日本共産党

2003年11月13日(木)「しんぶん赤旗」

米国も認めた治安悪化

イラクは戦場

ポーランド兵、デンマーク兵にも犠牲者

それでも小泉内閣は…


 「われわれは反乱に直面しており、これは戦争に極めて近い」―イラクを訪問したアーミテージ米国務副長官は八日、バグダッドで記者会見し、こう述べました。実際、イラクの治安状況は戦場そのものといえるほどに悪化しています。ブッシュ米大統領も十一日、ワシントンでの演説で、米軍への攻撃が激化していることを認めました。

米軍中枢への攻撃

 米英占領軍への攻撃は日に日に激化し、最近は米軍の中枢組織へ攻撃が向けられているのが特徴です。十一日夜には、米軍主体の連合軍司令部の敷地に少なくとも四発のロケット弾が撃ちこまれました。米軍ヘリコプターの撃墜事件も相次ぎ、二日にはバグダッド西方ファルジャで撃墜されたほか、七日にもティクリットで「ブラックホーク」が撃墜されました。

 現在のイラクの事態は、いわゆる「治安維持」はおろか、米軍の占領体制の維持そのものが根底から揺さぶられていることを示しています。

 三月のイラク侵攻開始以来の米兵の死者は、十一日時点で二百六十七人に達しました。ブッシュ米大統領が大規模戦闘の終結を宣言した五月一日以来の死者は百五十三人になりました。

 米英以外の国の兵士も「占領加担者」として攻撃にさらされています。六日にはポーランド人兵士が初めて犠牲になりました。すでに八月にデンマーク軍兵士一人が死亡しているほか、今月二日にはエストニア軍兵士も手投げ弾攻撃を受け負傷したといいます。ポーランド軍が展開するイラク中南部は、自衛隊が派遣されるとみられる南東部のサマワも含まれており、日本にとって人ごとではありません。イラク全土は事実上の戦争状態にあるのです。

 イラク駐留米軍のサンチェス司令官は十一日、戦闘地域と非戦闘地域の区分について「白黒つけるのは難しい」と述べました。暫定行政当局(CPA)のブレマー文民行政官は、急きょワシントンに戻り、同十一日、政権首脳とイラク情勢を再検討したもようです。米当局がイラクへの対応で混迷を深めていることを物語っています。

派兵撤回する国も

 イラクへの派兵を決めた国が、決定を撤回する動きも出ています。十月十六日の国連安保理決議は「多国籍軍の設置」を決めました。しかし決議採択以来、新たに派兵を表明する国がなく、多国籍軍はいまだに立ち上がっていません。

 ブッシュ大統領は十一日の演説で、「イラクでともに任務を果たしている良き友人と同盟国」が三十二カ国もあると誇示しました。しかし派兵兵士数で見ると、千人を超える国は五カ国。三百人以下の国が約二十カ国を占めており、実態は象徴的派兵です。

 これに加え、トルコはいったんイラク派兵を決めたものの、国内世論とイラクからの猛反発を受けて七日、派兵計画を撤回しました。タイも撤兵計画を検討し始めています。ポーランドは十月末に発表された世論調査で「派兵反対」が六割近くにのぼっています。

 米国は韓国に対し、もともと一万人規模の派兵を要請していました。盧武鉉政権は、現在の数百人に加え数千人の追加派兵を行うとしていますが、世論が激しく反発しています。

 米紙ニューヨーク・タイムズ八日付は、トルコの派兵中止を報じた記事で、「ブッシュ政権の努力は完全な失敗に近づいているようだ」と論じました。

 他国の部隊派兵が進まないため、米政権は窮地に追いやられています。ラムズフェルド米国防長官は六日、来年五月までに駐留米軍の規模を十万五千人に縮小し、州兵や予備役兵を動員して現駐留軍と大幅交代させることを明らかにしました。

占領軍の撤退こそ

 小泉内閣はこうした状況のもとでイラクへ自衛隊を派遣しようとしています。十四日からラムズフェルド国防長官が訪日し、小泉内閣に自衛隊の派遣をはじめイラク占領への全面的支援を求めるとみられます。

 しかし米高官も「戦争」状態と認めるイラクに米軍支援の目的で自衛隊を派遣すれば、攻撃対象となるのは明白です。それはポーランド軍やデンマーク軍の例が実証しています。

 アラブ連盟(二十一カ国とパレスチナ自治政府が加盟)のムーサ事務局長は十月二十六日、アラブ諸国から自衛隊派遣へ支持を取り付けるためカイロを訪問した川口順子外相と会談しました。同事務局長は記者会見で「どの国であれ、これ以上の外国軍の派兵は平和構築の手助けとはならない」と強調、主権回復と占領軍の撤退こそが必要だと述べました。

 「多くのイラク人は米国の駐留に不満であり、“解放”がもたらした不安定と危険に悩まされているのだろう」―英BBC放送の記者はイラク人の感情をこう伝えています。日本は米国の占領に加担するのか、それともイラクに主権を回復し占領軍を撤退させるために努力するのかが問われています。(島田峰隆記者)


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