日本共産党

2003年11月28日(金)「しんぶん赤旗」

国会論戦に「マニフェスト選挙」の影


 総選挙後初の国会論戦となった二十五、二十六両日の衆参予算委員会。「二大政党政治がスタートしたわけで、今後の国会論戦はいままでの『責任を持った与党』と『批判をする野党』というものとは一味違うものになっていかなきゃいけない」(民主・江田五月参院議員)という声が出るなど、財界が仕掛けた「マニフェスト(政権公約)」選挙が影を落としました。実際の論戦はどうだったのでしょうか。


無批判

自民の改憲発言に

「語らない民主」

 衆院予算委員会の冒頭、自民党の安倍晋三幹事長から飛び出したのが、憲法改悪要求でした。同党は二〇〇五年十一月までの改憲草案作成を総選挙公約に掲げたことから「選挙でお約束をしている」として、「憲法を改正すべきだ」と三つの理由まであげて改憲を求めました。

 小泉首相は「自民党単独で憲法改正ができるものではない。各方面、各政党の意見を聞きながらよりよい憲法をつくっていくべきではないか」とのべ、現職首相として「一九五六年の鳩山一郎首相以来」(国会関係者)という踏み込んだ改憲発言をしました。総選挙で野党第一党の民主党が「創憲」と称して憲法改悪を公約したのを意識しての答弁です。

 実際、民主党からは自民党の重大な改憲質問への批判は一言もありませんでした。「三時間の持ち時間がありながら、憲法問題に触れた質問はまったくなし」「憲法を語らぬ民主党」(「東京」二十六日付)と指摘されました。


横並び

年金の負担増・給付減

国民犠牲は同じ

 論戦で焦点の一つになったのが年金問題。総選挙で自民、民主両党は年金や社会保障の財源として消費税率引き上げを公約し、保険料負担は増やして給付を減らす以外の選択肢を示しませんでした。

 参院予算委でも、与党の公明党議員は「私どもも(給付水準は現役の所得の)50%下限、(保険料は年収の)20%、民主党、自民党も大体同じ数字が出ている」とのべたように、「負担増・給付減」の狭い枠内で年金制度を考える点では同じです。

 逆に溝が浮き彫りになったのは、自民、公明の与党内の食い違いです。

 谷垣禎一財務相は公明党議員に「(給付水準)50%を非常に意味があるとおっしゃったが、違う感じを持っている」「負担できる(保険料)水準に合わせて給付水準を設計すべきではないか、そこにずれがある」と答弁。中川昭一経産相は「企業なり勤労者の負担感があまりにも多くなるマイナス面も配慮すべきだ」と、企業の社会保険料負担を抑制したい財界の意向を代弁しました。

 基礎年金の国庫負担引き上げの財源をめぐっても、定率減税廃止を充てる公明党案について谷垣財務相は「勤労者負担の問題と結びついてくるので、国民的な議論をやっていかなきゃいけない」(衆院予算委)と異論を唱えました。


無基準

イラク派兵固執する首相

米への顔向けだけ

 政府・与党の方針の総破たんを示したのが、イラクへの自衛隊派兵問題でした。

 小泉首相は「状況を見極めて判断する」「現在の状況においても自衛隊の派遣は無理だと断定する状況にない」(二十五日、衆院予算委)と派兵に固執する姿勢を崩しませんでした。

 しかし、「状況を見極める」判断基準を示せと参院予算委員会(二十六日)で迫られると、「状況というのは防衛庁長官からも聞いているし、調査団からも伺う」としどろもどろ。石破茂防衛庁長官は「法律に定められた要件を満たすことができるかどうかだ」というのが精いっぱいでした。

 ところが、「法律の要件」である“派遣は「非戦闘地域」に限る”ことについては、首相自身が成り立たなくなっていることを認めたのです。

 「ある部隊が派遣されると、これを標的にしようというテロリストの動きが出てくる」とのべ、石破長官は「非戦闘地域、それは危なくない地域という意味ではない」と弁明しました。

 自民党の安倍晋三幹事長は、「われわれは決して、対米支援、対米協力のために自衛隊を派遣しようとしているわけではない」とのべましたが、首相自身の言葉からは、アメリカへの顔向けだけが、派兵の判断基準であることが浮き彫りとなりました。


不誠実

政権を取れなかったら

公約の原点どこに

 論戦では「二大政党の一方の柱という立場になった」(民主党・菅代表)など、「二大政党」の言葉が飛び交い、「マニフェスト(政権公約)」選挙を「日本の民主主義が新たな段階に入った」(江田五月氏)と自賛しました。

 しかし、自民党からは参院予算委員会で、「われわれの方は、国民のみなさんから契約をいただいたから、契約を履行する義務がある。民主党の方は、(政権につかなかったので)チャラというわけにはいかないと思うが、これは一体どうなるのか」「途中で『閣僚』の発表もありましたが、あの方々はずっとシャドーキャビネット(影の内閣)の一員としてやられるんだろうか」(林芳正議員)などと追及されました。

 民主党の側は、岡田克也幹事長が「政権を取れなかったという現実があるので、次に政権を取るときまでにバージョンアップしてもう一度世に問う」(二十一日)とのべるだけでした。

 「政権公約」が「政権をとったときの国民との契約」という建前をとったために、与党であろうと野党であろうと公約実現に努力するという原点が薄れた格好です。


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp