日本共産党

2003年9月19日(金)「しんぶん赤旗」

チュ二ジアの七日間(25)

中央委員会議長 不破哲三

ベンヤヒア外相との会談(その3)


“チュニジアの役割には歴史を通じての厚みがある”

表

 ベンヤヒア外相は、私の発言を注意深く聞いていたが、発言に謝意を述べたあと、次のような言葉で、自分の発言をはじめた。

 ベンヤヒア わが国と国民にたいするたいへんあたたかい、親切な評価をいただいた。いまいただいた言葉は、同時に、私たちも共感をおぼえるものだ。わが国は、地中海地域に、そしてアラブに、またイスラムに、アフリカに属している。この点で、チュニジアの役割には、歴史の厚みを通じての特別のものがある。

 訪問の計画には、カルタゴとカイラワンをぜひ入れていただきたい。お互いに学びあうことは非常に重要だ。

 不破 カルタゴには、一昨日行ってきた。カイラワンは、あなたからぜひにという勧めをいただいたので、明日訪問する計画をたてている。

“寛容の精神が「文明の共存」を可能にする”

 外相は、私の問題提起にこたえ、チュニジア外交の基本についての発言をはじめた。

 ベンヤヒア いま不破議長は、ベンアリ大統領の大会演説を引用して、両党間の共通の立場を指摘したが、私は、その点で、いくつかの言葉をつけくわえたいと思う。

 チュニジアの外交は、「すべての人たちと友人になる、敵を持たない」ということ。私たちの認識は、世界には多くの異なる分析、異なる認識があるのであって、そういう多様性のなかで寛容の精神をもって連帯を追求すること、これを基本としている。チュニジア自身が多様であり、チュニジアの歴史のなかには四人のキリスト教徒の王が存在した(おそらく六−七世紀のビザンチン帝国による支配の時代のこと−不破)。今日では、チュニジアはムスリム(イスラム教徒)の国で、イスラム教を信じる多くの人びとが集まっている。私たち自身が、多様な宗教的内容をもっており、過去、現在、さらに未来にわたって、異なる文明の共存とそのことを伝道する使命をみずから体現している。

 今日の世界で、各国の国民がより接近し、共存してゆくことが重要であり、さまざまな文明と宗教があるなかでの共存、あなたの言われる、真の「文明」の対話と共存が可能だと思う。ハンチントンのように「文明の衝突」を主張する勢力もあるが、人類の数千年の歴史のなかには、ある種の普遍性がある。そういう哲学から、ベンアリ大統領は、人間観の接近が寛容の精神を増大させると言っているが、今日、宗教的な分離主義や統合主義が強まっているなかで、寛容の精神はとりわけ重要だと思う。

イラク戦争とチュニジアの立場

 ベンヤヒア外相は、「不破議長の前で宗教哲学めいた話をするのは失礼だが」と弁明したが、私は、「文明の共存」を求めるチュニジア外交の真髄にふれるものとして聞いた。話はさらに、イラク戦争、パレスチナ問題などの具体問題に進む。

 ベンヤヒア ベンアリ大統領は、イラク戦争反対を掲げ、国連のなかで、またアメリカを含む多くの二国間関係のなかで、努力を続けた。戦争開始の二、三日前にも、私自身、フセイン大統領と直接に話し合った。実際には戦争になったが、今日の現状は、イラクの主権と領土保全を確保するなかでしか、イラクの再建を求めることはできないことを示している。

地図

地名は、滞在中、訪問したり話題になった都市

 イラク問題は、国連憲章第七章にもとづき、安全保障理事会の権限のもとで対処されるべきだった。しかし、ことはそのようには進まなかった。これがいま、多くの問題の原因となっている。アラブの民衆のなかには、自分たちが否定されたという感情が強まっている。今日の情報化された世界では、これはデリケートな問題だ。衛星通信やテレビで、メッセージが数分間で世界中を駆けめぐるのだから。

「二つの国家」論をめぐる歴史を率直に

 パレスチナ問題では、外相の話は、「二つの国家」論のために、アラブ世界で孤立した時期もあったという微妙な歴史を含め、きわめて率直だった。

 ベンヤヒア パレスチナ問題では、一九六五年、ブルギバ大統領(当時)が、国連決議一八一(パレスチナとともにイスラエルの建国を認めた決議)の実施を求める宣言をおこなった。この明確な主張がアラブ諸国の誤解をうけ、チュニジアはアラブ連盟から出ることを余儀なくされた時期もあったが、歴史はわれわれの正しさを証明した。

 アラブ諸国もPLO(パレスチナ解放機構)自身も、ブルギバ大統領のメッセージにこめられた真意をくみ取るべきだった。PLOが一九八二年にはレバノンの本部撤退に追い込まれ、八二年から九五年までわれわれのところに本部を設置した。

 イスラエル「抹殺」論にくみしない、というこの点は、私たちが、以前からチュニジアとの立場の共通点として重視してきたものだった。(つづく)


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