日本共産党

2003年9月2日(火)「しんぶん赤旗」

泥沼イラク 米政権混迷


 イラクにおける国連最高責任者も殺された国連現地本部の爆弾テロ、国内多数派のイスラム教シーア派の最高指導者ら百人余殺害のシーア派聖地テロ、侵攻作戦時を上回った「主要戦闘停戦宣言」後の米兵死者数…。軍事占領が破たんし、イラク情勢の混迷が深まるなか、米政権内、とくにイラク侵攻の旗振り役をしてきた保守強硬諸派の間で矛盾が生まれています。(坂口明記者)

増派か否か

タカ派内で対立

 「米国が今イラクに対して、第二次大戦後のマーシャル・プラン(欧州復興計画)のような大規模な復興計画を実行しなければ、やがて大失敗し、次期大統領選でブッシュ政権はひどい目にあう」

 イラク・フセイン政権打倒の先制攻撃戦争をあおったネオコン(新保守主義者)の代表的論客のウィリアム・クリストルとロバート・ケーガン両氏は、同派系の週刊紙ウィークリー・スタンダード九月一―八日号でこう主張しました。

「もっと資金を」

 両氏は、「破局的失敗」はまだ起きていないものの、米政権がイラクに投じている資金は不十分であり、今のうちに問題点が正されないと「大失敗がもたらされる」と警告。

 国防総省は派兵の削減を計画している。しかしイラク軍再建や他国軍の派兵待ちではまにあわない。米兵を増派すべきだ―と提起しています。これに対してラムズフェルド国防長官は増派に強く反対しています。

 ブッシュ政権を支えるタカ派は、ラムズフェルド長官やチェイニー副大統領ら共和党の伝統的右派、ネオコン派、ローブ大統領上級顧問らキリスト教右派の三つの潮流で構成されていました。

 対イラク先制攻撃戦争の強行では三派は一致しました。しかし、イラク再建での米軍の役割をめぐっては、深い関与を求め「中東民主化」を目指すネオコン派と、それに反対する伝統的右派との間で相違があるといわれてきました。イラク情勢の泥沼化を前に、この対立が浮上した形です。

 現在イラクには約十四万人もの米兵が駐留しています。これは米政権の当初の想定を大幅に上回る規模です。現在のイラクの混乱の根源には、米国の違法な軍事侵攻と軍事占領があります。それがいっそうの増派で解決できるとみるのは、武力信仰に凝り固まったネオコン派の一部だけです。頭目の一人、パール元国防次官補もロイター通信に対し「(イラクで)問題なのは部隊の不足ではない」と語っています(八月二十日)。

 イラク侵攻の口実としてきた大量破壊兵器もみつからず、戦争の大義がますます揺らぐ一方で、米兵の死者は増加。9・11同時テロ後の“戦争指導”で急上昇したブッシュ大統領の支持率は53%前後となり、同時テロ以前の水準に戻りました。国防総省として、簡単に増派を口にできる状況ではありません。

最後は神頼み?

 この下で浮上しているのが、米軍司令官の指揮下であれば国連承認の多国籍軍の派遣を認めるとの構想です。アーミテージ国務副長官が八月二十六日に初めて示唆しました。二十九日発表の米CBS放送の世論調査では、七割の国民がイラク再建で国連が主導的役割を果たすべきだとしています。

 しかし国防総省は、これにも反対するとみられています。「米国が誤りを犯したと認めることなしに安保理が国連部隊の派遣を認めるわけがない。選挙の年に大統領がそんな屈辱を受け入れることは考え難い」―シカゴ・サン・タイムズ八月二十九日付論評は指摘します。

 「神がイラク侵攻をブッシュに助言したようだから、神が奇跡を起こして介入するかもしれない」―同紙が最後の選択肢として示すのが神頼み戦略。米国の手詰まりぶりを反映しています。


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