日本共産党

2003年10月18日(土)「しんぶん赤旗」

イラク新決議

各国、派兵・追加援助せず

国連の中心的役割、主権の早期移譲

仏、独、ロなど要求


 国連安保理は、米国が提案したイラクの治安確保と「復興」に関する決議案を採択しました。事務局関係者も驚く全会一致での採択。国連の役割の強調などで一定の前進はあります。しかし、米英軍主導の占領体制の構造をかえるにはいたっていません。(ニューヨークで浜谷浩司)

 決議案は何度か修正されましたが、いずれも米国にとっては許容範囲内の手直し。占領体制維持の障害になるような基本的な修正要求は受け入れられませんでした。

米国は一貫して占領維持に固執

 仏独ロ三国は、決議採択後に共同声明を発表。その中で、「決議は二つの主要問題でさらに修正されるべきだった」と言明しています。(1)国連の中心的役割、とくに政治的役割の強化、(2)主権のイラク国民への早期移譲、の二つです。その厳しい調子は、決議への賛成が容易な選択でなかったことを示唆しています。

 三国は、イラク侵略戦争そのものと米英軍による占領を認める決議案を批判し、こう主張してきました。一日も早い占領終結がイラク情勢安定につながる、そのために、イラクの暫定政府を創設し、主権を移譲する、そのうえで憲法を制定、選挙を実施して民主的な政権を樹立する。その全過程で、国連が中心的な役割を担う。

 アナン国連事務総長も同様の見解でした。

 今回の決議はもともと、イラク戦争で孤立を深めるブッシュ政権が、局面打開のために持ち出したものです。しかし、その一方で、一貫して占領体制の維持に固執しました。

 最後の場面での主な修正点は、(1)暫定占領当局(CPA)の権限は、イラク国民によって創設され、国際的に承認される代表政府の発足で「終了」する、(2)CPAの一日も早い権限移譲について「安保理に進ちょく状況を報告する」、の二点。占領体制の骨格を変更する修正ではありません。

安保理の役割を果たす足がかり

 仏、独などが不満ながらも賛成した裏には、それなりの判断がうかがわれます。決議を葬れば、米政権がいっそう単独行動主義に走る危険がある、イラク国民を放置することに、安保理がイラク問題で役割を果たす足がかりをつくる必要がある、決議を本当の国連主導の解決に導いてゆく一つの足場にする…。

 中国の王国連大使は、採択にあたって、「イラク問題では七十近くの決議を採択してきた。今回の決議が最後ではない」と強調しました。プロイガー独国連大使はこうのべました。「われわれは、イラク国民によかれと思って行動している」「これがイラクに関する最後の決議でない」。ロシアのラブロフ国連大使も決議は主権回復への「現実的なステップ」と語りました。

 決議採択で強調されたのが安保理の「統一」でした。「どの代表も、いまの状況下で安保理の統一の重要性を強調した」とドラサブリエル仏国連大使はいいます。

 アナン事務総長はこう述べました。「イラク国民の利益をなによりも重要だとする安保理全理事国の意思をはっきりと示した」「主権のイラクへの全面的返還を意味する政府が一日も早く創設されることを、われわれすべてが期待している」

 仏ロ独三国の共同声明はクギを刺しています。「(決議は採択されたが)われわれにとっては、いかなる軍事的関与も、また現在の水準をこえる財政支援を行う条件もつくられていない」

 パキスタンのアクラム国連大使の表明も明確です。「わが国は、多国籍軍は占領軍とは明確に区別すべきだ、イラク国民の求めとともに、域内諸国の同意がなければならないと主張してきた。残念だが、この主張は決議に反映されていない。このままでは、多国籍軍にパキスタンの部隊を派遣するわけにいかない」

 今回の決議の採択で、苦境から脱出できるという楽観的な見方は米政府内からも出ていません。


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