日本共産党

2003年10月4日(土)「しんぶん赤旗」

テロもなくせず 法も守れず

派兵法延長案

報復でなく、法の力で解決を


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タイトルまで黒塗りにされた海上自衛隊艦隊のインド洋での活動報告書

 自民、公明などの与党が衆院通過を強行した「テロ対策特別措置法」延長案──。これまでの審議などを通じて、「テロ根絶」には無縁なばかりか、イラク戦争支援などの脱法行為の可能性がますます浮き彫りになっています。まともな審議も、説明もしないで強行をはかった小泉・自公政権の責任は重大です。(竹下岳記者)

アフガンの治安悪化

 テロ特措法の延長を議論するのなら、同法が支援の対象にしている米国の報復戦争によって、テロがなくせたかという検証が必要でした。しかし、政府・与党は、いっさいまともな検証をおこないませんでした。

 報復戦争の主舞台であるアフガニスタンでは、アルカイダやタリバンの主要幹部はほとんど拘束されず、タリバンの再結集が顕著になっています。米軍が報復戦争のために軍事援助をおこなった地方軍閥が台頭し、和平プロセスが重大な危機に直面しています。

 アナン国連事務総長は九月二十四日、アフガニスタンに関する国連特別会合で、「こうした不安な状態は復興活動を妨げ、民衆の幻滅とフラストレーションを増大させる危険がある」と指摘。いっそうの治安悪化に懸念を表明しました。

 米同時多発テロ事件が起きた二〇〇一年九月以降、インドネシア・バリ島のディスコ爆破事件、サウジアラビアの米大使館爆破事件など、凶悪なテロが全世界に拡散しています。イラクも新たなテロの温床になっています。軍事力でテロが根絶できないことは明白です。

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イラク戦争支援隠す

 政府は、軍事作戦であるとの口実で、同法にもとづく自衛隊の具体的な活動内容や地域を明らかにしていません。

 海上自衛隊の艦船が、アラブ首長国連邦のフジャイラ港を拠点に、他国艦船への洋上給油をおこなっていることは「公然の秘密」です。しかし、政府は公にはしません。

 同港は、ペルシャ湾に接したオマーン湾に位置し、イラク戦争の直前、米軍艦船はこの海域を通過しました。米海軍横須賀基地(神奈川県)を母港とする空母キティホークの艦長は、イラク戦争直前の二月末に海自補給艦から間接給油を受けたことを明らかにしました。同空母戦闘群の二隻のフリゲート艦もイラク戦争に従事中、直接給油を受けています。

 テロ特措法から逸脱した、違法・脱法的なイラク戦争支援です。

 これらの艦船に給油した海自補給艦「ときわ」などが自衛隊横須賀基地に帰還したさい、米海軍の同基地機関紙「シーホーク」五月二十三日号は「海上自衛隊艦船、イラクの自由作戦から帰還」と大々的に報じました。

 本紙が情報公開請求で入手した海自艦隊の活動報告書では、テロ特措法で定められている「協力支援活動」以外の活動をおこなっていることをうかがわせる部分が、黒塗りされています。小泉純一郎首相が「実施したことはない」と明言している捜索救助活動に関する部分も黒く塗りつぶされています。

 政府は「日本だけがやめるわけにはいかない」と繰り返しています。しかし、海自が支援している「対テロ」海上作戦は縮小の一途をたどっており、米軍艦船や参加国の数は激減しています。(グラフ上)

 海自補給艦の給油量もピーク時の十分の一まで落ち込んでいます(グラフ下)。しかも、政府資料によると、各国艦船の活動海域はいずれも、燃料の豊富なアラビア半島周辺です。海自艦隊による洋上給油のニーズがどれだけあるのかさえ、政府はなんら説明していません。

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狙いは日米同盟強化

 それでも、政府がテロ特措法の延長に執念を燃やすのは、日米同盟強化にねらいがあり、そのための海外派兵推進の体制をすでに敷いているからです。

 前出の活動報告書では、「緊密な連携と親密な連帯感に基づく米国艦艇に対する協力支援活動を通じ、更に強固な日米関係の構築に寄与」できたことを「成果」として誇示しています。

 海自の現地指揮官は八月、超党派の衆院調査団にたいし、作戦上の成果にはいっさいふれず、「海上作戦は今後、十年間つづく」との見通しを示しました。それにあわせ、防衛庁は、来年度概算要求でヘリ空母導入予算を計上しており、石破茂長官も護衛艦や補給艦の性能について「国際貢献のための能力について検討する必要がある」(二日、衆院テロ・イラク特別委)と答弁。海外派兵のために機能強化をはかる考えを示しています。

 日本共産党は、「テロ根絶のためには軍事力による報復でなく、法にもとづく裁きを」と提起してきました。

 同時多発テロ直後の国連総会(二〇〇一年十月)では、日本政府の国連代表部大使でさえ「(テロ実行者や支援者を)法の裁きに服さしめるために、より効果的な法的枠組みを創設することは、国連総会の厳粛な責任」と表明しました。このような方向での努力こそが求められています。



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