日本共産党

2003年12月2日(火)「しんぶん赤旗」

自衛隊のイラク派兵

テロを呼び込み、復興に障害もたらす


 イラクでの日本人外交官殺害事件について、小泉純一郎首相は「どんなテロにも屈しない」と述べ、自衛隊派兵の方針に変わりがないことを強調しています。いかなる勢力によるものであれ、テロという蛮行が許されないのは当然ですが、自衛隊の派兵はテロをいっそう呼び込み、イラクの再建にも新たな障害をもたらすものです。

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広がる占領への怒り

 無法な侵略戦争に基づく占領支配が長期化する中、米英軍に対するイラク国民の見方は大きく変わっています。

 米国務省の委託で、バグダッドにある独立系調査機関(イラク調査戦略研究センター)が実施した世論調査(十月二十三日公表)によると、米英主導の連合軍を「占領軍」とみなすイラク人は66・6%にのぼり、「解放軍」とみなす14・8%を大きく上回っています。イラク戦争直後の六月の調査で、「占領軍」とみなすが45・9%、「解放軍」とみなすが42・8%だったことと比べると様変わりしています。

 イラクでテロが拡大し、治安が急速に悪化している背景には、占領支配に対する国民の不満や怒り、憎しみが大きく広がっていることがあります。米英軍などへの攻撃が、無法な占領に対する「抵抗」という大義を持ち、国民の支持を広げているのです。

 米紙フィラデルフィア・インクワイアー十一月十二日付によると、イラク情勢に関する米中央情報局(CIA)の秘密報告は、「反乱者たちを支援するイラク人の数が増大している」と指摘。「(米軍による)軍事作戦のエスカレーションは、民間人の犠牲をいっそう引き起こすであろうし、より多くのイラク人を反乱の側に追いやることになろう」と警告しています。

 イスラム世界の専門家は「自衛隊がイラクに派遣されれば、それは『占領軍』の一部とみなされ、確実に攻撃対象となる」(エジプトのアハラム戦略研究所のディーア・ラシュワン研究員、「朝日」十一月二十日付)と指摘しています。

占領続けば、泥沼化

 川口順子外相は今回の事件を受け、自衛隊の派兵問題に関連し、「イラクの復興支援に積極的に取り組むというわが国の基本方針が揺らぐことはない」と強調しています。

 しかし、米英軍などへの攻撃の激化、それへの掃討作戦の強化・拡大、国連や国際赤十字など攻撃対象の無差別化という悪循環のもと、国際社会による復興支援は大きな困難に直面しています。

 バグダッドの国連現地事務所が攻撃され、国連外国人職員が全員撤退したことなどが、そのことを端的に示しています。アナン国連事務総長は「国連は(米英による)占領状態が続く限り、イラクで政治的役割が果たせない」(十月二日)と強調しています。

 国連やNGO(非政府組織)による復興支援の活動であっても、米英軍による占領支配の枠組みが続くもとでは、それに協力するものとして攻撃される事態になっているのです。

悪循環断つためには

 米英軍などへの攻撃がイラク国民に支持され、いっそうテロの土壌を拡大する―。この悪循環を断つためには何をすればいいのか。

 フランスのドビルパン外相はイラクの現状について、「テロリストネットワークが増加していることと同時に、…これらがイスラム愛国主義勢力と結びついている」と指摘。「これら暴力の要因であるテロリストグループと、イラクでの占領体制をなくすことを望んでいるすべての人たちとの関係を断つための政治的アプローチがあるべきだ」と述べ、「イラクの主権が出発点であるべきだ」と強調しています(十一月十三日)。

 政府がなすべきことは、自衛隊派兵計画をただちにやめ、米英軍の占領支配を国連中心の復興支援の枠組みに変え、イラク国民に主権を戻すために最大限の努力を払うことです。


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