2003年8月31日(日)「しんぶん赤旗」
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保育所に入りたいのに入れない子どもが四月時点の厚労省調査で過去最多の二万六千人もいるんですって。少子化で子どもの数は減っているのに、保育所に入れない子は増えているのね。
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厚労省調査の二万六千人という数は、実際の保育所待機児より少なく集計したものよ。
小泉内閣になった〇一年の調査から、数を少なく見せるために待機児の定義を改悪してしまったの。第一希望で認可保育所を申し込んだのに入れず、保育ママや保育室などの国基準を満たさない保育施設を利用している場合、従来は待機児として数えていたのに、新しい定義では除外しちゃった。それまでの厚労省定義だと四月時点の待機児は四万三千人にものぼるの。
でも、どちらの定義で見ても待機児は年々増え続け、過去最多。実態は相当深刻よ。
働く女性、共働き家庭は増えていて、保育所利用者は九五年から九年連続で増加している。保育所定員は去年より三万人増えたけど、利用者は四万人増で追いついていない。とくにゼロ―二歳児の受け入れが不足していて待機児の七割は二歳児までの低年齢児よ。
去年出産した友人は、この四月の入所を希望して申し込んだのに入れなかった。いまは東京都の認証保育所に預けてるの。保育料は月八万円もかかり、認可保育所よりずっと高くて、もう大変だって。
保育所に入れるかどうかは子育てしながら働く上で大問題でしょ。その友人は、入所可否の通知を「受験生が合格発表を待つ気持ち」って、毎日ハラハラしながら待ってたのに、第一希望がかなわず本当に気の毒よ。
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小泉内閣は二年前に発足したとき、“待機児童ゼロ作戦”を打ち出したわ。これに期待して小泉内閣支持って人もいたのよ。あれはどうなったの?
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ゼロどころか、待機児は、新しい定義でも、この二年間で五千百人以上増えてしまったのだから、すっかり看板倒れね。しかも“ゼロ作戦”の中身は、「最小のコスト」で、三年間に十五万人の受け入れを増やすというもの。必要なだけの認可保育所を増やすのではなく、いまある保育所の定員超過を容認して子どもを詰めこむことで対応しようとした。一人ひとりの子に目が行き届くか、安全が守れるか、という心配が広がっている。
ゼロ歳児クラスで定員の200%にも詰めこんでいるところまで出た。各地で、保育室やトイレが足りない、廊下で給食を食べている、お昼寝の布団が人数分敷けないという問題が起きていて、詰め込みも、もう限界よ。
しかも、小泉内閣は、「規制緩和」と称して保育所設置や運営の基準を引き下げ、営利企業を参入させ保育の市場化をすすめている。そんな中で自治体でも、待機児がたくさんいるのに保育所は増やさず、逆に、公立保育所の民営化を推進するところが出てきた。
公立保育所は小泉内閣になってからの二年間に全国で三百四十カ所、定員一万二千人も減っている。これでは待機児問題は解決しないはずよ。
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政府の責任は重大ね。いまはさらに保育時間の延長など、保育要求は大きくなっているわ。
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保育所の利用者が増えている背景には、女性の社会進出とともに、不況で共働きでないと家計がなりたたないという子育て世帯の経済事情もある。最近では、巨大高層マンション建設が相次ぐなどで、特定地域の保育需要が急増するという問題も起きているわ。
長引く不況に何の手も打てないことや、大手ゼネコンの求めに応じて「都市再生」をすすめた小泉政治の結果よ。待機児の深刻化への政府の責任は二重、三重にあるのよ。
ところが小泉内閣は、地方税財政の「改革」といって、国が保育のために負担義務を負っている補助金の削減をねらっているの。公的責任をさらに後退させるつもりよ。本気で解決する気があるなら、こういうことをやめてほしいわよね。
いまは親の働き方が多様化していて、延長保育や休日保育、病後時保育など、保育所への要望は大きくなっている。
自治体は、地域の親の保育要求をつかんで、保育者とともに柔軟に対応してほしいわ。なんといっても国が、必要な予算を十分確保して、入所希望を受け入れられる認可保育所の新・増設を計画的にすすめるなど、待機児の解決とともに、こうした努力をしている自治体を積極的に支えるべきよ。