日本共産党

2003年9月8日(月)「しんぶん赤旗」

垂れぬ穂に 表情厳しく

10年ぶりの冷害 北海道南空知では


写真
稲の穂の生育状況を見る井上さん(左)と清水さん=4日、北海道空知管内美唄市

 北海道の稲作地帯で、稲の幼穂(ようすい)形成期に異常低温が続き、モミに実が入らない不稔が多く発生、十年ぶりの冷害に見舞われています。広大な稲作地帯、南空知地方の美唄市や岩見沢市で農家を訪ねました。(北海道総局 富樫勝彦記者)


 美唄市で米九ヘクタール、麦二・五ヘクタールを耕作する志水彰さん(55)は、「きらら(きらら397)がダメだなあ。ガラスが多い」といいます。「ガラス」とは、実が入らず透き通ったままのモミ。確かに、垂れている穂のなかに、ピンと立った青い穂が目立ちます。

出来不出来にばらつきが…

 稲の丈も平年より十センチほど短く、株も小さいといい「十年前の(冷害の)ようにはなってほしくない」とつぶやきます。

 一緒に田を見ていた井上耕太郎さん(53)=空知中央農民組合委員長=は「今年は、地域によっても土地柄でも出来、不出来にバラツキが出ている。九月中旬以降に農業共済の被害調査(坪刈り=決まった面積を刈って調べる)が始まる。どう出るか心配」といいます。

地図

 七月は稲の「冷害危険期(幼穂形成期)」で、出穂、開花と八月中旬まで気温が大事な時期。ところが今年は、オホーツク海高気圧の張り出しが強く異常な低温が続きました。農家は田んぼの深水管理などで対応しましたが、防ぎ切れませんでした。

 道庁の調べ(一日現在)では、生育の遅れは空知で七日、石狩管内は九日、南部の渡島、檜山、胆振では十日と深刻で「一週間以上遅れると一部実らないものが出てくる」(道農政部)状況です。

 岩見沢市の白石節子さん(55)家族は、水稲九・五ヘクタールを耕作。「穂は八月初めに出てそんなに遅くなかったけど、良くないね。早いときは十日ころ稲刈りが始まるのに、今年はまだ茎が青いなんて…。場所によってはいつもの半分とれるかどうか」と心配します。

 あちこち田んぼを見て回る井上さんは「八月下旬から暖かさが戻ってきた。この温度が続けば少しは回復する。刈るのをがまんして実らせるしかない」といいます。

市場まかせの「米改革」心配

 不作と同時に農家が心配するのは、小泉内閣が米を市場任せにする「米改革」を強行していること。「米改革」では、備蓄を従来より五十万トン減らして百万トン体制にする計画です。

 井上さんは「農業は天候に左右されるのに、政府は備蓄米を減らす一方だ。これで国産米を消費者に安定供給できるのか。ゆとりある米の備蓄と安定供給に政府は責任を持つべきですよ」と言いました。


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