日本共産党

2003年9月20日(土)「しんぶん赤旗」

シリーズ 従属国家の異常 党綱領改定案の視点から

米軍事件・事故2日に1回 沖縄 アジア最大の基地

面積の2割 米軍が占拠


 沖縄は、約百十五万人が住む本島で、面積の二割を米軍基地が占めています。日本共産党の綱領改定案は「敗戦直後に日本本土から切り離されて米軍の占領下におかれ、サンフランシスコ平和条約でも占領支配の継続が規定された沖縄は、アジア最大の軍事基地とされている」と述べています。「基地の中に沖縄がある」といわれるように、半世紀以上も狭あいな島に外国軍隊の巨大基地群が住民を押しのけて居座り続けているのは、世界的に異常な事態です。(田中一郎記者)

海外航空基地では世界最大

 沖縄にある米軍専用基地は三十七で、総面積は二百三十三・六平方キロメートル。面積で、日本にある米軍専用基地の75%が集中しています。兵員数は二万五千人です。

 米空軍嘉手納基地を抱える嘉手納町では町面積の83%、海兵隊基地キャンプ・ハンセンなどを抱える金武町では59%が基地です。面積の三割以上が基地という自治体は九つにも及びます。

 米国防総省の「基地構造報告」(二〇〇三会計年度版)によると、嘉手納基地は、米空軍が海外にもつ基地のうち面積では第三位(別表)。戦闘機部隊を常駐させている航空基地としては最大です。

 第一位のグリーンランドにあるテューレ基地に配備されているのはレーダー監視部隊で、兵員はわずか百三十人。第二位の韓国にあるクーニ射爆場は演習場です。

 一方、嘉手納基地は四千メートル級の滑走路が二本あり、F15戦闘機やKC135空中給油機などの戦闘部隊が常駐。兵員は七千人に達します。

 人口密集地にある基地という点でも異常です。

 テューレ基地はもっとも近い村まで約百キロメートル。クーニ射爆場の周辺は農村地帯です。

 しかし、嘉手納基地を抱える嘉手納町、北谷町、沖縄市の人口の合計は十六万人を超えます。


米空軍が米国外に置いている基地(上位5位)


順位 名称     所在地     規模(平方キロ)

 1 テューレ基地 グリーンランド 947・1

 2 クーニ射爆場 韓国       23・8

 3 嘉手納基地  日本(沖縄県)  20・0

 4 三沢基地   日本(青森県)  15・6

 5 アセンション

   補助飛行場  セントヘレナ   15・6

(米国防総省「2003会計年度 基地構造報告」から)


“殴り込み”専門の海兵隊

 沖縄の米軍基地面積のうち75%を占めるのは海兵隊です。一万六千人が駐留しています。

 「基地構造報告」によると、海兵隊が海外に基地を置いているのは沖縄と岩国基地(山口県)だけです。

 配備されている海兵隊は、第三海兵遠征軍と呼ばれます。その名が示すように、海外への“殴り込み”を専門にする部隊で、「日本防衛」とは無縁です。

 実際、沖縄の海兵隊は一九九〇年以降をみても、▽九一年の湾岸戦争で八千人が中東に展開▽九七年にカンボジア内戦で周辺海域に出動▽九八年のイラク攻撃作戦で二千人が中東へ出動▽同年のインドネシア政府危機で沖合に展開▽二〇〇二年にはフィリピンでの対テロ掃討作戦に参加─など、地球的規模での出撃を繰り返しています。

 嘉手納基地の空軍部隊も同様です。これまでイラクの北部と南部の監視・空爆作戦に定期的に戦闘機部隊などを派遣してきました。

 イラク戦争で沖縄の海兵隊には、開戦前に、退役と他の部隊への異動を停止する「ストップ・ロス/ストップ・ムーブ」政策がとられました。大半の部隊がアジア太平洋地域にとどまり、韓国や東南アジア諸国との軍事演習などを活発に実施。一方で、イラク戦争には、嘉手納基地のF15戦闘機部隊が参加し、海兵隊も警護部隊をバーレーンに派遣させるなどしました。

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「ひこうき うるさいです。」

 「グラウンドの先は基地。一番心配なのは墜落事故です。危険と隣り合わせなんです」

 宜野湾市立普天間第二小学校の関係者は訴えます。同小学校の隣は、米海兵隊の普天間航空基地。グラウンドに沿って基地のフェンスが続いています。

 グラウンド上空を米軍のヘリコプターや戦闘機が「パイロットの顔が見えるくらい」(学校関係者)の低空で飛びます。同小学校では、グラウンドに米軍機が墜落した事態を想定し、隔年で避難訓練を行っています。

 学校の周辺は坂の多い住宅密集地。しかし、フェンスの先の基地には緑豊かな林と芝生があります。その先には宜野湾市の中心に居座る基地の滑走路。林の間からは米軍関係者がランニングをしている姿が見えました。

 「ひこうきのそうおんは、とてもうるさいです。わたしたちの学校は、すぐそばにひこう場があるのでとてもうるさいです」

 小学校三年生のグループが、平和学習の一環で普天間基地について調べてつくった「軍き地新聞」の一節です。

 学校の付近では日中に十二分に一回、米軍機の爆音が発生しています(県の測定、〇二年度)。グラウンド上空を米軍機が飛ぶと、屋外の体育の授業では先生の言葉が聞き取れず、授業は中断。屋内でも、戦闘機が飛ぶと、防音が施された窓が震え、地響きのようなごう音が起きるといいます。

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抗議無視し無法な振る舞い

 県民は強大な米軍基地と隣り合わせの生活を強いられ、暮らしと命が日常的に脅かされています。

 今年、沖縄で起きた米兵犯罪や米軍機の事故、演習による山林火災といった事件・事故は、九月二日までで百十四件。二日に一回の割合で発生している計算です。

 米軍の事件・事故は年々、ひどくなる傾向にあります。

 海兵隊員による少女暴行事件が起きた一九九五年の翌年米兵・軍属・その家族による犯罪の検挙数はいったんは減少しました。しかし、その後再び増加を始め、二〇〇二年には八十一件に達し、九五年以降最悪に。今年は上半期だけで五十九件で、これをさらに上回る勢いです。(グラフ上)

 米軍基地関係者は、犯罪の急増の背景について、沖縄に交代派遣されていた海兵隊員が、イラク戦争のために本国への帰還が停止されたことを指摘。「沖縄勤務が長引き、下手をすれば中東に派遣される危険もある。それではたまらないと、あわよくば本国送還を狙ってわざと犯罪を犯しているようだ」と解説します。

 米軍機の爆音被害も悪化しています。

 普天間基地近くの住宅地(上大謝名地域)では、午後十時から午前七時までの騒音発生回数が、九八年度比で約十倍に(〇二年度、月平均百・八回)。嘉手納基地近くでは、同時多発テロが発生した〇一年度以降、激増しています(グラフ下)。

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 県議会は、七二年の祖国復帰以降、犯罪や事故への抗議など米軍基地関係の決議・意見書を三百四件も可決しています。年平均で十件近くの決議・意見書があがっている計算です。県議会が同期間にあげた決議・意見書の43%を占めます。

 これだけ抗議をしても、米軍は無法な振るまいを続けているのです。

根底にある“安保絶対”

 「沖縄県民は、米軍基地のただなかでの生活を余儀なくされている」(日本共産党綱領改定案)─。こんな異常な実態が続くのも、歴代の自民党政府が日米安保体制を絶対視し、沖縄の基地を永久に維持しようとしているからです。

 沖縄の基地は、米軍による占領期の国際法違反の土地囲い込みと、その後の「銃剣とブルドーザー」による接収によって、県民の土地を乱暴に取り上げ、つくられました。七二年の復帰後、歴代政府は、特別の法律までつくって、これらの土地を基地として米軍に提供し続ける仕組みをつくってきました。

 小泉純一郎首相も「沖縄における米軍の存在は、わが国のみならずアジア太平洋地域の平和と安定に大きく貢献している」(〇二年六月)と、沖縄の基地の永久化を当然視しています。

 しかも、名護市への米軍新基地建設計画などいっそう強化しようとしているのです。

 犯罪や基地被害の多発にもかかわらず、米軍に治外法権的特権を与えている地位協定の改定にも背を向け続けています。

 ここにあるのは、米軍基地を国民・県民の安全よりも上に置く、従属国家の極みというべき姿勢です。


今年の米軍関係者による主な事件・事故

1月18日米海軍P3C哨戒機が通報装置を普天間基地内に落下
2月6日キャンプ・ハンセンで、実弾演習による原野火災
  8日酒に酔った海兵隊員が沖縄市の民家の屋上に侵入し、飛び跳ねる
  21日大麻を持ちこんだとして海兵隊員を起訴
  27日伊江島でのパラシュート降下訓練で、陸軍特殊部隊の兵士1人が、基地外に落下
3月2日那覇市で海兵隊員が、乗っていたタクシーのつり銭箱を盗む
  11日キャンプ・シュワブで、実弾演習による原野火災
  15日読谷村で飲酒運転の海兵隊員が追突事故
  16日名護市で飲酒運転の軍属が乗用車に衝突し、相手が死亡
  29日沖縄市で酒に酔った海兵隊員がアパートに侵入
4月1日キャンプ・ハンセンで、実弾演習による原野火災
  17日キャンプ・シュワブ水域で、水陸両用車が沈没
5月20日伊江島でのパラシュート降下訓練で、陸軍特殊部隊の兵士5人が基地外に落下
  25日海兵隊員が女性を暴行し傷害を負わせる
  31日海兵隊員2人が乗車したタクシーの料金を支払わず逃走
6月1日北中城村で窃盗した車を乗り回していた海兵隊員を逮捕
  14日那覇市の路上で車内を物色していた海兵隊員が窃盗未遂で逮捕
7月13日沖縄市で空軍兵が民家の敷地に侵入
8月12日海軍兵運転の乗用車が子どもに接触事故
  13日嘉手納基地でF15戦闘機が訓練用照明弾を落下
  17日沖縄市の催し会場で海兵隊員が店員2人の頭部、顔面を数回殴打
  24日那覇市で海兵隊員が日中、下半身を露出

(沖縄県まとめ。期間は1月1日から9月2日まで)


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