土)「しんぶん赤旗」

足利銀行の破たん、一時国有化

これが小泉流か

栃木県経済に激震


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足利銀行本店=栃木・宇都宮市

 栃木県内融資の5割を占め「県経済の心臓」ともいえる足利銀行(本店=宇都宮市)の破たん認定と一時国有化。県内経済に激震が走りました。「融資は続けてもらえるのか」「不良債権と認定されて切り捨てられないか」――不安と戸惑いが渦巻いています。北関東総局・山本眞直記者 栃木県・団原敬記者

温泉観光地に金融不安

 「寝耳に水でした」。八木澤昭雄・藤原町長は足銀破たんへの驚きと不安を口にしました。

 藤原町は、鬼怒川・川治温泉をかかえ、百軒を超える旅館・ホテルなどの宿泊施設が並び、年間二百四十万人もの観光客が訪れる全国第三位の温泉観光地。多くが足銀をメーンバンクとしてバブル期に大型・近代化してきただけに足銀の破たんによる融資の継続など金融不安は深刻です。

 旅館・ホテル業者の債務は数百億円にのぼるといわれています。「(金融庁や新経営陣に)不良債権だ、と血も涙もないやりかたをされたらたまらない」(町幹部)と、整理回収機構(RCC)への町ぐるみ売却という最悪の事態を危ぐする声もあがっています。

 「足銀にも経営見通しの甘さなど問題はある。しかし、国のやり方はあまりにひどい。これが小泉流の改革か」と、老舗温泉旅館の館主(85)は憤慨します。

 「債務の大半はバブル期に銀行や大手旅行業者に、大型化しろ、豪華にしろとあおられた結果です。小泉首相は景気は上向きと言うが、それはリストラで利益をあげている大企業のこと。われわれは必死になって債務返済に努力し、冬の閑散期を前にどう年末をつなぐか必死です。客がいようといまいと非常灯や全館暖房をとめられないし、ヒマだからと従業員も整理できないんです」

 藤原町観光課の作道今朝夫課長は「町の就業人口の八割が観光などのサービス産業で、町の税収の大半を支えているんです」と基幹産業としての観光産業を強調。八木澤町長は「鬼怒川温泉も日光の世界遺産登録を機に、観光客もやっと伸び始めています。国が足銀破たんという最悪の方法をとっただけにきびしいが、なんとしても地域が安定していける金融政策を国に要請したい」と話します。


銀行株は紙くずに 消えた老後の蓄え、生活資金

 足利銀行の融資見合わせによって倒産した業者もすでにいます。社員十八人のある印刷会社は、不景気による仕事の減少のため、給料の支払いを足銀の融資などでまかなってきましたが、融資を断たれて先月末倒産しました。

 一時国有化で足利銀行株は国に強制取得され、株主にとっては紙くずになってしまいました。一九九八、九九年と二回にわたる国の公的資金注入に呼応した足銀の増資要請に応じ、老後の生活資金を株購入にあてた人たちの苦悩は深刻です。

 亡くなった夫がためていた五百万円の現金を定期預金にしようと足利銀行に相談したところ、足銀株を勧められて全額株購入にあてた女性(69)は肩を落としました。「定期預金よりも、株の方が率が良いからと行員にすすめられました。老後の蓄えにしていたのに。これからの生活に希望がなくなった」

 電気工事会社会長の館野貴志男さん(65)は、「足銀を助けてくれ」と支店長に頼まれ、生活資金の蓄えで五百万円の優先株を購入しました。「サギと同じだ」と足銀に抗議に行くと、行員は「すみません」を繰り返すだけでした。「竹中平蔵金融担当相は何を考えているか分からない。国民や足銀を救う気があるのか」と、怒りの矛先を国に向けます。

 株問題は自治体もゆるがしています。県と県内十二市がこれまでに足銀の増資要請に応じて投入した税金の総額は十億二千万円。うち県は六億円、宇都宮市が二億円。同じく紙くずになりました。各首長は「説明責任を果たしていない」と国の強引な破たん処理に怒りの声をあげています。


日本共産党県委が対策委を設置 大門参院議員ら現地調査

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足銀問題で県商工会議所連合会で懇談する大門参院議員(左から2人目)と塩川衆院議員(同右)=3日、宇都宮市

 日本共産党県委員会は「足利銀行破綻(はたん)問題対策委員会」(野村せつ子本部長)を一日に設置。二日に福田昭夫県知事にたいし中小企業への融資枠拡大など地域経済への影響を食い止めるための緊急対策を申し入れました。三日には大門みきし参院議員、塩川鉄也衆院議員らが現地調査に入り、県や足銀本店、県商工会議所連合会の幹部や業者と懇談しました。このなかで、あしぎんフィナンシャルグループの田村秀一常務取締役は、「監査法人から債務超過にならないとの感触を得ていたが、先月二十七日、突然『ダメ』との回答があった。業務収益は順調になってきていたのに、時間を与えてほしかった」と破たん認定への不満をもらしました。



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