日本共産党

2003年11月13日(木)「しんぶん赤旗」

イラク特措法の建前さえ破たん

“戦地”そのもの

それでも派兵急ぐのか


占領兵の死亡一日3人以上

 小泉・自公政権は、自衛隊のイラク派兵について「年内に派遣するという考え方はしっかり持っている」(福田康夫官房長官)とし、年内派兵を強行しようとしています。しかし、イラク情勢は事実上の戦争状態に逆戻りしています。自衛隊派兵の強行は、“戦闘地域には送らない”というイラク特措法の建前にも反します。戦後初めて自衛隊部隊を“戦地”に送ることになれば、取り返しのつかない事態になります。

 イラクの治安情勢は、急激に悪化しています。統計によると、米英軍など兵士の死者は十一月に入ってすでに、三十八人にのぼります(十一日現在)。一日平均で三・四五人の死者が出ていることになります。

 イラク戦争ただなかの四月でも、米英軍兵士の一日平均の死者数は、二・六三人でした(総数は七十九人)。十一月の死者発生のペースは四月を大きく上回っています。

 政府・与党は「イラクには危険なところもあるけれども、安全なところもたくさんある」(福田官房長官)としています。しかし、ラムズフェルド米国防長官は十日の記者会見で、日本政府が治安情勢を懸念していることについてコメントを求められ、「(イラクの)北部、西部、南部はきわめて安定している」としつつ、「(テロリストやバース党残党が)いつでもどこでも、いかなる攻撃もできないということではない」「(イラクでの活動は)危険な仕事だ」と述べています。

 実際、十二日には、自衛隊の派兵が検討されているイラク南部のサマワからわずか約百キロしか離れていないナシリアで爆弾テロが発生し、イタリア兵など二十三人が死亡しました。英軍が駐留している南部最大の都市・バスラでも、十月末から十一月にかけて爆弾の爆発が相次ぎ、死傷者が出ています。

 これまで現地調査のためイラクを何度も訪れている岡本行夫首相補佐官も、派兵された自衛隊が「攻撃対象となることは論理的に免れない。他の国と同様に狙われる可能性が常にある」(五日)と認めています。“自衛隊は非戦闘地域で活動する”というイラク特措法の建前は破たんしているのです。

「米に気兼ね」政府高官明言

 それでも政府・与党が派兵を強行しようとしているのはなぜでしょうか。政府高官は「米国への気兼ねだ」と明言します。占領支配が破たんに直面し、他国部隊の派兵もいっこうに進まないなか、窮地に追い込まれている米国を気遣って、派兵を強行するというのです。

 与党は、十九日に召集が予定される特別国会の会期を三日間にし、首相指名選挙などだけにとどめる方針を固めています。自衛隊のイラク派兵問題については、審議をいっさいしない意向だといわれています。

 イラク情勢が悪化の一途をたどるなか、国際社会では、戦争の大義のなさが改めて問われ、「各国がイラクから手を引き始めている」(前出の政府高官)状況も生まれています。自衛隊派兵の道理のなさはますます明らかになっており、派兵計画はただちに中止すべきです。

 国会で徹底的に審議することは、国民に対する政府・与党の最低限の責任です。(榎本好孝記者)


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