日本共産党

2003年11月25日(火)「しんぶん赤旗」

身勝手要求並べ“政策買収”

成り立たぬ合理化論

日本経団連が献金促進


 日本経団連は来年から再開する企業献金への関与にあたって、会員企業ごとの献金額の目安(五十―一千万円以上)を設定し、献金額を増大させる方針です。

献金奉加帳か

 経団連側は献金を「企業の自主的判断」といっていますが、これだけ出してほしいという金額を示すのでは、いわば献金の“奉加帳”です。かりに経団連への会費収入と同水準とすれば、献金総額の目標は四十億円程度。百億円にもなると予想する向きもあります。

 この献金の基準となるのが、九月に発表した十項目の「優先政策事項」です。法人税引き下げや消費税率引き上げ、大企業の新たなもうけ口を確保する規制緩和など、大企業の身勝手な要求ばかりを並べたもの。それにもとづき、政党をランク付けして献金を配分する考えです。

 これをまとめた宮原賢次副会長(住友商事会長)はこの十項目について「各政党がどのように取り組んでいるか…年初には評価結果をまとめる予定」(「毎日」十六日付)としています。

 経団連はこうした企業献金促進策について、“民主主義のコスト”を民間が主体的に担うべきだという理屈で正当化しています。「優先政策事項」を発表した声明では、企業献金を「『良き企業市民』としての社会的責任」(九月二十五日)と位置付けています。

 献金促進策は、「社会的責任」どころか、財界が求める政策の実現を迫る露骨な“政治買収”です。営利追求を第一とする企業が、カネの力で政治をゆがめることはあってはならないことです。

 ゼネコン準大手の熊谷組による自民党への献金の違法性が争われた事件で、福井地裁判決(二月十二日)は、企業や業界団体の献金で政党の政策が左右されれば、「選挙における国民の選択によってその活動に信任を得るという選挙制度の意義を否定」することになると指摘。「政治資金の寄附の規模如何によっては、国民の有する選挙権ないし参政権を実質的に侵害するおそれがある」と断罪しています。

責任いうなら

 旧経団連が九三年に自民党への献金あっせんを廃止した時にも、「民主政治は、国民全ての参加によって成り立つ」ことを認め、個人献金が望ましいとしていました。財界が多額の献金で財界に有利なように政治を誘導すれば、悪政を正したいという有権者の意思はないがしろにされます。

 「社会的責任」というなら、違法なサービス残業根絶や下請けいじめをやめることなど、「企業市民」としてやるべきことがあるはずです。逆に経団連は法人税減税や社会保障負担の軽減を要求し、本来果たすべき企業の「社会的責任」を放棄しようとしています。

 「毎日」十六日付で経団連の宮原副会長は、献金対象を政党本部に限るため、「情報の公開度が極めて高く、かつ個別企業への利益誘導とは無縁」とのべました。

贈賄か背任か

 しかし「透明性」を持たせたからといって、企業献金の持つ重大なわいろ性は免罪されません。企業・団体献金が何らかの利得に結びつけば「わいろ」となり、そうでなければ会社側に損失を与える「背任」です。

 財界人自身が「企業献金の元来の性格からいって、カネを出す方は背任と汚職のはざまみたいなところでウンウンうなっているのが現状だ」(諸井虔・秩父セメント会長=当時、「朝日」一九九〇年四月三日付)と告白しています。

 公共事業をゆがめたゼネコン疑惑や高い薬価維持を狙う製薬業界など、個別企業の利害にとどまらず業界ぐるみで見返りを求める政党本部向け献金は数多くあります。政治とカネの問題は個別企業や政治家個人に限られるわけではありません。

 経団連が献金への関与を「社会的責任」や「透明性を高める」と美化するのは、政策買収の実態を覆い隠すものでしかありません。(古荘智子記者)


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