2003年11月30日(日)「しんぶん赤旗」
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解説 小泉内閣は二十九日、地方銀行大手の足利銀行を傘下に置くあしぎんフィナンシャルグループ(FG)を債務超過と認定し、一時国有化による税金投入などによる処理を決めました。地元の自治体や中小企業など、地域経済への深刻な打撃も予想されます。
こうした事態に陥った最大の要因には、小泉内閣による不良債権処理の加速などの「構造改革」路線が日本経済、とくに地域経済を担う中小企業の経営を悪化させ、不況を長期化・深刻化したことがあります。
足利銀行は、中小企業等貸出比率が今年三月末で79・89%(決算資料)。貸出先の地域の中小企業の経営の悪化は、銀行の不良債権の増加となります。その処理をする銀行の損失を増やし、債務超過にさせたのです。
また、小泉内閣の竹中平蔵金融相がいわゆる「竹中プラン」(昨年十月三十日発表、金融庁の「金融再生プログラム」)をつくり、日本の金融の実態を無視して、アメリカ仕込みの「資産査定」方式を銀行に押しつけ、必要以上に銀行の自己資本を小さく評価するようにしたこともあります。
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一方、あしぎんFGの独自要因としては、傘下の足利銀行によるバブル期の乱脈経営のツケがあります。自己資本不足を過去二回の国の公的資金注入や、地元の自治体の公的資金注入、地元の中小企業・県民の出資など、国民の大切な資金で支えてきました。
一時国有化は、自己資本に注入されてきたこれらの資金を無価値にし、国・自治体の損失(税金投入)や中小企業などの損失に直結します。
同時に、あしぎんFGの最大株主が日本最大の大手銀行の一つ、東京三菱銀行であるということも注目すべき事実です。あしぎんFGの債務超過は、東京三菱がその経済力にふさわしい増資に応じれば防ぐことができました。その意味では、一時国有化は、大手銀行など大株主の責任を事実上、免罪することにもなっています。
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これ以上の事態悪化を防ぐためにも、その最大の要因になっている小泉内閣の金融政策の抜本的転換がますます必要になっています。また、大打撃を受ける地元の中小企業・県民などへのいきとどいた対策も急務です。 (今田真人記者)
「栃木県はどうなってしまうのか」―。足利銀行(宇都宮市)の破たん処理に対し、県経済界は強い憂慮を隠せずにいます。県内の預金シェアが約四割、融資シェアが五割近くに及ぶ同行は、特に中小企業への融資比率が高いため、破たん処理で県経済に激震が走るのは避けられません。
県内の中小企業数は約四万五千社に上り、そのうち約六割が同行と何らかの形で取引があるとされ、「足銀と付き合いのない会社を探す方が難しい」(信用調査会社)というほどです。
今後、同行が国有化され、融資の査定が厳格化されれば、資金繰りに窮する中小・零細企業が続出する事態も懸念されます。県内に本社を持つ大手小売業者は「県経済に与える影響はあまりに大きい」と指摘します。
これに対し栃木県は「何があっても万全の態勢を取る」として、二十九日も早朝から県幹部らが集まって制度融資の拡充策などを協議。ただ、「最も恐れる事態が起きてしまった」というある幹部は「国は地方経済のことをどう考えているのか」と憤りの表情を浮かべていました。
預金保険法一○二条
首相が「国や特定地域の信用秩序維持に極めて重大な支障が生ずる恐れがある」と判断した場合、金融機関に公的資金を注入できることを定めた条項。注入の方法には、(1)自己資本が不足した金融機関への資本増強(2)ペイオフ(預金の払戻保証額を元本一千万円とその利子までとする措置)を超える資金供与を行う特別資金援助制度(3)国が株式を全額取得する特別危機管理制度―の三種類があります。今年五月のりそな銀行への資金注入は(1)に基づく措置。それ以外は破たん状態か債務超過の金融機関に適用されます。注入の決定には金融危機対応会議の開催が必要。この会議は首相が議長を務め、官房長官、金融担当相、財務相、金融庁長官、日銀総裁の六人で構成されます。