日本共産党

2003年9月11日(木)「しんぶん赤旗」

ブッシュ覇権主義に強まる批判

米国でも世界でも

9・11テロ その後の2年間が示したものは


無法な戦争と占領継続宣言

同盟国に負担を強要

 世界を揺るがした米国での9・11同時テロは、今日のテロの残虐性、危険性をまざまざと示しました。いかなる口実によっても正当化できない蛮行です。テロとの対決は国際社会の重要な共同の課題となっています。

 しかし、この二年、米国のブッシュ政権は、そのテロに対決するとしてもう一つの惨劇、新たな戦争への道に踏み込んだのでした。自分が危険な相手だと判断すれば、かまわず軍事力を行使する、先制攻撃をおこなうという国連憲章も国際法も無視した無法な戦争への道でした。そして、この二年間に世界が目撃したのは、アフガニスタンとイラクにたいする米軍などの一方的な攻撃と侵略、政権転覆と国土の破壊、住民の殺りくでした。

 二つの国で米軍などの爆撃・攻撃で殺された市民の数はすでに九千人以上(アフガニスタンで約三千人、イラクでは民間機関の統計で九月九日現在で少なくとも六千百十八人、最大で七千八百三十六人)。9・11の死者三千人の三倍に達しています。

 五月一日、ブッシュ米大統領は、米海軍航空母艦上での演説で、「イラクでの主要な戦闘は終わった」「対テロ戦争で一つの勝利をあげた」と宣言しました。しかし、その二カ月後のイラクは「勝利」どころか泥沼です。その泥沼を前に、七日の国民向けテレビ演説でブッシュ大統領は、今度は無法な戦争と占領の継続を宣言し、米国民のいっそうの犠牲と同盟国の負担を公然と求めたのでした。

 ブッシュ政権の危険な戦争政策、一国行動主義に根ざした覇権主義の行動はつづいています。しかし、イラクの現地では破壊と殺りくへの怒りが広がり、イラク国民に主権を、今こそ国連に主導権を、の声は国際社会と国際政治を大きくゆるがしています。その世界の現実が示すのは、ブッシュ覇権主義の政治的崩壊と、それに追随する路線の破たんです。

増える犠牲、追加戦費10兆円…

米議員も「惨めな失敗」

 イラクの軍事占領を続けているブッシュ米政権に対し、米国内でも批判と追及の声が高まっています。

 九月九日の米上院軍事委員会の公聴会。イラク戦争の仕掛け人の代表格、ウルフォウィッツ国防副長官、米軍制服組の最高責任者であるマイヤーズ統合参謀本部議長に、混迷するイラク情勢の見通しの甘さを追及する言葉が投げつけられました。

 これを前にブッシュ大統領は七日、日曜日夜のゴールデンアワーに国民むけの演説をおこない、イラクが対テロ戦争の中心地だと強調し、新たに八百七十億ドル(約十兆一千八百億円)の追加予算を議会に要請。戦争の根拠とした大量破壊兵器問題にはまったくふれず、イラクにたいする戦争と占領を正当化する姿勢を示しました。

 九日の公聴会でレビン上院議員は、イラク戦争前にどれだけ費用がかかるのか予測せず、「バラ色のシナリオばかり語っていた」、新たな八百七十億ドルの予算は「米国民にとって苦い薬だ」と指摘。マケイン上院議員は「われわれが直面するだろう難問を過小評価していた」と発言しました。

 イラク戦争時、議会はすでに七百九十億ドルの戦費を承認しています。今回の追加予算を「白紙の小切手」と表現したケネディ上院議員は、「小切手を切るまえにわれわれは広範な計画を知る必要がある」とのべ、不透明なやり方で戦争と占領を進める政府を批判しました。

 非難の矢は共和党議員からも放たれています。九日、CBSテレビに出演したヘーゲル上院議員は「サダム・フセイン後のイラクで、政府は惨めなことをやっている」とブッシュ政権を非難しました。

 増加する米兵犠牲者、やまない国内外からの批判、かさむ戦費―。新たな追加戦費で、二〇〇四会計年度の財政赤字は、五千二百五十億から五千三百五十億ドルになると見積もられます。史上最悪の財政赤字は米国民の生活に重くのしかかります。

 来年の大統領選挙に出馬を表明している民主党の各候補者は、経済問題とともにイラクをはじめとするブッシュ政権の外交政策を批判するトーンを強めています。

 四日にニューメキシコ州アルバカーキで開かれた初の討論会では、こんなやりとりもありました。

 ドワーズ候補「われわれの若い米兵が射撃場に入れられている。なぜか? 第一の理由はこの大統領は計画を持っていなかったからだ」

 ゲッパート候補「大統領は惨めな失敗を犯した」

 クシニチ候補「(イラクに)国連を連れてきて、米国が去るときがきた」

 わずか数カ月前に得意満面だったブッシュ政権は今、国連の支援をあおぎ、「外交の失敗」のレッテルが張られ始めています。(ワシントンで遠藤誠二)


「絶対主義的で単純主義」

欧州 先制攻撃戦略にノー

 ブッシュ米政権の単独行動主義に対して、北大西洋条約機構(NATO)の同盟国でもある欧州諸国はブッシュ大統領の登場直後から警戒の目でみてきました。その批判の対象は、気候変動に関する京都議定書や国際刑事裁判所設立条約からの米国の一方的離脱やミサイル防衛計画の推進など、枚挙にいとまがありません。

 二〇〇二年二月、ブッシュ大統領が一般教書でイラクなどを「悪の枢軸」とする論を打ち上げると、欧州でのブッシュ大統領の先制攻撃戦略に対する「ノー」の評価は確定的になりました。

 当時、フランスのベドリヌ外相はブッシュ大統領の発想を「単純主義」だと断定し、「われわれは今日、世界のあらゆる問題をただ反テロ闘争にだけ還元する新しい単純主義に脅かされている」と痛烈に批判。欧州連合(EU)のパッテン対外関係担当欧州委員(英国人)もブッシュ政権が「他の世界に対して危険なほど『絶対主義的で単純主義的な』態度をとっている」と非難しました。

 イラク戦争をめぐって、国連憲章に基づく平和のルールを破壊しようとするブッシュ政権を欧州諸国が批判するのは、二十世紀に二度の大戦を経て対話と交渉による紛争解決を実践的に蓄積してきたからでもあります。(パリで浅田信幸)


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