2003年10月16日(木)「しんぶん赤旗」
自民、民主両党が政権公約(マニフェスト)に掲げる「郵政改革」をめぐって批判しあい、「違いが早くも先鋭化」(「毎日」)などと報じられています。
小泉首相の「金看板」である郵政民営化について自民党は、「二〇〇七年四月から民営化するとの政府の基本方針を踏まえ、国民的論議を行い、〇四年秋ごろまでに結論を得る」としました。
民主党が「任期中には何もしないという先送りマニフェストだ」(菅直人代表、十四日、京都市)と批判すれば、小泉純一郎首相は「よりよい民営化案をまとめるため来年の秋ごろまでかけるのが当然。玉虫色でもあいまいでもない」(同日、東京都内)と反論。
逆に小泉首相が「民間にできることは民間にといっていた民主党が反対している。二十八万人の役人の票をあてにしている」と批判すれば、菅氏が「それなら自民党は特定郵便局長の応援を断るのか」と応じるなど「論争」は収まりません。
しかし、両党の主張からは、郵政事業の主人公である利用者・国民にとってどうなのか、肝心な点がさっぱり見えてきません。
小泉首相は「民営化して郵便局がなくなるわけではない」「民間になったらサービスはどんどんよくなる」(同)といいますが、何の根拠も示していません。
もっぱら出てくる民営化の理由は「郵貯・簡保が民業を圧迫している」など郵貯や簡保の解体・弱体化を求める大銀行や生保の都合ばかりです。
民主党も「民営化」とはいわないものの政権公約では「二年以内に郵便事業への民間参入を大胆に進める」「郵貯の預け入れ限度額、簡保の加入限度額を引き下げる」と明示。
銀行や生保に、もうけ口を提供する点では自民党と変わりません。
枝野幸男政調会長は「大きすぎる郵貯や簡保がただでさえ苦しい銀行や生命保険を圧迫している」と、自民党と同じ“民業圧迫”論を展開、「郵貯や簡保の規模を小さくすることがまじめな改革だ」とのべました(十二日、さいたま市)。
郵政事業を民間にまかせれば、もうからない地方の郵便サービスを切り捨てたり、庶民が利用する郵貯や簡保のサービスを切り縮めないとやっていけないことは、郵政民営化案を議論した小泉首相の私的懇談会でも指摘された「常識」です。
にもかかわらず国民そっちのけの「論争」に明け暮れるのはなぜか。
経済同友会は、七月十八日のアピール「『政権公約』で競う総選挙の実現を」で、「構造改革なくして、明るい展望を切り拓くことはできない」として、「『政権公約』に含めるべき構造改革の諸課題」まで列挙しました。そのなかに、「日本郵政公社のあり方」も位置付けられています。
自民党と民主党の「論争」も結局、財界が敷いたレールの上でおこなわれる「マニフェスト対決」では、利用者・国民の利益がどうなるのかがすっぽり抜け落ちるのも不思議ではありません。
日本共産党は、大銀行のための郵政民営化に反対するとともに、利権や不正にメスを入れ、郵貯・簡保の資金は中小企業に供給するなど、国民に開かれた公営事業にする改革案を示しています。(深山直人記者)