日本共産党

2003年11月23日(日)「しんぶん赤旗」

先制攻撃戦略をさらに具体化

前方基地の攻撃力を強化

ブッシュ政権2度目の国防報告


 二十一日に発表された米国防報告は、ブッシュ政権としては二度目のものです。この間のイラク戦争の破たんへの反省もなく、昨年九月発表の「米国家安全保障戦略」で集大成された先制攻撃戦略を、さらに具体化する内容となっています。

 報告は、アフガニスタンとイラクでの軍事作戦の教訓として▽スピード▽情報▽精密さ▽統合作戦▽特殊作戦部隊−の重要性を強調しています。

 精密さに関しては、イラクで初めて実戦使用された熱圧爆弾ヘルファイア・ミサイルの例を引き、同ミサイルがビルの二階以上を破壊せずに一階を破壊できたと誇示。これら精密兵器をさらに開発、配備する姿勢を示しています。

「はるかに速く、 広範に対応」

 報告は、米軍が当面する課題として、(1)対テロ世界戦争の勝利(2)現在の十年期の後半に直面する脅威への準備(3)二〇一〇年以降に直面する脅威に備えるための米軍再編の継続−という「困難なことを同時に実施する」ことを提示。今日の「対テロ戦争」でとどまるどころか、十年、二十年先の「予期し得ない新たな危険」に対処するとの口実で、米軍をいっそう強化する方針を確認しています。

 報告はその上で、二〇〇四会計年度(二〇〇三年十月−〇四年九月)の優先課題として、(1)対テロ世界戦争の勝利(2)大量破壊兵器拡散への対抗(3)本土安全保障−の三つを提起しています。

 その内容として報告は、「迅速に反応し、侵略者の抑止か速やかな打破のための初期的条件を設定することが、新国防戦略の核心だ」と指摘。そのために、従来のように危機が起きれば時間をかけて大規模兵力を海外展開するのではなく、「現在の、または潜在的な脅威に対称的・非対称的に対応できる戦力、はるかに速く、広範な状況に対応できる戦力」の確立が必要だとしています。

 これを実現するには、「前方展開基地に駐留しているか、潜在的戦域に輪番制で配備される適切な戦力が、適切な場所に適時にいることが極めて重要」だと指摘。それに続けて「テロリストが米国民・米国を傷つけ、敵が米国・同盟国・友好国を大量破壊兵器で威嚇するのを防止するため、先制的に行動すべきだ」と述べています。

 報告はさらに、「前方展開基地に常駐する戦力が、単に『国威発揚する』のでなく、信頼でき反撃能力のある戦闘力を保持する」方策を検討中だと述べています。

 これは、日本などに前方展開されている米軍が今後の先制攻撃戦略の実施に不可欠であり、同戦略遂行のため前方展開部隊の攻撃力をさらに強化するとの、重大な方針表明です。

海兵隊が検討 極超音速輸送機

 報告は、イラク戦争などの教訓に基づき、陸海空軍や特殊部隊が共同して作戦行動する統合作戦の強化を極めて重視しています。

 そのために海軍が次世代空母の設計を開始したことを紹介。また、侵略戦争の先陣を切る海兵隊が、「戦略的能力をもった部隊を地上のどこにでも二時間以内に到達できる、軌道に乗らずに飛行できる極超音速強襲輸送能力(機)」の開発を検討しているとしています。

 こうした新たな軍事能力の開発のため、今後六年間の研究開発費を二〇〇二年会計年度予算比で65%増額するとしています。さらに、統合作戦を現地で指揮する統合作戦本部の常駐化の具体化を二年前にとり始めたと述べています。(坂口明記者)


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