日本共産党

2003年10月7日(火)「しんぶん赤旗」

アフガン空爆2年

戦火なお やまず


 米軍が対テロ戦争の名のもとにアフガニスタン空爆を開始してから七日で二年。三千人以上の民間人の死者を出して、首都カブールはじめ主要都市からイスラム原理主義組織のタリバンを放逐しました。しかし今タリバンの再結集が伝えられ、米軍はなお空爆を含む掃討作戦を継続しています。アフガニスタンの現状は、泥沼状態のイラクの実情とともに、ブッシュ米政権の「対テロ」を口実にした覇権主義路線の矛盾と行き詰まりを示しています。(カブールで小玉純一 写真も)

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カブール郊外の国際治安支援部隊(ISAF)本部の装甲車=5日

 アフガニスタン駐留米軍は九月末、南東部パクティカ州に接するパキスタン領国境付近を空爆―パキスタン英字紙が報じました。

 「米軍の爆撃があり、遊牧民の体がバラバラだったと聞いた。ヘラートでは知られている話のようだ」。遠距離タクシー運転手のアジームさん(23)がいいます。ヘラートはアフガン南東部ザブル州の州都。彼が月に七回ほど往復するカブール・カンダハル道路の途中です。ちょうど米軍が八月末からタリバン掃討作戦を始めた時期でした。「爆撃音も聞いたし、煙も見た」といいます。

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カブール郊外の検問所前に立つ兵士。「この先は治安が悪く何が起きても不思議でない」とタクシー運転手たちはいう=5日

いまも民間人犠牲 米軍爆撃

 九月十八日、再びザブル州で遊牧民が米軍の爆撃で犠牲になりました。衛星電話を使用していたタリバン兵二人が、飛行中の米軍ヘリを見て遊牧民のテントに避難。就寝中の遊牧民が爆撃され、女性・子どもら少なくとも八人と、タリバン兵二人が死亡した―同州副知事が報道機関に伝えました。

 ところが一週間後、遊牧民ラワングさんの証言が報じられました。「夜空にヘリの機影を見たあと爆撃音を聞いた。夜明けに現場に行くと女性五人、子ども四人の死体があり、六人が負傷していた。近くの村に行きトラックを借りてカンダハルの病院に連れていった。彼らはタリバンじゃない。米国はアフガン人を助けアフガン人の国をつくると聞いたが、そうじゃない。米国は私たちを殺している」

 米軍の爆撃で民間人が犠牲になるのは、ほとんどが山間部や砂漠の村です。米軍は民間人の犠牲者数を把握していません。人権団体アムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウオッチは「軍事作戦が甚大な民間人の犠牲をもたらしている」としています。

 今年になってからも二月の南部ヘルマンド州で十七人、四月の東部パクティカ州で十一人など空爆による住民の死亡が何度も伝えられています。

タリバンが再結集 襲撃激増

 「アフガン三十二州の半分が援助団体にとってきわめて危険だ。立ち入り禁止と考える地域も多い」。民間開発援助団体ケア(CARE)は九月十五日、アフガン情勢についての報告書を出し治安悪化を警告しています。国連機関や非政府組織(NGO)に対する襲撃件数は昨年九月から今年二月までの半年間に十三件。それが三月から八月までの半年間には八十件に激増しています。

 犯行のすべてがタリバン兵によるとは限りません。しかし、彼らは九月二十四日に南部ヘルマンド州で援助団体のアフガン人職員二人を殺害したあと、報道機関に犯行を自認しました。「援助団体職員は米国の代理人で死に値する」と。米国と親米カルザイ政権への聖戦と称して米軍やアフガン国軍に襲撃を繰り返すタリバンは、援助団体まで米国支援団体とみなしています。

 アフガン駐留米軍報道官は一日、空爆開始以来の二年に戦闘で米兵が三十六人死亡したと述べながら、「ベトナム戦争などに比べれば少ない」「タリバンはゲリラ戦でやけくそになっている」「米軍の作戦は前進している」と強弁しました。しかし九月末に米兵一人が殺害されたばかり。八月末からでは五人殺されました。アフガン国軍将校はタリバン兵の再結集を繰り返しメディアに伝えています。

 米兵約一万人がハイテク装置を駆使した作戦を継続しても、ゲリラ戦とテロが続くのはなぜか。

 「タリバンは昨年より強くなった」と見るカブール大学教授のラメズプル氏は「多数派のパシュトゥン人は、カルザイ政権に不満があり、タリバンとともにたたかう若者を支持する傾向にある」といいます。

 米軍が空爆でタリバン政権を打倒して新たにつくった政権は、少数派のタジク人などの反タリバン軍閥連合・「北部同盟」が担い手です。

 カブール駐在の欧州の通信社記者は「タリバンが五十ドルで若者を勧誘している」といいます。「タリバンに参加し聖戦をたたかえ」と聖職者に言われた―パキスタンの神学校で学んだアフガンの若者の証言を八月末、同通信社が伝えています。

 アルジャジーラ・テレビは九月末、タリバンの報道官を名乗る人物によるたたかいのよびかけを放映しました。「アフガニスタン、パレスチナ、チェチェン、そしてイラクでの異教徒によるイスラム教徒への占領とたたかおう」。米国などが世界で働く蛮行は、ゲリラ戦の理由に、そしてテロの口実にされています。

軍閥支援する米国 治安悪化

 カブールの街では国際治安支援部隊(ISAF)の装甲車やジープをしばしば見かけます。米軍などの対タリバン軍事作戦と違い、国連安保理が委任した多国籍軍です。

 約三十カ国の五千五百人が配置され、カブールの治安をかろうじて維持しています。

 しかしカブールを一歩出ると「身の安全をだれも保障できない」といわれます。援助関係者の間では「タリバン政権前の軍閥割拠の時代、アフガンが最も疲弊した時代に戻りつつある」との声も聞かれます。

 カブール・カンダハルを往復するタクシー運転手のマリエドさん(26)はカンダハル付近で「おじが車を走らせていたら、銃を突きつけられ現金を脅し取られた」といいます。「タリバン時代は女性が教育を受けるのを禁じられたが治安はよかった。今は女子教育解禁だが治安が悪すぎる」と嘆きます。

 カブール大学で農業経済を学ぶハミドアリさん(26)は「ぼくはタリバンが嫌いだが、カルザイもだめだ。軍閥を統制せず、略奪や盗みが横行している」といいます。「ISAFも米軍も軍閥には何もしていない」と付け加えました。

 援助団体CAREはタリバン・アルカイダ問題とともに軍閥の問題を先の報告で指摘。軍閥は米軍などの資金提供、非合法の税収、麻薬密輸で強大化しているといいます。

 米軍が対タリバン・アルカイダ軍事作戦への支持を得るため軍閥に資金を配ったことは知られています。カブール大学のラメズプル教授は「米国からアフガンへの資金は二つある。政府への経済援助と軍閥への金だ」といいます。CAREは「対テロ戦争のための軍閥支援によって強い中央政府の確立を掘り崩している」と米国の矛盾を指摘します。

 タリバン政権時代に禁じられていたアヘン生産は、アフガンの世界に占めるシェアは二〇〇一年に12%でした。ところが〇二年には76%と激増しました。ラムズフェルド米国防長官は九月十五日ワシントンの会合で「需要の問題もある」などと発言し「米国は麻薬密輸とたたかう答えがない」と報じられるありさまです。


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