日本共産党

2003年8月20日(水)「しんぶん赤旗」

“イラクの脅威はなかった”――

英首席補佐官認めていた

「文書」公表前にメール

独立司法委員会


 【ロンドン19日西尾正哉】英BBC放送の報道をめぐり取材源と名指しされたケリー博士の死亡の状況を明らかにする独立司法委員会(ハットン委員長)は十八日、ブレア首相の首席補佐官ジョナサン・パウエル氏らを証人に呼んで審理を実施、このなかで英政府の情報文書が公表される一週間前には英政権中枢はイラクに脅威があるとの認識を持っていなかったこと、情報文書の公表直前に「魅力的に」書き換えられた可能性が強いことが改めて示されました。

 さらに十九日には、イラクの脅威を誇張したとされるキャンベル戦略・報道局長が証言しました。裁判所の外には「八千人のイラク人が死亡し、五十五人の英兵士が死んだ。ケリー博士が死んだ。イラクはいま混乱している。−これが解放か?」などと書かれたプラカードを持って平和団体の人たちが詰めかけました。

 書き換え疑惑を示したのは、パウエル氏が二〇〇二年九月十七日付でジョン・スカーレット統合情報委員会議長へ送った電子メールの内容です。その時期は“イラクは四十五分以内に大量破壊兵器を配備できる”とイラクの脅威を強調した英政府の情報文書が公表される一週間前です。

 電子メールは、「情報文書は、サダム・フセイン(イラク大統領=当時)の顕著な脅威はいうまでもなく、(イラクの大量破壊兵器の)脅威を示すものではない。言いかえれば、彼(サダム・フセイン)は手段は持っているが、情報文書は、彼が西側世界はいうまでもなく隣国を攻撃する動機を持っていることを示していない」と断言しています。

 同電子メールは続けて「彼(サダム・フセイン)が顕著な脅威であるとする証拠をわれわれがつかんでいるとは言えないことをはっきりさせる必要がある」と述べています。またメールは、政府がつかんでいたイラクの大量破壊兵器にかんする情報が、戦争に反対する一般国民を説得する力のないことをも認めています。

 また、首相官邸の戦略・報道局長のキャンベル氏からパウエル首席補佐官に送られた別の電子メール(九月五日付)では、キャンベル氏が「TB(トニー・ブレア首相)の提起で」情報文書の構成を書きなおす必要を指摘していることも明らかになりました。

 また十八日の審理では、国防省報道室長のパム・ティア氏も証言、同省がBBC報道の情報源としてのケリー氏の名の特定はフーン国防相自身の執務室で行われたことを明らかにし、同省としては公表の意図はなかったなどと語りました。

 ブレア首相に対する証人喚問は、来週二十五日の休暇明け直後に行われるとみられています。


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