日本共産党

2003年11月4日(火)「しんぶん赤旗」

NHK討論「争点を問う」

市田書記局長の発言

詳報


 日本共産党の市田忠義書記局長は二日夜、NHKの討論番組「衆院選特集 争点を問う」に出席し、各党の幹事長と討論しました。他党からは、自民・安倍晋三、民主・岡田克也、公明・冬柴鉄三、社民・福島瑞穂、保守新・二階俊博の各幹事長が出席しました。


 「有権者の手ごたえをどう感じているか」を問われて、市田氏は次のように述べました。

 市田 自民党政治のおおもとにきちんとメスを入れて、新しい政治をつくろう、こういうときだからこそ本当の野党らしい野党が求められるという訴えは、たいへん手ごたえがあったと思います。財界主役でなく国民の暮らしを支えるために、予算の使い方を社会保障中心にすえる。野放しにされているリストラを規制して雇用を守る。消費税増税を許さない。いつまでもアメリカいいなりの政治を続けていいのか。憲法を守って自主的な平和外交を、という訴えには非常に共感が寄せられています。

「小泉改革」

安倍 景気回復のレールに乗った

岡田 「規制改革」遅すぎる

市田 早いか遅いかではない。国民の暮らし応援にまったく反する中身

 「日本経済は『小泉改革』でよくなってきたのか」と問われて、安倍氏は「景気回復のレールに乗った」とし、規制緩和やリストラをした企業に減税する産業再生法「改正」などをあげて「民間ががんばれる環境をつくった」と述べました。

 岡田氏は「会社の自己努力ですすんでいるので政府のおかげじゃない」とし、「規制改革」も「あまりに遅すぎる」と述べました。

 これに対して市田氏は次のように指摘しました。

 市田 国民が答えを出していると思うのです。十月二十七日付の新聞に、「小泉改革によって暮らしがよくなったか」という問いに、93・8%が「悪くなった」と答えています。「国民の痛みを理解していない」という人が66%います。

 昨年から今年にかけてだけでも、サラリーマンの医療費の自己負担が二割から三割に上げられ、社会保障全体で二兆七千億円ぐらい負担が増えている。雇用が前進したと安倍さんは言うが、雇用者は八十三万人減っている。これが数字の事実です。中小企業つぶしという点でも信金・信組が五十一つぶれている。中小企業への貸し出しは四十七兆円減っているわけです。

 経済の主役である個人消費を冷えこませ、暮らしを台無しにしているのが、今の「小泉改革」の本質だと思います。

 冬柴氏は「地元を走っていて、庶民や中小企業の暮らしはまだよくなっていない」「関西は厳しい。そういうことはいえる」、二階氏は「まだまだ地方、中小企業の面では元気を回復するところまで至っていない」と述べ、十分な成果が上がったとはいえないと認めました。

 司会者が「改革の方向では民主党も同じではないのか」と質問。岡田氏は「おっしゃってることは正しいと思う」と述べ、「いずれも中途半端」「規制改革だって遅すぎる」と述べました。

 これに対して安倍氏は「百二十七の特殊法人を民営化して一兆四千億円を節約した」などと述べました。

 これに関して市田氏は次のように述べました。

 市田 特殊法人は独立行政法人化しただけで、予算を付け替えたり国の一般予算に変えただけのものがいっぱいあるのです。石油公団の削減は千六百九十三億円ですが、このうち千二百億円は石油の国家備蓄業務を公団から国に移しただけです。削ってはならない育英会、私学振興・共済事業団を削り、日本芸術文化振興協会は七十七億円削っているわけです。削ってはならない生活や文化のところを削って、それを自慢するのはまったく話になりません。

 それから、「構造改革」が早いか遅いかではないと思うのです。国民の暮らしを応援することにまったく反することをやってきた中身(が問題です)。弱肉強食のそういうやり方が破たんしていると思います。

 安倍さんは産業再生法を自慢されたが、これは労働者のクビを切ったら一人当たり(税金を)九十万円まけてやる。この間の実績で計算してみたら、そういう法律なのです。これを自慢するのはまさに弱肉強食の論理だと思います。

年金改革

市田 公明党さんにお聞きしたいのは増税でやられるのですよね

冬柴 そら、なるでしょう

 年金改革ではまず、基礎年金の国庫負担を二分の一へ引き上げる時期と財源が議論になり、安倍氏は時期にはふれず「財源の手当てを議論している」、岡田氏は歳出削減で「五年かけて」、冬柴氏は所得税の定率減税の廃止による増税で財源をつくり「五年かけて」、福島氏も「五年かけて」と、いずれも先送りの姿勢を示しました。

 市田氏は次のように述べました。

 市田 法律に「二〇〇四年までに引き上げる」と書いてあるわけで、来年直ちにやるのは国民への約束だと思います。それが守れないようでは、将来、何年間安心だといっても国民は信頼しないと思うのです。二分の一に引き上げるのに二・七兆円必要ですが、公共事業のムダを削る。道路特定財源が国に入るだけで三兆四千億円あるから、それを財源にあてる。そういうやり方で直ちに引き上げることは可能で、やるべきだと思います。

 冬柴氏は「道路特定財源を財源にするのはおかしい」などと述べました。

 市田氏は次のように反論しました。

 市田 公明党さんにお聞きしたいのは増税でやられるのですよね。(所得税の定率減税廃止によって)年収三百二十六万円以上の人は全部増税になります。しかも、三千万円以上の人は4・1%、一億円以上の人が0・8%。低・中所得者には25%の増税になるのです。そういうやり方でまかなうのは反対です。

 増税になることについて冬柴氏は「そら、なるでしょう」と認めざるをえず、「そんな細かいことを今ここでいうことじゃ」と口ごもり、「景気に影響を与えないように徐々にやっていく」などと答えるだけでした。

 市田氏はまた、道路特定財源を一般財源にして福祉などに使えるようにすることについて次のように述べました。

 市田 特定の税金を特定の目的に使うなんて税制があるのは日本ぐらいですよ。ユーザーは石油連盟のアンケートで50%を超える人が一般財源化すべきだと(答えている)。何にでも使えるようにすべきだというのがユーザーの声なのです。小泉さんだって一般財源化するといっていたのです。それを道路族の抵抗にあって元に戻しただけの話です。

消費税

安倍、岡田 年金の財源、将来、消費税増税で

市田 社会保障は、弱い人の暮らしを支える制度。消費税でまかなうのは論外だ

 年金の財源論とかかわって消費税の議論になり、安倍氏は「小泉さんの任期中は消費税を上げません」と述べ、「将来は消費税を上げないとだめだと思います」と明言。それまでは借金でまかない、「将来は、上げた消費税でそれを埋めていくことだってできる」と述べました。

 岡田氏は「消費税に置き換えたほうが所得が少ない人に温かい」とし、基礎年金部分を全額消費税でまかなう構想を示しました。

 市田氏はこう述べました。

 市田 小泉さんは三年間は上げないといいますが、自民党の政権公約を見ると、「国民的な論議を踏まえて結論を得る」と書いてある。「結論」には引き上げも含まれるのかと聞いたら「束縛しない」、要するに“引き上げも含まれる”とテレビ討論の場で言われているわけです。

 日本の場合、国民が納めた税金のうち社会保障に公的給付として返ってきているのは29%ぐらいなんですね。欧米は四割台ですから、せめて欧米並みに変えれば、十兆円の新しい財源が生まれるわけです。

 将来的には、日本の企業の税と社会保険料負担は欧米と比べて低すぎるのです。そこに応分の負担をしてもらうことによって、消費税を財源にしない。消費税というのはもっとも収入の少ない層の負担が多いわけです。社会保障というのは立場の弱い人の暮らしと命を支える制度なのに、一番そういう人に負担のかかる消費税でまかなうというのは論外だと思います。

イラク問題

安倍、冬柴 自衛隊の早期派兵方針を改めて表明

市田 大量破壊兵器をもっていると断定した責任をどうする。自衛隊派兵は憲法に反する

 治安情勢の悪化でバグダッドの国連外国人職員が退去する事態になっているイラク問題で、安倍氏は「自衛隊を派遣するということを決定している」、冬柴氏は「全土が戦闘地域のような状況はない」と述べ、自衛隊の早期派兵の方針に変わりないことを表明しました。

 市田氏は、二日にバグダッドに向かう米軍ヘリが撃墜され、多数の米兵の死者が出たことを紹介。政府は自衛隊のC130輸送機をバグダッドに派遣しようとしているが、米軍のC130は七月以降だけで五回も攻撃されていると指摘したうえで、次のように述べました。

 市田 総選挙にあたって、イラク問題の初めての本格的議論ですから、なぜいまイラクの状態が泥沼化しているかという問題について、原点に立ち返った議論が必要だと思うのです。

 イラクへのアメリカの侵略戦争が、国連憲章に違反した、国連決議に基づかない先制攻撃の戦争だった。

 それから(イラクの)大量破壊兵器を除去するというのが最大の眼目だと、与党の側はみんなおっしゃっていたわけだが、いまだに見つかっていない。CIA(米中央情報局)が五月から千四百人の部隊を出して探そうとしたが、ついに見つからなかったという中間報告を出しているわけです。それを除去するためにアメリカの武力行使もやむを得ないんだとみんなおっしゃっていた。

 それが全部崩れたわけですから、そういう態度をとってアメリカのいいなりになったことについてどう責任を取るのか、この選挙戦で国民の前に明らかにすべきだと思います。

 安倍氏は、かつてイラクが保有していたVXガスや炭疽(たんそ)菌の廃棄を証明せず、国連安保理決議一四四一に違反したため、米国は武力行使にいたったと述べ、イラク戦争を改めて正当化。また、国連安保理決議一五一一などをあげ、国連がイラク復興の中心に関与していると述べました。

 市田氏は、一四四一決議は武力行使の権利を与えていないと米国の国連大使も述べており、そのため米国は新しい決議を採択しようとしたが、結局、採択できなかったと指摘。米国は武力行使を勝手に強行したのであって、国際世論はもっと査察を続けるべきだということだったと強調し、次のように述べました。

 市田 (与党の)みなさん方の議論を聞いていると、大量破壊兵器の疑いがあるとか、行方が分からないという話はありました。「(大量破壊兵器を)持っている」と断定した責任をどうするかという話については、結局、回答できないのですよ。それ(大量破壊兵器)はみつからなかったのですから。

 そういう状況のもとで自衛隊を派兵することは憲法にも反するし、現地もこれ以上外国の軍隊は要らないと、アラブ連盟の事務局長がちゃんと言っているのです。そういうところへ自衛隊を派兵するのは、いっそうイラクの状況を泥沼化する。

 それから、復興支援について言えば、ちゃんと国連の枠組みができれば、われわれは賛成です。しかし、今度の一五一一決議でも一定の前進はあるけれども、国連主導、国連にきちんと枠組みを移すという点ではまだ不十分です。だから、フランスもドイツもロシアも中国も、軍隊もお金も出さないと言っているのです。インドもそうです。

 大量破壊兵器保有を断定した根拠を示せなかった冬柴氏は、「日本のマスタードガス、化学兵器は(中国の)チチハルからこのあいだ出てきた。五十八年たっていますよ」などと開き直り、失笑を買いました。

北朝鮮問題

安倍 北朝鮮工作員の釈放要望書に民主党代表や社民党党首が署名していた

市田 公明議員6人も。拉致問題を党利党略で扱ってはならない

 拉致問題をどう解決するかに議論が移りました。安倍氏は、北朝鮮の工作員で日本人拉致実行容疑者の辛光洙(シン・グァンス)の釈放要望書に民主党の菅直人代表や社民党の土井たか子党首が署名していたとし、「この問題は政治家としてきわめて重たい」と述べました。

 これに対し、岡田氏は「辛光洙が拉致に関与したということがわかって署名した事実はない」、福島氏も「スパイであるという認識が当時はなかった」と述べました。

 司会者から「送金停止、経済制裁という圧力を強めていくことで拉致問題は進むのか」と問われた市田氏は次のように述べました。

 市田 六カ国協議再開の方向が見え始めてきています。アメリカ自身が北朝鮮の安全保証について文書化するという方向も言っていますし、北朝鮮も考慮するということを言い出している。私は六カ国協議がそういう方向でいま進んでいるときに、やはりこういう問題は平和的、外交的に解決すべきであって、送金停止とか経済制裁は現時点ではやるべきではない。そういう流れに水を差すことになるのではないか。

 それから、辛光洙問題を安倍さんが先ほどおっしゃいましたが、あの問題は日本共産党の橋本敦参院議員(当時)が一九八八年に国会で質問したのです。そうしたら当時の警察庁の警備局長が、北朝鮮の工作者の疑いがあるということをはっきり言っているのです。

 おっしゃった釈放署名は一九八九年なんです。確かに菅さんも土井さんも署名されているけれども、与党のなかにも、公明党の六人の国会議員も署名されているのですよ。だから、こういう場で議論するなら、公平にきちんと議論しないと(いけない)。党利党略の問題で使ったら、拉致問題はダメだと思いますよ。人道的、人権の問題ですから。そういう立場で扱われるのがいいのではないですか。

憲法問題

安倍、岡田 改憲で9条が対象になる。集団的自衛権をどうするか

市田 国連憲章違反の無法な侵略を正当化するために使われる言葉が「集団的自衛権」

 憲法改悪問題で、安倍氏は「二〇〇五年までに二十一世紀にふさわしい憲法をわれわれ自身が書き上げていく」と表明。岡田氏も「与党第一党がそういうタイミングで(改憲案を)出してくるのであれば、われわれの議論もそれに合わせてきちっとしていかないといけない」と述べたことに対し、市田氏は次のように語りました。

 市田 (自民党と民主党の双方から改憲の動きが出ているのは)大変危険だと思います。

 私は今度の憲法「改正」の一番の狙いが、憲法九条を変えるところにあるというのは、この間の国会での議論や小泉さんの発言からしても明確です。

 自衛隊がなんの歯止めもなく自由に海外に出て、アメリカと一緒に戦争がやれるようにしよう。その点で憲法九条がじゃまになる。これはアーミテージ(米国務副長官)もそう言っているし、小泉さんも首相になった時に、「集団的自衛権が行使できないのなら憲法を変えた方がいい」ということもおっしゃっているわけで、ここに一番の狙いがあるわけです。

 憲法九条というのは、私自身も兄弟を四人戦争で亡くしていますけれども、三百十万人の日本国民を犠牲にし、二千万人のアジアの人を犠牲にした痛苦の教訓の上に立って、二度と再び戦争をしないということを誓ってつくりあげたものだと思うのですね。

 それを歴代自民党政権の中で初めて二〇〇五年十一月までに「改正」案をまとめると公言した。「創憲」という形で民主党さんもそういうレールの上に乗っておられることについては大変残念だと思います。

 改憲で第九条が議論の対象になるのかどうかについて安倍氏は「当然そうだ」と発言。岡田氏も「(どうやって)九条をよりわかりやすくしていくのか」「集団的自衛権をどうするのか、党の中にはいろいろ議論がある」とし、「どんどん議論したらいい」と述べました。

 これに対し市田氏は、次のように述べました。

 市田 変えるという議論はするべきではないでしょうね。これまで「集団的自衛の行使」と、名前に「自衛」とついているけれども、集団的武力行使といってもいいと思うんです。

 アメリカのベトナム侵略戦争も「集団的自衛権」の行使(という口実だった)でしょう。旧ソ連のアフガンへの侵略もそうで、いわば、国連憲章違反の無法な侵略を正当化するために使われている言葉が「集団的自衛権」なのです。

 過去にこういう形で行使されたのは、八回しかないのです。全部、国連でも不当な侵略だといわれている行為ばかりです。グレナダ(侵略)もそうだし、ニカラグア(侵略)もそうだった。そういう「集団的自衛権」の論議はいいのだということで、結局、自民党がいま考えている憲法九条の改悪のレールに乗ることになるのではないかという危険性を感じます。

 集団的自衛権の問題について、安倍氏は「憲法において(集団的)自衛権を明記するべきだという意見がわが党の中では基本的には主流だ」と発言。冬柴氏は「(九条を変えるべきではないという)そんな硬直的なことを言っているわけではない」と述べました。

政党の協力関係

市田 民主党は大きく変わった。財界のひも付き献金をもらっておいて、国民の立場に立った政治はできない

 選挙後の政党間の協力関係について問われた、市田氏は次のように述べました。

 市田 国会内で自民党の悪政に反対するために、野党間でわずかな一致点でも大事にしながら誠実に共闘のために努力してきました。民主党さんともそうでした。ただ、きょうの議論を聞いていましても、民主党さんは大きく変わられたなという感じがします。

 憲法、消費税しかりですし、日本経団連が法人税を引き下げて消費税率を引き上げてくれる政党には献金のあっせんを再開すると(言っている)。小泉さんは「喜んでもらう」とおっしゃったんですけれども、民主党さんも「政権交代の姿勢も見て献金してほしい」と(言っている)。(岡田氏「党として言っていない」)新聞に載っていましたから、では訂正を要求されたらいい。私は、財界のひも付き献金をもらっておいて、国民の立場に立った政治はできないと思うのです。

 それから、民主党さんが、比例代表の定数を衆議院で八十減らすとおっしゃっているのです。これは、最も国民の民意を国会に反映させる制度をなくしてしまおうというわけですから、民主主義にまったく反するわけで、そういう、今度の選挙戦のなかで争われている問題をよく見ながら考えたいと思います。

市田 国民の立場に立った第三の流れ、日本共産党がある

 最後に市田氏は、残り一週間となった選挙戦で一番訴えたい点について問われ、次のように答えました。

 市田 自民か民主かということが言われていますけれども、国民の立場に立った第三の流れ、日本共産党があるじゃないかということを、最終盤、大いに訴えていきたい。

 「国民が主人公」ですから、国民のくらし優先、そして憲法を守り、平和の外交を、消費税増税を絶対に許さないということを最後まで訴えていきたいと思っています。


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