2003年11月10日(月)「しんぶん赤旗」
市町村合併では、全国で住民投票やアンケートなどで住民の意思を問う動きが広がり、「合併反対」を選択した自治体が相次いでいます。
|
十月二十六日投票の住民投票では、一市五町で「反対」が過半数を占めました(地図参照)。
「中空知四市五町合併」が問題になっている北海道空知管内奈井江町の投票では、小学五年生から高校生(同年代も含む)までの「子ども投票」も実施し、全国から注目されました。結果は、「反対」が一般投票で七割、子ども投票で八割。マスコミも「世代を超えて郷土の未来を考えた自治の実践だった」(北海道新聞)と評価しました。
岡山県の邑久(おく)郡三町合併では、長船(おさふね)町の住民投票で「反対」が54%を占め、三町の合併協議会は十月三十日、来年三月一日とした合併期日の決定を保留しました。
長船町では、日本共産党支部がステッカーもつくり町民に訴えました。新潟県燕市では、日本共産党の市議二人を含む十市議も参加する「『三条との合併』反対に○をつけに行こう会」を結成し運動。投票結果を受け高橋市長が辞職する事態に発展しています。
熊本県七城町の住民意向調査(四日開票、回答率94・4%)でも、反対が54%になりました。
今後も住民投票は、九日の長野県箕輪町、香川県牟礼町、兵庫県南光町などに続き、滋賀県朽木村(二十三日投票)、群馬県大間々町(三十日投票)、鹿児島県与論町(同)、群馬県富士見村(十二月の予定)などで実施。北海道釧路町は全世帯アンケート(十七日締め切り)、秋田県大潟村は投票式アンケート(三十日)に取り組みます。
|
埼玉県の富士見(十万三千人)、上福岡(五万五千人)二市と大井(四万七千人)、三芳(三万六千人)二町の合併の是非を問う住民投票(十月二十六日)で、合併反対が大井町で53%、三芳町で57%を占め、押しつけ合併にノーを突きつけました。二市二町の法定合併協議会はきょう十日に会合を開き、合併協解散について協議します。
二〇〇〇年四月に発足した二市二町法定合併協議会は「県内初の住民発議による設置」をうたいましたが、発議の中心は青年会議所など一部の団体。合併協の構成員も、多くは推進派委員で組織されました。新市建設計画に、まちこわしの「東西横断道路」などが盛り込まれ、開発推進の狙いが明らかになりました。
住民不在の合併にたいして立ち上がった二市二町の住民。「合併に反対する富士見市民協議会」「合併を考えるかみふくおかの会」「大井町合併問題懇談会」「おしつけ合併に反対する三芳町民の会」を結成しました。
四つの住民団体は「おしつけ合併に反対する二市二町共同デスク」をつくり、ビラやシンポジウムなどで、住民への情報提供に努め、役所が遠くなることや各市町独自施策の後退の合併の本質を知らせました。
合併協は「合併すれば十年間で二百億円の節約になる」と宣伝しましたが、「共同デスク」や日本共産党議員団は、その試算のでたらめさを指摘。「二百億円節約」の中心が、一般職員の人件費、つまり総務・企画部門など三百七人の節減効果をうたったもので、これでは三芳町の職員分が削減されることになり、サービス低下は免れないことを明らかにしました。
住民団体と日本共産党は、合併が各市町の住民にとって、マイナスになることを訴えました。三芳町では、地方交付税が不交付団体であることを示し、合併せず自立してやっていけること、公設公営の学童保育や児童館など町独自のすぐれた制度が後退するおそれがあることを宣伝しました。
三芳町の瀬尾勇さん(64)は「合併すれば周辺の三芳はいずれ取り残されます。今後安心して住み続けるために、しっかりした財政で独自のまちづくりをしていくことが必要です」と語ります。
大井町では、二市二町のなかで一番借金が少ないにもかかわらず、合併で一人十万円の借金を負担することになり、借金返済のために住民サービスの低下がもたらされること、町独自に実施しているごみの二十一分別収集がなくなる危険があることを知らせました。
大井町の黒澤由彦さん(35)は「住民に、負担増、サービス低下を押しつける合併はごめんです。住民の顔が見え、自転車でどこにでも行けるこの町の大きさがちょうどいい」と話しています。
広がる運動の前に、追い詰められた合併推進派は「夢だ、希望だ、合併だ」などとスローガンを並べるだけに終始したのにたいし、「まちを守りたい」という住民の声が勝利しました。
(北関東総局 勝又真史記者)
|
市町村合併で、小規模自治体切り捨ての方向が一段と強まろうとしています。地方制度調査会(首相の諮問機関)が十三日に出す最終答申に、「人口一万人未満」の強制合併策が盛り込まれようとしているからです。
「おおむね一万人未満とする」――七日の地方制度調査会専門小委員会は、最終答申案に合併を求める市町村の人口目安を明示することを了承しました。
押し付け合併をすすめる市町村合併特例法は二〇〇五年三月末に期限切れになります。同調査会は、その後の地方自治制度のあり方、「合併促進策」について検討してきました。最終答申には、特例法失効後も残る小規模自治体に、知事が合併を勧告できる制度を盛り込む方向です。それが受けいれられなかった場合は、市町村に合併協議会設置の是非を問う住民投票を提起できる仕組みです。
五月の「中間報告」では、人口目安の明示には賛否両論併記になっていました。それを最終答申に向け明示する素案を示したのが総務省でした。
全国の町村のうち「一万人未満」は実に六割(円グラフ)。人口目安で一律に合併させるなど乱暴な話で、その自治体と住民にとっても死活問題です。全国町村会や全国町村議会議長会は、十月末そろって反対する要請書、意見書を提出(別項)。「合併は…関係市町村の自主的な判断により進められることが何よりも重要」(全国町村会)と訴えていました。
合併ではなく自立した自治体をめざす動きが全国的に出ています。九月下旬には、長野県阿智村で「第二回小さくても輝く自治体フォーラム」が開かれました。全国の百四十七自治体から首長三十七人を含む約六百人が参加。「自治体の選択で多様な自治の姿を選択できるよう求める」とのアピールを採択しました。
地方団体が地方制度調査会に出した要請、意見書のうち、「市町村合併の人口規模目安」問題に関する部分(要旨)は次の通りです。
◇
全国町村会 「合併の目標である人口規模を明示すべきではない。…具体的人口規模の根拠も見出し難く、また、人口は少ないが広い面積を有する町村や島嶼(とうしょ)地域の町村も数多く存在しており、合併にあたっては、人口要件のみでなく、これら自然的・地理的条件やさらに歴史的な経緯、文化・風土等も考慮される必要がある」
全国町村議会議長会 「市町村合併は地方分権の大原則である『自己決定・自己責任の原則』に則り、あくまでも自主的合併であること。…人口規模については、法令上の明記を行うべきではない。人口規模と自治能力には何ら関係がない」