日本共産党

2003年9月7日(日)「しんぶん赤旗」

ニュースと話題の?Q&A

WTO(世界貿易機関)交渉

お互いの利益になるルールにしなくっちゃ



今週に閣僚会議があるの

食生活への影響が心配
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 WTO(世界貿易機関)の閣僚会議が十日から、メキシコのカンクンで始まるけど、私たちの生活に関係あることなの。

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 大いにあるわ。とくに食生活への影響が心配されるの。

 この閣僚会議は、新しい貿易ルールづくりがテーマだけれど、変なルールが決まってしまえば、日本ではいっそうのコメ輸入の拡大を迫られるなど、国内農業は決定的に破壊されかねない。拡大する輸入農産物の安全性も心配だわ。

 また、いまでも飢餓に悩む、農産物輸入国でもある多くの途上国は、国内農業が破壊され、その食料不足がいっそう深刻化する可能性もある。

 林業でも貿易「自由化」は、大商社による途上国の森林の乱暴な切り出しを推進し、森林の急速な減少で、地球環境を人間が住めない状況にまで悪化させる危険をもっているわ。

 どうしてそうなるかというと、この閣僚会議が、貿易「自由化」の推進を目的にして昨年二月から始まった国際交渉の一環だからなの。

 「自由化」というと、何かいいことのように聞こえるけど、実際の内容は逆。農業分野では農産物の関税引き下げなどによる無理やりの輸入拡大を意味するの。これは、農産物輸入国にとって、大商社の支配する貿易を通じて、低価格の農産物を買われることになり、国内の農業は破壊されることになるの。

 工業製品の分野では、途上国の工業製品の関税の引き下げを意味する。これは、途上国に多国籍企業の工業製品がどんどん入っていって、途上国の自立的な工業発展を不可能にしてしまう。

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グラフ

貿易の「自由化」って

多国籍企業のためよ
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 どうしてWTOの交渉は、各国経済への悪影響がいろいろでているのに、貿易「自由化」をすすめようとしているの。

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広がる批判 各国で広がるWTO交渉を批判する運動=インド(右)と韓国(上)=ロイター

 それは、もうけ=利潤追求第一の多国籍企業のために、米国など「先進国」の政府が主導権をとって動いているからよ。農産物の関税引き下げや輸入拡大は、それを扱う大商社などの多国籍企業に巨大な利益をもたらす。工業製品の関税引き下げも、自動車や電機など工業関連の多国籍企業にぼろもうけさせることができる。いずれの多国籍企業もその母国は「先進国」だからね。

 貿易「自由化」とは、多国籍企業の利潤拡大のために、多くの国の農林水産業や途上国工業の発展を犠牲にするという構図なの。

 米国主導で推進され、一九九三年末に妥結した前回の合意、これは、南米ウルグアイで開催された会議から始まった交渉の合意だから「ウルグアイ・ラウンド合意」というんだけれど、それによるWTOの創設と貿易「自由化」は、その後の世界的な農業の行き詰まりの進行や環境破壊、一方での多国籍企業の巨額な利益の蓄積という形で、その構図を裏付けているわ。

 しかし、今回の交渉は、途上国のWTO加盟が増加し、途上国の発言力が前回より格段に強くなっている。また、世界のNGO(非政府組織)や日米欧の農漁民団体などの運動も広がっている。なかなか前回のようなやり方は通用しないようになっているんじゃないかしら。

 今回の交渉では七つの分野のうち、期限内に合意できなかった分野が四つも出てきているのは、そういう力関係の変化を反映しているのよ。

貿易の拡大も必要だけど

主権を尊重しなくちゃ
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 では、WTOの交渉は、どうしたらいいの。貿易拡大は必要な気がするけど。

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 それはそうね。求められているのは、多国籍企業の利潤追求を保証する貿易「自由化」の推進ではなく、各国の農林水産業や工業の自立的発展に貢献するような、平等・互恵の新しい民主的な国際経済秩序をつくることだと思うわ。

 具体的には、適切な水準への関税の引き上げや農林水産物などの輸入制限の強化、国内農林水産業への助成の復活・拡大などが求められているの。

 WTO設立協定は、その第一〇条で、協定の改正を提案する権利を加盟国に保障している。その権利も使って、自国の食料は自国で生産する権利を意味する「食料主権」など、各国の経済主権を尊重した公正な貿易ルールに、WTO協定を改定することが求められているわ。

 WTOは途上国が多く加盟しているから、いまのWTO交渉でも、各国の経済主権の尊重を「合意」に反映させる可能性も否定できない。そのための世界的な世論や運動も大いに強めたいね。


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