2003年11月10日(月)「しんぶん赤旗」
【ワシントン8日遠藤誠二】広島に原爆を投下した米軍B29爆撃機「エノラ・ゲイ」が十二月、ワシントン郊外にある米スミソニアン博物館で完全復元展示されますが、米国の学者・研究者、作家、平和活動家らが、「原爆被害の実態を知らせる」よう博物館側に要求、原爆投下機展示をめぐる論争が再び活発化しそうです。
四十三年ぶりに完全復元されるエノラ・ゲイは、来月中旬にバージニア州ダレス国際空港脇で開館するスミソニアン航空宇宙博物館別館に展示されます。博物館側は、原爆投下した爆撃機と説明するのみで、それによる犠牲者数など被害については言及しない方針です。米国内の文化人などでつくる「核の歴史と現政策を討議する全国委員会」は五日、原爆による被害を知らせるなどバランスのとれた展示を求める要請書を同博物館に送付しました。「討議する全国委員会」は、アメリカン大学のカズニック教授らが中心となり活動しています。
要請書に署名するなど同委員会に賛同したのは、作家のダニエル・エルズバーグ、歴史家のハワード・ジン、ジョン・ダワー、言語学者のノーム・チョムスキーの各氏ら。映画監督のオリバー・ストーン氏、秋葉忠利・広島市長も名を連ねています。
エノラ・ゲイは、一九九五年にワシントンのスミソニアン博物館で機体の一部が一般公開されました。この時は、原爆被害についても説明される予定でしたが、議会や退役軍人の圧力で取りやめになった経過があります。
今回の展示にあたり、「討議する全国委員会」などの組織は、十二月十二日から十五日まで、日本の被爆者らを招いた行事を催す計画です。