日本共産党

2003年11月29日(土)「しんぶん赤旗」

道路 借金 延々

公団民営化案の行く先


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 国土交通省が二十八日に示した道路関係四公団民営化の枠組みは、債務返済より建設を優先させる姿勢を鮮明にしました。ムダな道路を造らず、借金のツケを国民に回さないという道路公団改革の原点が問われています。(深山直人記者)

料金収入でムダな建設続行

 焦点となっていた道路建設について国交省は、新会社の自主判断に任せるという民営化推進委員会の案(図右端)とともに、保有・債務返済機構が新会社に建設を委託し、機構が料金収入も使って間接的に資金負担する案(図その2)と、料金収入を還流させて直接負担する案(図その1)の二案を示しました。

 保有機構は国交省のいわば下部組織です。ここが建設するかどうかを決め、建設資金の面倒まで見ることになれば、国が施工命令を出し、財政投融資から資金を出している今の道路公団方式と大差ありません。

 これでは、ムダな道路建設に歯止めがかかる保障はありません。

 しかし、民営化委の案も「建設に歯止め」などといえるのかといえばそうではありません。猪瀬直樹委員が「道路は造らないとはいっていない。建設方法を考えてくれということだ」と繰り返すように、今後も高速道路を造りつづけるという前提にたって新会社が造る道路と造れない道路を分けるように求めたものにすぎません。

 それでも国交省は、高速道路の整備計画九千三百四十二キロを完成させるには不十分だとして、より建設をすすめやすくする案を出してきたのです。

 この背景には、高速道路整備計画を見直しもせず、約十六兆円もかかる残りの二千百キロを何が何でも建設しようとする小泉内閣や自民・公明の与党の姿勢があります。自民・安倍幹事長は「すでに造ると約束している」と再三、表明しています。公明党も先の総選挙公約で「スピードを落とさないで整備する」と全線完成を掲げました。

 日本経団連も二〇〇二年に出した意見書で、高速道路は続けて、赤字路線は税金を使ってでも造るよう求めていました。

 これに応えて小泉内閣は先の通常国会で、赤字路線を税金で建設する法律をつくりました。すでに三兆円の税金投入を決めています。ムダな道路建設にストップはかかりません。

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国民に40兆円ツケ回す危険

 四十兆円の借金はどうなるのでしょうか。

 四十兆円にのぼる巨額債務は、新会社が保有機構に払うリース料から返済しますが、国交省は、その返済期間を五十年に延長する案を提案しました。

 もともと返済期間は一昨年末の閣議決定で、三十─四十年だったのを五十年に延長。それを民営化委では四十年を上限とすることが提案されました。それを五十年まで認めるのは、建設を続けるため債務の増大に対処するためです。

 しかし、ムダな計画に歯止めをかけないままでは、結局は国民負担にされる危険性は高くなります。国鉄からJRになったさい、清算事業団に引き継がれた二十五兆円の債務は減るどころか二十八兆円にふくれあがり、その大半は結局、国民につけ回しされました。

利権構造に一切メス入れず

 藤井前総裁の「イニシャル発言」に見られるゼネコンと政治家、官僚による癒着・利権構造の改革も焦点です。公団のファミリー企業が公団の仕事を独占している問題など、こうした癒着関係を断つ施策は何ひとつ打ち出されていません。

 石原国交相は自らが言い出した藤井氏の「疑惑発言」を撤回、解明にフタをする姿勢です。

 自民党とその国会議員は道路公団の受注企業から多額の献金を受けています。道路公団とも持ちつ持たれつの関係で、自民、公明など五年間で三十四人の議員が「酒食会議接待」を受けていました。


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