2003年9月21日(日)「しんぶん赤旗」
弱者を痛めつけ、地方を切り捨てる小泉路線を突き進めば、自民党はどうなってしまうのか。そうかといって、旧態依然の利権バラマキのイメージがつきまとう「反小泉」では自民党は生き残れない−不安と打算が交錯するなか、自民党が選択したのは、「選挙の顔」としての小泉純一郎総裁の再選でした。
動機はどうあれ、自民党が、国民の暮らし、平和、憲法を壊した小泉政治の二年半を信任し、その継続を公言する小泉首相に今後を委ねたことの意味は小さくありません。
早くから結果が見え、しらけムードも漂った今回の総裁選のなかで、目を引いたのは、「構造改革」の名で推進した小泉経済失政への集中的批判でした。
「この二年数カ月、地方に、中小・零細企業、そういう弱い方々に痛みが集中している」(藤井孝男氏)、「地方に行ったら見るも無残ですね。商店街はシャッター街、中小企業、零細企業は次から次へとつぶれる」(亀井静香氏)、「景気に明るさが若干見えるのは事実だが、これは大企業の製造業だけなんです」(高村正彦氏)
批判はしても、「構造改革は進めなければならない」(藤井氏)という立場からは、現状打開の対案が示せるはずはありません。財政出動の大風呂敷を広げて、「今まで十年間、公共事業を増やして、残ったのは借金。それで景気が回復するのか」と小泉首相に一撃され、「守旧派」イメージが増幅されるのが落ちです。
それでも、これだけの批判が集中するところに、小泉経済失政の深刻さが表れています。そこから見えてくるのは、大企業の利益追求の応援を徹底してやるために、かつて自民党が利権バラマキで培養してきた支持基盤も切り捨てざるを得ない−弱者に目を向ける余裕すらなくした、むきだしの自民党政治でした。
小泉外交への批判として、「対米追随」「対米従属」という言葉が語られたことも、大きな特徴でした。
小泉首相は「テロ対策は従属か」「『追随』ととるのは勝手だが、日本政府以外の選択があるのか」と開き直りましたが、突出した“純米”ぶりは隠しようがありません。
かつて、日本政府が「日米同盟」とともに、外交原則の一つにあげていた「国連中心主義」の言葉が、「国際協調の重視」に置きかえられたことも、国連無視の米国追随路線を裏書きするものです。
現に戦闘がおこなわれているイラクへ戦後初めて地上部隊を派遣するイラク派兵法は、他国領土への派兵は「受け入れ同意」「中立性」が担保される必要があるとした原則をなし崩しにするものでした。
米国が単独行動主義をつよめるなか、米国とともに海外で自由に軍事行動できるようにと、集団的自衛権の行使が切実な問題として浮上。小泉首相は憲法「改正」案とりまとめの指示を出すにいたりました。
小泉“純米”路線は、憲法上の配慮から政府自身が課してきた「制約」さえ取り払い、ついに九条改憲という最悪の道に踏み出そうとしているのです。
自民党が選挙に勝ちたいがために選択した小泉政治とは、経済では弱肉強食を徹底し、外交では対米追随をとことん突き進むという、最悪の自民党政治です。
こうした路線の継続、徹底が国民との間で、これまで以上に矛盾を広げ、国連憲章にもとづく平和の秩序を守れという世界の流れのなかで、ますます孤立を深めていくことは間違いありません。
小泉自民党の路線が二十一世紀に通用しないばかりでなく、「選挙の顔」としても最悪の選択であったということを、総選挙の結果で示さなければなりません。
政治部長 小木曽陽司 |