日本共産党

2003年8月20日(水)「しんぶん赤旗」

変質する日米同盟

海外で「ともに戦う同盟」へ


 ブッシュ政権の先制攻撃戦略に沿って、日米同盟が、海外で“ともに戦う同盟”へと大きく変質しています。

「本当に戦う軍隊に」

 「日本は(米英に次ぐ)3番目のミリタリープレゼンス(軍事的存在)を中東に持つことになる」

 「いままではあることに意味があった軍隊から、これからは本当に戦う軍隊にならないといけない」

 元陸上自衛隊幹部の志方俊之帝京大学教授は、七月下旬に東京都内で開かれた安全保障シンポジウムでいいました。

 イラク特措法の成立で、派兵される自衛隊はアメリカの「有志連合(コアリション)」の下、占領軍の一部を構成します。米軍が日々襲撃される状況で、自衛隊も「殺し殺される」(小泉首相)ことが想定されています。

 「専守防衛」を名目にして存立してきた自衛隊が、他国の領土に入り込んで、アメリカのために「戦う軍隊」になるというものです。

 「ポスト・セプテンバー・イレブン(九・一一後)」。これが、石破茂防衛庁長官ら関係者の最近の“合言葉”です。自衛隊と日米軍事同盟を、アメリカが九・一一後にはじめた「対テロ戦争」の戦略展開に対応できるようにする、という意味です。ミサイル防衛の導入、敵基地攻撃能力の保有、集団的自衛権行使、自衛隊海外派兵をいつでも可能にする恒久法制定を目指す動き……。

 「あれはできない、これはできるというのではなく、アメリカの軍事作戦をちゃんと担えるようにすることが求められている」と安全保障の専門家は指摘します。

先制攻撃を可能に

 アメリカの先制攻撃を支持した日本が、自らも先制攻撃を可能にする「憲法解釈」をするようになっています。弾道ミサイルについて、内閣法制局長官は一月、国会でこう答弁しています。「わが国を目標として飛来してくる蓋然(がいぜん)性が非常に高い場合には、自衛権の対象として認められることもあり得る」

 「蓋然性」とは、「ある事が実際に起るか否かの確実さの度合」(『広辞苑』)。

 「ミサイル防衛」のためには、日本が攻撃されるかどうか不明の段階でも、その可能性が高いと判断すれば、相手を攻撃できる−−米先制攻撃戦略と軌を一にしたものです。

 有事法制成立直後の六月下旬、「専守防衛」の見直し、集団的自衛権の行使を求める提言を発表した与野党若手国防議員の集まり「新世紀の安全保障を考える若手議員の会」が開かれました。

 この場で、ジャーナリストの田原総一朗氏は「有事法制は欠陥だらけだ」とこういいました。

 「北朝鮮がミサイルに燃料を注入したときに有事というが、(その判断は)アメリカが見つけて、総理大臣、防衛庁長官にいう」

 「日本有事」を判断するのは、アメリカだ−−。

 この重大な提起に、石破茂防衛庁長官、安倍晋三内閣官房副長官ら居並ぶ防衛族の面々から、一言の異論も反論もありませんでした。

 アメリカが北朝鮮を攻撃しないのに、北朝鮮が先に日本を攻撃することはあり得ない、というのが安全保障専門家の共通した見方です。

 「日米同盟」の名の下で、「周辺事態」と「日本有事」が連動する危険な仕組みになっています。

「対テロ戦争」もともに

 いま「日米同盟」とは何なのか−−。

 日米安保条約は、「日本有事」のときに「アメリカが日本を守る」(小泉首相)ためのものだというのが、政府の説明です。

 しかし、クリントン大統領・橋本首相の日米安保共同宣言、新ガイドライン(日米軍事協力の指針)にもとづいてつくられた周辺事態法は、「日本有事」ではなく、「米軍有事」の「周辺事態」に自衛隊が「後方地域支援」をするものです。安保条約に根拠となる条文はありません。

 それでも、一応、「日本の平和と安全」にかかわる事態とされています。

 その後、アフガンでの対テロ報復戦争をテロ特措法で、イラク戦争をイラク特措法で、戦後初めて自衛隊が、戦闘作戦行動中の米軍にたいする兵たん支援に踏み込みました。

 しかし、「日本の平和と安全」が「理由」ではありません。

 日米同盟に詳しい日本平和委員会理事の松尾高志氏はこう分析します。

 「ブッシュ政権の『対テロ戦争』は外征戦争と米本土防衛戦争が一体となっているのが特質の一つです。イラク戦争は外征作戦『イラクの自由作戦』と米本土防衛作戦『リバティ・シールド作戦』が一体で、アフガン戦争でも同様です。ブッシュ政権はそのために『国の外に出て、ともに戦う』のが同盟、という考えです。日米同盟も『対テロ戦争』をともに戦う同盟に変質しつつあると思います」

 “日本を守る”を建前としていた日米同盟が、“アメリカとともに戦う同盟”になったという指摘です。

 交戦権否認の日本国憲法、「専守防衛」の自衛隊法、「日本防衛」の日米安保条約も想定していない重大な事態です。日米同盟を根本から問い直す時期にきています。


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