日本共産党

2003年9月25日(木)「しんぶん赤旗」

ブッシュ国連演説

「単独主義」に各国の包囲網

孤立深める米政権 議場も冷淡


 イラク戦争後初めての国連総会。各国首脳の一般討論では、米英による不法なイラク侵略が平和と国連を深く傷つけたことへの強い懸念と、軍事占領への批判が相次ぎ、ブッシュ外交の国際的な孤立と独善が一段と鮮明になりました。(ワシントンで浜谷浩司)


 「五十八年間世界に平和と安定をもたらしてきた諸原則に、根本的に挑戦するものだ」

 アナン国連事務総長が演説でこうのべると、総会議場は一気に厳しい緊張に包まれました。

 同総長が「諸原則への根本的挑戦」と指弾したのは「米国は先制攻撃の権利と責任をもつ。安保理の合意を待つ義務はなく、一国あるいは有志で行動する権利を有する」とするブッシュ・ドクトリン。事務総長は「こんな論理が受け入れられるなら、正当性のいかんにかかわらず、一国的な、無法な武力行使がまん延しかねない」と続けました。

当時のパワーなく

 国連事務総長がここまで踏み込んで米政権を批判したことに、米メディアも強い反応を示しました。CNNテレビは、「事務総長が米国を批判するとは」と驚きをもって識者に議論を仕向けました。

 一年前の国連総会。ブッシュ大統領は、イラクが国連決議に反して大量破壊兵器を開発し続け、「国連の権威への脅威、平和への脅威」になっていると主張。国連に武力行使の決断を迫りました。国連査察を通じた平和解決の可能性を封じ、国際的に高まった批判を切り捨てて、一方的な侵略に出たのでした。

 “脅威”を訴えた当時のパワーはブッシュ大統領にみられません。大統領が「フセイン体制は、大量破壊兵器をつくる一方で、テロと関係を深めた」とのくだりでは、国連本部の記者席では失笑が漏れたといいます。

 米国の半年近い躍起の捜索にもかかわらず、大量破壊兵器は未発見。イラクが同時多発テロに関係した証拠もないと、大統領自ら認めるまでになっているからです。

 ブッシュ大統領は、イラク侵略の正当化に「ならず者国家」非難を繰り返し、「有志連合国は平和を守り、国連の信頼を守った」と強弁しましたが、米政権への包囲網は確実に広がっています。

 「イラクと中東の悲劇は、国連が中心的な役割を果たす、多国的な枠組みのもとでのみ克服できる」。事務総長に続き、首脳として最初に発言したブラジルのルラ大統領は、「戦争には独力で勝てても、平和はみんなの支持なくしては維持できない」といさめました。

多国主義こそ保証

 注目されたフランスのシラク大統領は、「多国主義こそ、正当性と民主主義の保証であり、武力行使や普遍的規範の設定にあたっては、とくにそうである」と強調。

 ブッシュ大統領の占領継続論に対しては、「イラク人への主権移譲こそ、安定と復興のカギだ。国連こそが、それに正当性を与える」「一方的かつ予防的に武力行使する権利をもつ、などと言えるものはいない」と直言しました。

 総会議長国セントルシアのアンソニー首相も「筋骨たくましい単独主義や外交が地球上の諸問題の良い取り組みにはなりえない」と批判。一日目の総会のもようを、ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)はこう報じました。

 「国連になり代わってたたかい、勝利した大統領は英雄の歓迎を受けるはずである。しかし、ブッシュ大統領を迎えた議場は冷え冷えとしていた」


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