2003年10月10日(金)「しんぶん赤旗」
総選挙を前にして、ほんの一年前に疑惑発覚で辞職・離党した与野党国会議員が、真相解明はあいまいにしたまま着々と立候補を準備し、政党の側も黙認したり、“復権”させるきざしが出ています。疑惑議員が所属していた自民、民主両党の責任が問われます。
元事務所代表による脱税(逮捕)と公共事業口利き、政治資金の私的流用疑惑で二〇〇二年四月に議員辞職した加藤紘一元幹事長。地元での「おわび行脚」で国政復帰へ意欲を見せてきました。
六日には加藤氏の地元、自民党山形県連の幹部が党本部を訪れ、久間章生幹事長代理らと会談しました。山形三区の現職、近岡理一郎衆院議員が引退を表明し、後継者を指名しなかったことから、加藤氏の三区からの党公認立候補の可能性が浮上したものです。
県連では加藤氏の公認について「本人の意向や支部の意見を聞いて決める」としています。
安倍晋三幹事長は復党について「本人の意思もある」とのべましたが、「金庫番」の事務所代表の公共事業口利きに関与した疑惑や、集めた巨額の資金を政界に還流させたり自宅家賃などに流用した疑惑は未解明のままです。
鈴木宗男衆院議員(自民党を離党)は九月二十九日、一年三カ月ぶりに衆院本会議に出席しました。あっせん収賄などで公判中で有罪が未確定とはいえ、衆院で可決された辞職勧告決議を無視しての登院です。
“疑惑の百貨店”といわれた鈴木氏は「ムネオハウス」(国後島宿泊施設)など「北方四島」支援事業を自分の後援企業に受注させ、多額の献金を受け取っていました。
出馬についてはまだ表明していませんが、支持者回りなど政治活動を続けています。
自民党は辞職勧告決議案の上程を二度も妨害しただけでなく、かつて「政治改革の基本方針」(一九九二年)で「党所属国会議員による国民の疑惑を招いた事件については、党自らがその解明にあたる」とした見解にも反し、疑惑解明に取り組もうとしませんでした。
鹿野道彦元民主党副代表は〇二年二月、公共事業の口利き事件で逮捕された元秘書のコンサルタント会社に秘書給与を負担させていたことを認め、「党に迷惑をかけるわけにはいかない」として離党しました。
鹿野氏は元秘書の逮捕時に「八年前に退職した人。私はまったく関係ない」と関与を否定し、秘書給与の肩代わりが発覚しても「任せきりで承知しなかった」と弁明。自由党との合併を機に今年九月、民主党に復党して党公認候補となりました。
民主党は離党時に「大変残念であるが、事の重大性に照らせば遺憾」との談話を出しましたが、それから一年八カ月たっても「重大」な疑惑が払しょくされたわけではありません。