2003年8月24日(日)「しんぶん赤旗」
ニュースと話題の?Q&A
「国立」博物館・美術館で何が
入館者数の多い少ないで評価するなんて…
京都国立博物館で開かれている「スター・ウォーズ展」を見てきたよ。夏休みだし、会場は親子づれでいっぱい。三、四十代のファンが子どもと一緒に楽しもうって感じだね。
実際に撮影で使われた衣装や模型、小道具を展示したそばで、映画の映像が流されていて、展示品との関係も分かりやすくて楽しめる内容だった。そういえば、博物館の展覧会としては意外性があると、ずいぶん話題だけど…。
そうね。京都国立博物館といえば、昨年は雪舟、レンブラントなどを紹介し、人気を集めたから、古典作品を紹介する印象が強い。その博物館で「スター・ウォーズ」となると、やっぱり注目されるだろうなあ。
それに、国立の美術館・博物館が独立行政法人化(独法化)されたことが関係してるのでは、という声が出されているのよ。独法化は、政府の「行政改革」の一環で、「効率化」を芸術の分野にも当てはめようとしているの。四つの美術館、三つの博物館がそれぞれまとめられて、独立行政法人美術館、博物館として運営されている。名前に国立はついてるけど、もう国立ではなくなったわ。そうなると「企業会計原則」が持ち込まれて、決算では入場者数などの収入が問題になってくる。今回の展覧会については、独法化以前の企画で、そのつもりはないそうだけど…。
独法化したのは一昨年四月で、対象は東京・京都・大阪・奈良の国立美術館・博物館七館だよね。それで、具体的にどんな問題が起こっているの?
入館者数の問題が大きく取り上げられているわね。一つは国からの運営交付金(補助金)が、入場料収益などを差し引いた分になったこと。それと「実績の評価」の問題ね。
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| 京都国立博物館の「スター・ウォーズ展」の会場 |
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文部科学大臣が、「中期目標」(五年間)を決め、それに沿って各館がたてた「中期計画」を認可するの。その「中期計画」にもとづいて、文科省内の評価委員会が「業績の評価」をおこなうんだけど、それが予算配分に左右すると考えられるのよ。それに各館の「中期計画」といっても文科大臣が変更を命じることもできるしくみにもなっているわ。
去年の十月、文科省が二〇〇一年度「業務実績の評価」を公表したけど、各館の展覧会の入館者数をABCで評価していた。美術館や博物館は、数年先まで見通して企画を立てるんだけど、人数で予算が左右されるとなると、それを意識しないわけにはいかないということね。それに評価には“入館者が、作品を通じてその意図を理解できたか疑問”など内容に踏み込むものもあるわ。
美術館や博物館っていえば、展示企画に目がいきやすいけど本来の役割は幅広いよね。子どもや学生に国内外の芸術を理解する場を提供したり、学術的な研究に裏付けられた体系的で理解しやすい展示で、一般の人たちに知的・感性的な刺激を与えたり。そのためには学芸員の人たちの十分な研究が必要だよね。「効率化」や「もうけ=収益」の追求に重点が置かれ、そのバランスが崩れると、鑑賞者への影響は大きいと思う。国が「効率化」を理由に目標を決めて各館に押しつけるとなると本来の役割を脅かす危険がでてくるね。現場では、どんな変化が起こっているの?
数に敏感になっている館は多いわ。大阪万博の跡地に立つ国立国際美術館は、現代美術が中心だけど、「入場者数を意識するようになった」と話している。現代美術は、なかなか入場者が望めないうえ、交通の便も悪く、それを考慮して去年は目標も他館にくらべると低めだったそうよ。
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| 大阪府吹田市の万博跡地に建つ国立国際美術館 |
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でも、来年、大阪の中心地、中之島に移転するのよ。十一月にリニューアル・オープンするけど状況はがらりと変わるだろうね。とくに入場者数の目標設定を心配する声が出ているわ。移転後は交通の便もよくなり、もっと多い入場者の目標が求められるはずよ。
国立国際美術館は、開館から二十六年間、少ない予算でもできる自主企画を中心に展示してきた。でも、これからは、人が呼べる共催の大型企画も増えてくるだろうね。現場の学芸員は、外から持ち込まれた企画が自分たちの研究した独自企画にどう影響するのか不安に思っているわ。「数字だけで見てもらいたくない。自分たちの美術館がやるべき本分をどうやって守るか考えている」って。
美術館が本来持つ、資料の収集、研究調査、保存、公共への観覧という役割を果たしたいという点では、現代美術を研究する同館は大型展と同時に、規模は小さくても充実した現代美術の展示をしたいといっている。でも、入場者数だけで考えるとそうした企画も難しいかもしれない。
国は口でなく予算を出すべきだと思う。研究に誇りをもって頑張る学芸員を応援したいね。

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