日本共産党

2003年10月31日(金)「しんぶん赤旗」

ここが知りたい 選挙特集

憲法改悪と新たな軍拡

ヘリ空母、ミサイル防衛も


 憲法九条が改悪され、米国の戦争に日本が自由に参戦できるようになれば、自衛隊の装備をいっそう海外派兵型にするため、新たな軍拡が始まる−。このことは、世界の軍縮の流れに反して軍事費を増やし、軍備増強を続ける日本の現実をみても明らかです。


米同盟国の中で日本は突出

写真

海上自衛隊の観艦式で参加艦艇を観閲 する小泉純一郎首相(中央)と石破茂 防衛庁長官(左から2人目)=26日

 米国防総省は昨年六月の「共同防衛に対する同盟国の貢献度報告」で、一九九〇年から二〇〇一年までの同盟国の軍事費の推移を明らかにしました。

 それによると、米国とその同盟国二十五カ国の軍事費の合計は十一年間で19・2%減で、約二割減っています。

 米国を含むNATO(北大西洋条約機構)加盟国全体でも21・4%減。中東の同盟国も全体で29・0%減となっています。そのなかで日本は20・3%増、逆に二割も増やしているのです。(グラフ左)

 日本の軍事費は九〇年には、米国とその同盟国の中で第五位でした。しかし、〇一年には第二位の軍事費大国になっているのです。(グラフ右)

 報告は、「日本の軍事支出は絶対額で第二位になっている」「この報告で扱っているすべての(同盟)国の年間軍事支出は全体で20%弱も減ったのに比べ、日本は20%も増えた」と高く評価しています。

軍需産業は大もうけ

 小泉・自公政権はこれまでも、財界・軍需産業の要求のもとで軍拡を進め、自衛隊の海外派兵型装備の導入をはかってきました。

 現行の「中期防衛力整備計画」(中期防、二〇〇一−五年度)の策定時には、経団連が、「国際平和協力対処能力」や「弾道ミサイルに対する防衛対処能力」などの「向上」を要求(二〇〇〇年九月)。中期防に具体的に反映されました。

 たとえば、米国の対テロ報復戦争を支援するためインド洋に派遣されたイージス護衛艦を新たに二隻導入し、現在の四隻体制から六隻体制にすることを決定。すでに二隻分、二千八百六十四億円が予算措置されています。

 一隻千百六十四億円する“ヘリ空母”も二隻調達。防衛庁は、「長期間にわたるインド洋での(米軍などへの)協力支援活動」にも「柔軟に対応し得る」と、海外での運用が可能なことを誇っています。次の中期防では、さらに二隻追加するともいわれています。

 戦闘機の航続距離を伸ばし、海外への侵攻も可能にする空中給油機四機(来年度予算の概算要求で一機二百五十七億円)の導入も決めています。

 また、来年度の概算要求で、「ミサイル防衛」の導入費を初めて盛り込み、千四百二十三億円を計上。当面の計画だけで五千三百億円以上を見込んでいます。

 日米の軍需企業二十社でつくる「日米安全保障産業フォーラム」は、昨年十二月の共同宣言「日米防衛産業界の関心事項」で、「ミサイル防衛」について特記。現在の枠組みは「全体システムの開発、生産での連携を行う上では十分ではない」とし、イージス艦搭載の「ミサイル防衛」システムの共同生産を提唱しています。

 「ミサイル防衛」の導入は、日本防衛とは関係のない米本国に向かうミサイルへの対処を迫られるなど、集団的自衛権の行使を避けがたいものにします。憲法が変えられれば、それが大手を振ってできるようになります。

 米国のシンクタンク・ランド研究所は、日本の「ミサイル防衛」の導入費について、最大で約六兆円、研究開発だけで三兆六千億円もかかると試算しています。

 自民党は「政権公約」で「防衛力の整備・強化」を強調。同党国防部会の小委員会が二月にまとめた「日本の防衛政策の構築(骨子)」は、憲法九条の「改正」とともに、「より積極的かつより有効な国際貢献活動実施のための能力の充実」や「ミサイル防衛の推進」などを求めています。

 憲法改悪で新たな軍拡の道に足を踏み入れることによって、軍需企業は大もうけ、ということになります。

武器輸出の解禁も

 軍需企業は、憲法の平和原則のもとでつくられた武器輸出禁止の原則を事実上緩和することも求めています。

 「日米安全保障産業フォーラム」の共同宣言は「武器輸出三原則によって…防衛装備・技術協力の推進が大きく妨げられている」と指摘。同原則の「柔軟な運用」を要求しています。憲法改悪が強行されれば、武器の輸出までも解禁されることになりかねません。

グラフ
表

民主「防衛力整備も怠りなく」

 民主党は「政権政策」で、PKO(国連平和維持活動)について「派遣される隊員の武器使用基準の見直し」などを「積極的に検討」し、「日本として、国際平和の維持・構築に正面から関与できるようにします」とし、自衛隊の海外派遣を推進する立場です。

 「防衛力整備も怠りなくすすめます」とし、「平成17年中に新しい防衛構想を策定」すると表明。「弾道ミサイル防衛については、その必要性を踏まえ、費用対効果など総合的観点から検討を進めます」と表明しています。


際限ない軍拡その財源は

 海外派兵型の装備を本格的に導入することになれば、現在約五兆円の軍事費はいっそう膨張することになります。財源はどうなるのでしょうか。

 自民党や民主党は、将来の社会保障の財源として消費税増税を狙っていますが、これが軍事費に振り向けられない保証はありません。政府税制調査会や財界は、消費税の二ケタ税率を主張。日本経団連は18%、経済同友会は19%とすることを主張しています。しかも、経済同友会の「マニフェスト」では、19%のうち社会保障にふりむけることを明記しているのは12%分だけ。残り7%は使途を明記していませんから、一般財源として何にでも使えます。

 仮に、消費税率10%になれば、約二十五兆円。18%で四十五兆円、19%で四十七・五兆円となります。軍拡の財源としては十分です。


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