日本共産党

2003年9月30日(火)「しんぶん赤旗」

志位委員長の代表質問 衆院本会議

 二十九日の衆院本会議で、日本共産党の志位和夫委員長がおこなった代表質問(大要)は、つぎの通りです。


 日本共産党を代表して、小泉総理に質問します。この国会は、解散・総選挙がまぢかに迫るなかで開かれました。国民の前で十分な審議をおこない、総選挙の争点を明らかにすることは、この国会の重要な責務であります。私は、二十一世紀の日本の進路はどうあるべきかについて、わが党の改革の提案をのべるとともに、総理の見解をただすものです。

イラクへの自衛隊年内派兵の方針――政府の見解とも矛盾

 冒頭、緊急にただしておきたいのは、政府が、米国の強い要請をうけ、年内にもイラクへの自衛隊派兵を実現する方針に転換したと伝えられていることについてです。イラクの治安情勢は、悪化の一途をたどっており、自衛隊派兵を強行することは、「戦闘地域には派遣しない」としてきた政府の見解とも、まっこうから矛盾することになるのではありませんか。この政府の見解には変わりがないのか、変わりがないとすれば、この矛盾をどう説明するのか。はっきりお答えいただきたい。

税金の使い方の改革――社会保障を予算の主役に

 質問の本論に入ります。まず、暮らしと経済の問題です。いま、国民の生活への不安は、かつてない深刻なものとなっています。内閣府が六月に実施した「国民生活に関する世論調査」では、「生活の不安」を訴える人は67%と史上空前となりました。「不安」の内容の第一位は「老後の不安」、第二位は「健康の不安」、第三位は「収入の不安」であり、国民生活があらゆる分野で深刻な危機に脅かされていることが、しめされています。

 これは、小泉内閣が「構造改革」の名で、巨額の国民負担の押しつけ、大企業のリストラ支援、中小企業つぶしなど数々の痛みを押しつける政治を強行してきた結果ではありませんか。昨年、生活苦を原因とする自殺が七千九百四十人、史上最悪という痛ましい結果となったことを、総理は重く受け止めるべきです。この道を暴走し、さらに生活不安を深刻にする政治をつづけるのか。それとも、国民の生活不安をとりのぞき、国民だれもが現在と将来に安心して暮らせる日本をつくるのか。いま政治の責任が問われています。

 日本共産党は、日本経済の三つの改革を提案するものです。

 第一は、税金の使い方を改革し、社会保障を予算の主役にすえることであります。昨年十月のお年寄りの医療費値上げにつづいて、今年四月からサラリーマンの医療費自己負担が三割に引き上げられ、私たちが危ぐしてきたように深刻な受診抑制――お金の心配でお医者にかかれない事態が広がっています。老後の生活の命綱である年金は、物価スライド凍結解除で、今年すでにモデル世帯で年二万五千円の削減が強行され、来年はさらに六万円もの削減が予定されているうえ、将来にわたって給付減・負担増の大改悪のレールが敷かれようとしています。総理は、「高齢化社会だから仕方がない。これがいやなら増税になる」といっていますが、はたしてそうでしょうか。

 国民が国と地方に納めている税金のうち、社会保障への公費負担となって返ってくる比率――いわば“見返り率”がどうなっているか。サミット諸国で日本は最低です。今年二月に社会保障審議会に提出された資料をもとに試算しますと、日本の“見返り率”は29%であり、アメリカ47%、イギリス43%、ドイツ44%、スウェーデン43%にくらべて、十数%も低い水準です。かりに日本の“見返り率”を、欧米なみに引き上げると、税負担はいまのままでも、十兆円をこえる新たな社会保障財源が生まれ、当面の医療、年金、介護を充実させる財源は、十分にまかなうことができます。総理、日本の社会保障が貧しいのは、国民の負担が少ないからではなく、予算の優先順位を間違えているからではありませんか。このゆがみをただす、意思と展望をもっていますか。答弁をもとめます。

 社会保障を予算の主役にすえるためには、つぎの二つの分野に抜本的なメスを入れる改革が必要であります。

 一つは、九〇年代に五十兆円にまで異常膨張した公共事業費です。総理は、「無駄づかいを削る」といいながら、破たんが明りょうになった川辺川ダム、諫早湾干拓事業、関西空港二期工事、苫小牧東部開発など、悪名高い巨大開発をやめようとしていません。くわえて「都市再生」の名で、全国各地に高層ビルを林立させ、高速道路をはりめぐらせる新たな浪費の計画もすすめています。これらの巨大開発の浪費を中止し、内容を福祉・環境型に転換させることで雇用を確保しながら、膨れ上がった公共事業費を、バブル前の二十五兆円程度の水準まで、段階的に削減すべきであります。

 いま一つは、五兆円まで膨張した軍事費を「聖域」とせず、大幅軍縮に転じることです。とくに、(1)ヘリコプター空母や、空中給油機の導入など、海外派兵のための新規装備導入の計画を中止すること、(2)地球的規模での米国の核戦略に日本を組み込み、一兆円規模での巨額の財政支出をともなう「ミサイル防衛戦略」への参加を中止すること、(3)日米地位協定でも支出義務のない、毎年二千五百億円にものぼる米軍への「思いやり予算」を廃止すること――が、緊急に必要です。総理の答弁をもとめます。

税制のあり方が問われる――消費税大増税は許さない

 第二は、消費税の大増税を許さないことであります。いま、政府・財界から消費税率を二ケタに引き上げよとの大合唱がはじまっています。日本経団連は、「二〇一四年度には16%に」といい、経済同友会は「二〇二〇年度には19%に」といい、政府税制調査会も中期答申で「二ケタ税率化」を明記しました。

 総理は、九月二十二日の内閣改造後の記者会見で、「三年間の総裁の任期中は消費税を上げる環境にない」といいつつ、「構造改革を徹底的にやった後、もうこれ以上予算を削減するのはやめてくれというときに、消費税を上げるならわかります」とのべています。これは、まず首相のいう「構造改革」――社会保障の切り捨てなどを「徹底的」にやり、国民をぎりぎりの耐え難いところに追い込んでおいて、「これ以上やるのはやめてくれ」という悲鳴があがったときに、「それなら」と消費税増税を無理やり押しつけるということではありませんか。「三年間は増税しない」というよりも、「三年かけて増税の環境を着々とつくる」というのが、総理の立場ではありませんか。

 小泉内閣が今年六月に決定した「骨太方針二〇〇三」では、二〇〇六年度までに「包括的かつ抜本的な税制改革」のための「必要な税制上の措置を判断する」としています。ここでいう「必要な税制上の措置」のなかには、消費税率引き上げも含まれるのではありませんか。含まれる可能性があるのか否か、端的にお答えいただきたい。

 いま問われているのは、二十一世紀の日本の税制の中心に消費税をすえていいのか――税制のあり方をめぐる大問題です。消費税中心の税制を選ぶのは、最悪の選択といわなければなりません。消費税は、何よりも、所得の少ない人に重くのしかかる逆累進性を本質とする、最悪の不公平税制です。消費税は、税を価格に転嫁しきれず、身銭を切って納税をしている多くの中小零細業者にとって、営業破壊税そのものです。そして消費税が、景気破壊税であることは、九七年の橋本内閣によっておこなわれた5%への増税が、大不況の引き金をひいたことでも証明ずみのことです。こんな天下の悪税を、二十一世紀の日本の税制の中心にすえる――これが総理の立場でしょうか。

 「社会保障充実の財源のため」というのが大増税を主張する勢力の口実です。一九八九年に消費税が導入されたときも、九七年に5%に増税されたときも、この口実が使われました。しかし消費税導入いらい、社会保障は、充実どころか、切り捨てにつぐ切り捨てがつづいてきたというのが現実ではありませんか。

 それでは巨額の消費税の税収はどこに使われたのか。対照的な数字があります。消費税導入から十五年間の消費税収の累計は、百三十六兆円にのぼります。ところが、同じ時期に、法人三税――法人税、法人住民税、法人事業税の税収は、累計で百三十一兆円も落ち込んでいるのです。景気悪化によって法人税収入が減ったことにくわえ、法人税率を42%から30%にまで引き下げるなど、大企業のための減税がくりかえされてきたためです。国民の血と汗からしぼりとった消費税が、ほとんどそっくり法人三税の減収の穴埋めに使われてしまったという計算になるではありませんか。

 いま、消費税増税の大合唱が聞こえてくるのも、「消費税増税とセットで法人税減税を」という声です。日本経団連の提言では「法人実効税率の引き下げを断行せよ」、経済同友会の提言では「早期に法人税率を5%下げよ」、政府税制調査会の中期答申でも「法人税の引き下げについて、…今後検討すべき課題」と明記しました。「社会保障の財源のため」ではなく、「大企業の負担軽減のため」――ここにこそ消費税増税の真実があるのではありませんか。

 二十一世紀の日本の税制のあり方として、庶民に消費税の大増税を押しつけながら、大企業の負担はもっと軽くする――こういう方向をさらにすすめることを、首相は是とするのか、非とするのか。はっきり答弁していただきたい。

 日本共産党は、天下の悪税――消費税の廃止をいっかんしてもとめている党です。社会保障をささえる財源としては、まず浪費を一掃する歳出改革をすすめるとともに、将来については、負担能力に応じた税負担――「応能負担の原則」にもとづいて、大企業や高額所得者に応分の負担をもとめる、税制と社会保障制度の民主的改革をすすめることを提唱しています。こうした立場から、消費税大増税の動きを阻止するために、国民とともに全力をあげてたたかうことを、ここに表明するものであります。

国民の生活と権利をまもるルールある経済社会――大企業に社会的責任を

 第三は、「ルールなき資本主義」といわれる現状を打破し、国民の生活と権利をまもる「ルールある経済社会」をつくる改革です。

 とくに雇用をささえるルールをつくることは、焦眉(しょうび)の課題です。大企業が横暴勝手にリストラ競争をすすめ、政府がそれを応援するもとで、失業率は戦後最悪を更新し、勤労者の所得が急激に落ち込んでいます。わが党は、この危機を打開し、安定した雇用を拡大するために、つぎの三点を提起するものです。

 一つは、長時間労働を是正し、「サービス残業」を一掃して、新しい雇用を増やす本格的なとりくみをおこなうことであります。

 わが党は、「サービス残業」根絶のために、衆参両院で二百回以上の追及をおこない、労働者・家族と一体となったたたかいのなかで、政府に根絶にむけた「通達」をださせ、全国で百五十億円をこえる不払い残業代を払わせる前進をかちとってきました。

 しかし、リストラ競争のなかで、長時間労働と「サービス残業」は、なお増えつづけています。男性の五人に一人は週に六十時間以上という異常な長時間労働のもとにおかれ、「サービス残業」は、労働者一人あたり年間二百時間をこえると推定され、過労死、過労自殺、「心の病」など、深刻な事態を引き起こしています。

 第一生命経済研究所の試算では、「サービス残業」をなくせば、百六十万人もの新規雇用がうまれ、国民の所得と消費の拡大によって、GDPを2・5%引き上げる景気拡大効果があることを、明らかにしています。

 「サービス残業」を繰り返しやらせる悪質な企業名の公表、入退社時間の記録など労働時間管理を企業の責任でおこなうことを徹底するなど、この無法行為を本腰をいれて一掃するために、政府あげてとりくむべきではありませんか。答弁をもとめます。

 二つは、未来をになう若者に仕事を保障することを、政府と大企業の責任でおこなうことです。大学を卒業しても就職率は55%。四百十七万人もの若者が、「フリーター」とよばれるアルバイト、パート、派遣社員など不安定な就労状態におかれています。しかし、人間はモノではありません。いつでも解雇でき、低賃金で働かせ、教育訓練もしない――そんな「使い捨て」の労働から、明日の日本をになう力が生まれるでしょうか。若者を「使い捨て」にする企業と社会に未来はありません。

 七月二十三日の党首討論で、私はこの問題をとりあげ、中小企業はこの六年間で若者の正社員の数を三万人増やしているのに、大企業が百八万人減らしている事実をあげ、大企業に若者の雇用責任を果たさせることを提起しました。総理は、「看過できない問題だ。ご指摘の点もふまえて雇用対策に力を入れていきたい」と答弁しました。そこで伺いますが、大企業にたいしてどのような実効ある働きかけをおこなうつもりですか。はっきりお答えいただきたい。

 三つは、人減らし応援の政治を、根本から見直すことです。たとえば、「産業活力再生法」――リストラをおこなう企業の計画を国が承認し、金融・税制上の優遇措置をあたえるという仕組みは、世界に例がないまったく異常なものです。一九九九年の法施行いらい、二百十七社が認定され、認定したリストラ計画の人員削減数は八万九千二十五人、減税額は八百十億二千五百万円。労働者一人を減らすごとに、企業に九十一万円の減税の恩典をあたえたという計算になります。私の調べたかぎり、こんな制度をつくっている国は世界にありません。あるならあげてもらいたい。雇用不安を広げる企業に減税という、まったく逆立ちした政策はただちに中止すべきであります。総理の答弁をもとめます。

こんなアメリカいいなりの政治をつづけていいのか

 安保・外交で問われる大問題は、こんなアメリカいいなりの政治を、二十一世紀もつづけるつもりかという問題です。

 総理は、アメリカいいなりにイラク戦争を支持し、いままたアメリカいいなりにイラクへの自衛隊派兵をすすめようとしています。しかし、いま国際社会では、この戦争そのものが無法だったことが、きびしく追及されています。九月二十三日の国連総会での演説で、アナン事務総長は、米英軍の先制攻撃について、「過去五十八年間、世界の平和と安定が依拠してきた原則(国連憲章の原則)にたいする根本的な挑戦である」と批判し、「もしこれが受け入れられるなら、それが先例となって、正当性のいかんにかかわらず、単独行動主義による不法な武力行使の拡散を招く結果になることを懸念する」とのべました。これは、きわめて重要な言明です。

 総理に質問します。米英の先制攻撃を、「国連憲章の原則への挑戦」としたアナン事務総長の批判を、認めるべきではありませんか。総理は、六月十一日の党首討論での私との論戦のなかで、「大量破壊兵器はいずれ見つかると思います」と強弁しましたが、それから三カ月。見つからないではありませんか。米国調査団による調査でも、大量破壊兵器は発見できなかったという結論が出されようとしています。戦争支持の口実は、ことごとく崩れ去りました。米国いいなりに、侵略戦争を支持したことの誤りを、認めるべきではありませんか。

 いまイラクでは、米軍への攻撃があいつぎ、情勢の泥沼化がすすんでいます。無法な戦争への支持に固執しつづけ、不法な占領支配を支援するための自衛隊派兵を強行すれば、日本もまた同じ泥沼のなかに身を沈めることになるでしょう。無法な占領支配の共犯者として、アラブ・イスラムの人々の全体を敵にまわすことになるでしょう。

 わが党は、いまからでもイラクへの派兵を中止することを強くもとめるとともに、イラク派兵法そのものを廃止することを要求します。テロ特別措置法の延長に反対し、インド洋に派遣した自衛隊を、ただちに撤退させることをもとめます。

 総理が、イラク戦争支持の態度を国会で追及され、苦しくなるともちだしたのは、「日米同盟のため」という決まり文句でした。しかし「日米同盟のため」ならば、無法な戦争も支持し、憲法も無視し、どんなことでも許されるというのが、総理の考えでしょうか。二十一世紀も日米安保体制を、未来永劫(えいごう)つづけるというのが、総理の立場でしょうか。米国追従の根源にあるこの体制を、絶対不可侵とする勢力には、およそ日本の改革も独立も語る資格はありません。わが党は、二十一世紀の日本の未来は、日米安保条約をなくし、ほんとうに独立した平和日本をつくることにこそあると、確信するものであります。

憲法改悪――米国の無法な戦争への歯止めなき参戦への道は許さない

 憲法九条を壊すのか、それとも憲法九条を生かした平和日本を築くのか――これも二十一世紀の日本の進路をわける大問題です。

 総理は、自民党結党五十周年にあたる二〇〇五年十一月をめどに、党の改憲案をまとめることを指示しました。内閣総理大臣が、具体的期日をもうけて改憲案のとりまとめを指示したのは、戦後かつてなかったことであり、きわめて重大です。私は、端的に三つの点について、総理の見解を問うものであります。

 第一に、総理は、党の改憲案をまとめるというが、いったい憲法のどこをどう変えるというのですか。総理は、「自衛隊が軍隊であると正々堂々といえるように、憲法を改正するというのが望ましい」と明言してきました。総理の改憲論が、憲法九条改定をふくむものであることは明りょうだと考えますが、まずはっきりお答えいただきたい。

 第二に、なぜいま憲法九条改定かという問題です。総理は就任いらい、「集団的自衛権が行使できないなら、憲法を変えたほうがよい」ということを、繰り返しのべてきました。これは何を意味するのか。周辺事態法でも、有事法制でも、テロ特措法でも、イラク派兵法でも、米軍への自衛隊の支援活動は、「後方地域支援」に限られるとされ、米軍の「武力行使と一体」となった支援は、集団的自衛権の発動となり、憲法九条にてらして許されないというのが、政府の建前でした。この建前すらふみこえて、米軍が地球的規模でおこなう戦争に、自衛隊が何の制約も歯止めもなく参加できるようにする――ここに改憲論の目的があるのではありませんか。

 第三に、それでは、米軍の戦争とはどのような戦争か。イラク戦争がしめしたように、米国は、先制攻撃戦略と、国連を無視した単独行動戦略を、世界戦略の中心にすえ、実行に移しています。これへの参戦体制づくりのための改憲は、アナン事務総長がのべたように、「国連憲章の原則への挑戦」にほかならないのではないでしょうか。

 憲法九条を擁護することは、日本の恒久平和の進路を確保するうえで重要であるだけではありません。それは米国による一国覇権主義を許さず、国連憲章にもとづく平和の国際秩序を築くことと不可分にむすびついています。政府・与党に、憲法改悪の策動をただちに中止することを強くもとめて、私の質問を終わります。


志位委員長への首相答弁

 志位和夫委員長の代表質問にたいする小泉純一郎首相の答弁(要旨)は次のとおりです。

 【イラクへの自衛隊派兵について】

 イラクへの自衛隊の派遣については、自衛隊を戦闘地域に派遣せず、また派遣された自衛隊が戦闘行為に参加しないというイラク復興支援法の原則を堅持しながら、現地情勢の調査結果等をふまえて派遣の可能性を判断する。

 【税金の使い方、社会保障について】

 社会保障予算は十五年度予算においても、一般歳出を厳しく抑制するなか、主要経費中最大の約十九兆円、対前年度プラス3・9%の伸びとなっている。優先順位を間違えているとのご指摘は当たらないと思う。社会保障給付の財源の相当部分は保険料収入であり、保険料負担も国民負担の一部であることから、公費負担のみを取り上げてその水準を他の経費と比較することは適切でないと考える。

 公共投資関係費については景気対策のための大幅な追加が行われていた以前の水準を目安に、その総額を段階的に抑制しつつ、魅力ある都市、地方の再生のほか、循環型社会の構築や、少子高齢化への対応などの重点分野に大胆な配分を行っているところであり、浪費とのご指摘は当たらないと考える。

 自衛隊が今後保有する装備については、厳しい財政事情のもと、防衛関係予算のいっそうの効率化、合理化を図りつつ、わが国防衛および国際協力活動上の必要性や、周辺諸国に与える政治、外交上の影響等を総合的に勘案して導入の可否を決める。最近の弾道ミサイルの拡散状況をふまえると、弾道ミサイル防衛は専守防衛を旨とするわが国防衛政策上の重要な課題である。政府としても米国と緊密な連携を図りつつ、費用対効果および将来のわが国の防衛のあり方等を十分検討したうえで、弾道ミサイル防衛システムの導入について主体的に判断する。

 在日米軍駐留経費負担は日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保するうえで重要であり、現下の厳しい財政事情に配慮し、また一定の節約、合理化策をふまえつつ、わが国が引き続き負担していくことが適当であると考える。

 【消費税について】

 私は消費税を、在任期間中、長くても三年間だから、引き上げないと言っている。そこ間違えないでほしい。引き上げないで徹底的な行財政改革をやるのが小泉内閣の使命だ。あとの事についてはあとの総理が決めることであって、それまで敷衍(ふえん)しない、言及しないから無責任というのは当たらない。在任の三年間はこれから消費税を上げる環境にない。

 【サービス残業の解消について】

 いわゆるサービス残業については、これまでも監督指導等を通じて企業の労働時間管理への適正化に努めてきた。本年五月には、監督指導の強化を図るとともに、労使の主体的な取り組みを促進すべく、総合的な対策を策定したところであり、政府としては引き続きサービス残業の解消に努めてまいる。

 【若者の雇用について】

 政府としては若年者の雇用問題の解決のため、「若者自立・挑戦プラン」を推進することとしており、先般も関係四大臣より日本経団連等の経済団体に対し同プランに対する協力や若年者の雇用拡大等について要請を行ったところである。今後とも、大企業をはじめ産業界の理解や協力を得ながら、わが国の将来を担うべき若年者の雇用の拡大に努めてまいる。

 【産業活力再生法について】

 産業活力再生法は、民間の創意と工夫による経営資源の有効活用等を通じて、事業再生や競争力の回復、強化をはかろうとする民間企業の努力を支援するしくみだ。この制度を利用して、国内で最新鋭の工場の建設がすすめられるなど、わが国産業の活力再生にむけた効果があらわれ始めており、新たな雇用機会の創出につながっていくものと考える。

 【イラク戦争、テロ特措法について】

 アナン事務総長は一般論として武力行使のあり方について問題提起をおこなったことは承知しているが、米国等による対イラク武力行使は、関連する安保理決議に合致するものであり、国連憲章にのっとったものであると考える。

 イラク人道復興支援法とテロ対策特措法の廃止についてだが、テロとのたたかいは終わっていない。わが国がそのたたかいに参加するのをやめたら、むしろ国際社会の信頼を損ねるものになるのではないか。

 イラク人道復興支援法およびテロ対策特措法を廃止すべきとのご指摘には同意できない。

 【日米安保体制について】

 日米安保体制はわが国の平和と安全のための基本的な枠組みとして有効に機能しており、今後ともその堅持を安全保障政策の重要な柱の一つとしていく。

 また、世界の問題を、世界の国ぐにと協調しながら解決していく原動力としての世界のなかの日米同盟をいっそう強化する方針だ。

 【憲法改悪について】

 違法な戦争を支持したり、憲法を無視しないことは当然だ。

 憲法改正についてだが、二年後にはちょうど自民党が結党五十周年をむかえる。一つの節目として党として憲法の改正案をとりまとめて国民的議論を喚起することは、私は有意義であると考えている。小泉内閣において、自民党は二年後に憲法改正素案をまとめる、そうすると各党もいろいろ案を出してくるだろう。国民的議論が巻き起こる。そういうことを考えると、私の任期三年間で現実の政治課題として憲法改正を取り上げることは、非常に難しいと認識している。

 しかし、憲法は不磨(ふま)の大典、絶対改正し(なく)ていいというものではない。時代にあった憲法改正を政党が議論するのは、なんらおかしいことではない。むしろ当然のことだと思っている。憲法九条や自衛隊のあり方も含め総合的に議論して、政党としての案をまとめて、国民的な議論の参加のもとで、あるべき憲法改正論を今後ともまとめていくべきだと思っている。


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