日本共産党

2003年9月21日(日)「しんぶん赤旗」

自民総裁選で何がみえたか

小泉政治の“これから”


 圧倒的な国会議員・党員票を集めて自民党総裁に再選された小泉純一郎首相。解散・総選挙が迫るなか、「私が掲げた政策が、そのまま自民党の公約になる」といった言葉をことさら強調します。小泉首相が語った“「小泉政治」のこれから”とは何か−−。



小泉首相の総裁選語録
「痛み」を押しつけながら…
「悲観論になってはいけない。明るい芽がどんどんいま出てきているじゃないか」(9月9日の立会演説会)
「国民は痛みに耐えてくれている。必ず新しい変化に対応して、やる気と意欲を出している」(9月8日NHK番組)
景気対策見いだせず
「景気対策に即効薬はない。万能薬もない。いま進めている改革のなかで明るい面が出てきている」(9月14日、NHK番組)
「どこをみて緊縮財政といっているのか。これだけ積極的な財政出動している国はない。そのなかで、いかに改革と景気を両立させるかで苦労している」(同)
手足縛るな―郵政民営化
「郵政民営化をしないで、行政改革、財政改革をしろというのは手足を縛って泳げということだ」(9月17日、東京都内での講演)
基礎年金の国庫負担引き上げ
「一気に引き上げるか、部分的に引き上げるか、段階的に引き上げるか総合的に議論すべきだ」(9月11日、公開討論会)
対米追随批判を前に
「『追随』ととるのは勝手だが、では日本政府以外の選択がみなさん、あるのか」(9月8日、NHK番組で他候補に)
「ブッシュ大統領は、日本にあれこれやれとはいわない。5月の(日米首脳会談)でも日本として何ができるか主体的に考えた」(9月14日、フジテレビ番組)
憲法改悪を政治日程に
「読売新聞も憲法改正案をまとめた。国会の衆参憲法調査会でも議論している。自民党としては再来年に自民党としての憲法草案をまとめるよう準備したほうがいい(と指示した)」(9月14日、フジテレビ番組)
派閥壊れて派閥に支えられ
「いまの自民党の派閥の機能は、もうすでに壊れた」(9月11日、公開討論会)
「(青木幹雄参院幹事長が小泉首相の政策を批判しながら推薦人になったことについて)同じ党内、時代の流れというものもある。総裁候補がだれがいいか、総合判断だ」(9月14日、フジテレビ番組)
「(派閥が壊れたといわれるが)私を推薦してくれることでまとまってくれている」(9月14日、テレビ朝日番組)
「改革」の“これから”

 「私の改革路線は正しい。中身は(他候補に比べ)一番具体的だ」(八日、NHK番組)

 経済問題で小泉首相が金科玉条に持ち出したのは「構造改革」です。二年半にわたって進めてきた、巨額の国民負担増の押しつけ、大企業のリストラ応援、中小企業つぶしの政策を今度は「着実に実施に移す段階」というのです。

 「一番具体的」と示した“実績”といっても、政府専用車の低公害車への切り替えによる民間設備投資、大企業向けの先行減税というもの。景気悪化で消費が落ち込み、新たな不良債権が生まれている悪循環には目もくれず、「不良債権処理は既定路線通りに進めていく。外国企業にとって日本市場を魅力あるものにする」(十一日、公開討論会)と宣言しました。

 「国民の『安心』の確保」は、小泉首相が総裁選公約で掲げた柱ですが、公言したのは国民の不安を増すことばかり。

 年金支給開始年齢については「六十五歳が妥当かどうか」(十二日、テレビ東京番組)と再引き上げも検討課題とする考えを表明。消費税率引き上げには「三年間は(税率を)上げる環境にない。しかし議論は妨げない」「私の後の総理も、いまの改革を進めることで非常に助かる」(十一日、公開討論会)と述べるなど、上げざるをえない環境づくりを任期中に実施する立場を鮮明にしています。

米国との“これから”

 キャスター「イラクへの自衛隊派遣は?」

 小泉首相「変わりません。イラク支援に日本はひるんではならない」

 キャスター「自衛隊がいかない選択肢は?」

 小泉首相「ありません」(八日、TBSテレビ番組)

 総裁選で“日米同盟と国際協調の重視”という持論を展開した小泉首相は、北朝鮮問題では六カ国協議を重視していく姿勢を示したものの、米国が「逃げるな」と強く要求している自衛隊のイラク派兵には露骨な対米追随ぶりです。

 イラク派兵の時期を問われた小泉首相はこういいました。「私に聞かれても、どこが危険(な場所)かいえないのは当たり前。そのために政府がしっかり調査をしている」(十四日、テレビ朝日番組)。

 こうした根っこにあるのは、日米安保条約=日米軍事同盟絶対の立場です。国連憲章にもとづく平和の国際秩序を求める流れに逆行して、「日米安保条約締結は歴史が正しいと証明してきた」(九日、東京・新宿の街頭演説)などと展開。「(対米追随の批判は)感情論だ。テロ対策は従属か。アフガニスタンへの後方支援は追随か。国際社会、アメリカと協力したじゃないか」(八日、NHK番組)と開き直りもみせました。

第9条の“これから”
写真
小泉応援隊「必勝出陣の会」であいさつする小泉純一郎首相(左)=20日午後、東京・紀尾井町の赤坂プリンスホテル

 「私は、集団的自衛権を行使できないんだったら、憲法を改正したほうがいいといっている。解釈でやるよりも」(十四日、フジテレビ番組)

 テロ特措法、有事法制、イラク特措法など一連の海外派兵法の強行のうえに小泉首相が打ち出したのは、憲法九条に狙いを定めた明文改憲の道です。

 総裁選前には、自民党結党五十周年にあたる二〇〇五年十一月までに党の改憲案をとりまとめるよう指示し、改憲のための国民投票法案の成立の必要性を明言。「党の憲法草案を準備することで、国民的議論が起こってくる。そして、憲法というものをどこを改正したらいいか(わかる)」(同)と述べ、集団的自衛権を行使できるよう九条改憲をすることに「将来、その方がよろしい」(同)と積極的に推進する考えを示しました。

 小泉首相はまた九条改憲について、「これは与党だけではできない。(改憲の発議には)国会で三分の二以上の賛成が必要だ。野党もよく入れて、国民的議論を巻き起こしていくべきだ」(十三日、日本テレビ番組)と、改憲の立場を示す民主党などに働きかけていく考えもあからさまにしています。

 派閥がうごめき、醜い権力争いで再選を果たした小泉・自民党であらわになったのは、生活不安をおしつけ、アメリカにはいいなり、そして憲法九条を壊す政治。こんな勢力に、改革も未来も語る資格はありません。


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